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『俺は、君のためにこそ死ににいく』やフルCG版『銀河鉄道999』を制作

『Autodesk Maya』を使った映画・映像制作の現場を東映アニメーション・野口氏に聞く

2007年05月08日 16時11分更新

文● 千葉英寿

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長編のフル3D CGアニメを作るには
ノンリニアなアニメーションシステムが必要!

同じく野口氏が手がけている『銀河鉄道999 星空はタイムマシン☆太陽系・恐竜絶滅編』は、松本零士氏の作品を原作に制作している宇宙ファンタジー3部作の第1部で、フル3D CGで制作する大型映像だ。70mmフィルムの上映施設を持った、いわゆる“IMAXシアター”向けの作品だ。内容は主人公の鉄郎とメーテルが恐竜が絶滅に至った定説、“温暖化による地球存亡の危機”をいかにのりきるかを、銀河鉄道999での2人の旅を通じて松本氏が子どもたちに伝えるサバイバルメッセージとなっている。

スタッフ、キャストともに黄金期の“999”(スリーナイン)を彷彿とさせるもので、鉄郎の声を野沢雅子さん、メーテルは池田昌子さんとオリジナルキャストで固め、ゲストキャラクターは『宇宙戦艦ヤマト』の森 雪役の麻上洋子さんが演じる。音楽監督も劇場版の音楽を手がけたゴダイゴのタケカワユキヒデ氏が担当する。また、科学監修には東京大学大学院教授の松井孝典氏、独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の的川泰宣氏があたっており、7月上旬公開予定で、郡山と長崎を皮切りに、全国のIMAXシアターや科学館、博物館で順次上映される。



―― 『銀河鉄道999』のフルCG制作はいかがでしたか?

野口 当初は30分の尺(上映時間)で、CG部分は15分、後は博物館などの実写映像を15分入れる予定だったのですが、物語を重視するために30分のフルCGになりました。これまでフルCG作品は、『ミニモニ。THE ムービー お菓子な大冒険!』や『劇場版サルゲッチュ黄金のピポヘル・ウッキーバトル』などで経験はあったので、(30分は)とても作り込めないと思っていました。それでも今は、『デジモン』でアニメの作り方は結構勉強させてもらっていたし、効率よくアニメの手法を取り入れてCGを作れば、長編もできるかなと考えられるようになっています。

フルCG作品として制作中の“銀河鉄道999”

フルCG作品として制作中の“銀河鉄道999” (C)松本零士・東映アニメーション

―― 今回のフルCG制作を通じて、今後のMayaに期待することや要望はありますか?

野口 制作システムは“アニメーション・リファレンス”という手法でやっていて、要するに“リテイク対応”(基本となるアニメーションに変化を付けてシーンを作り上げる手法)なんですけど。「やっぱりここに角がほしいよね」というように、制作途中で(3Dモデルを)変えたい時には“ラップデフォーマー”(3Dモデルが破綻しないように変形・加工するツール)の軽いものにして対応しています。また、今後は長編を制作することになるので、いかにパイプライン(処理の効率を)をよくするかが重要だと思います。ノンリニアなアニメーション・システムにしなければならないと思います。そういう作りを考えて、アニメーションリファレンスやラップデフォーマを考えてほしいですね。それとmental rayの強化ですね。大爆発とか炎もぜひ実現してほしいですね。



「CGアニメはどんどん進化している」
野口氏が今期待しているCG作品とは?

―― 今回、Mayaが待望の日本語化を果たしましたが、これについてはどのような感想をお持ちですか?

野口 否定しませんし、いいんじゃないんでしょうか。正直なところ、ずーっと英語版を使っているので、メニューがどこにあるかは体が憶えているんですよ。実際、使ってみると、メッセージも日本語化されていて、(今までは英語だから読み飛ばすこともあったけど)何を言っているか分かりましたし、変な日本語を使っていないところはいいですね。今後はフルCGの劇場作品を考えているので、本作の制作が終わったところでMaya 8.5に移行する予定です。

駆逐艦の実写と爆発の合成シーン

(c)2007 『俺は、君のためにこそ死ににいく』製作委員会

―― 最後にこれから公開される最新のVFX/CG作品で最も気になる作品はなんですか?

野口 デジタルドメインが手がけている『トランスフォーマー』ですね。トレーラー(予告編映像)を見て、「アレがあーなるの?」と驚きましたね。正直、もうちょっと“ちゃちい”のかと思っていました。一体どうやって動かすのか知りたいですね。ピクサーの『レミーのおいしいレストラン』も気になります。CGアニメはどんどん進化しているなと思いますね。

今年の後半、野口氏はさらに大作の準備に忙しいという。今後の活躍もぜひ注目したい。

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