仮想通貨(暗号資産)ビットコインの価格が急落した。大手交換業者ビットフライヤーが公開している終値のデータを確認すると、1ヵ月前の2024年6月7日にはビットコインの価格は1120万円台に達していたが、6月24日に1千万円を割り、7月5日には899万円まで下落した。この1ヵ月で約19.76%下落したことになる。
今回のビットコイン価格の下落については、いくつかの要因があると分析されている。まず、2014年に経営破たんした仮想通貨取引所MTGOX(マウントゴックス)の債権者の動向がビットコイン価格を押し下げる要因になると指摘されている。さらに、ドイツ政府が犯罪の捜査で海賊版サイトなどから押収したビットコインの売却を始めた。今回ドイツ政府が売却するビットコインは少なくとも約5万BTCで、日本円換算で約4500億円を超える。この2つの動きがビットコイン価格急落の要因と見られているが、この他にも要因はありそうだ。
最近では、仮想通貨の価格は米国の半導体大手エヌビディアの株価との関係が深いと指摘されている。
マウントゴックス事件の大口債権者
日本ともっとも関係が深いのは、マウントゴックスを巡る事件と経営破たんだ。2014年2月28日、東京にあった仮想通貨取引所マウントゴックスが、民事再生手続の開始を東京地方裁判所に申し立てた。きっかけとなったのはマウントゴックスのサーバーのハッキングだ。
当時はまだ仮想通貨の名前は一般にはそれほど浸透していなかったがマウントゴックスは世界最大規模の仮想通貨取引所だった。マウントゴックスが公表した資料によれば、民事再生を申し立てた時点で、同取引所はユーザーのビットコインとして約75万BTC、会社として約10万BTCを保有していた。当時の資料では合計85万BTCにのぼるビットコインの「ほぼすべて」がなくなっているとしていた。
2024年2月28日時点のビットコインの価格は約5万6000円ほどだった。単純に計算すると、85万BTCの当時の価値は日本円で420億円ほどになる。しかし直近のレートで計算しなおすと、6兆6千億円を超える巨額のビットコインとなる。
会社が民事再生の手続きに入ることが認められると、再生管財人という会社の財産などの管理を担う弁護士が選ばれる。この再生管財人が2019年10月1日に公表した報告書によれば、全体で2万3267件の債権が届け出られている。そして、2024年6月24日には、再生管財人が7月からビットコインとビットコインキャッシュで弁済を始めると発表している。
この発表があった6月24日、必ずしもこの発表だけの影響とは言えないが、ビットコインの終値は1000万円の大台を割り込んでいる。7月5日には再生管財人が一部の暗号資産交換業者を通じて、一部の債権者に対して弁済を実施したと発表している。巨額のビットコインが一気に移動すると市場への影響が大きすぎるため、おそらく弁済するビットコインを分割して、少しずつ弁済していく方法を採用しているのだろう。
価格下落への影響が懸念されるのは、こうした債権者の動向だ。数兆円単位のビットコインを保有する債権者たちが一気にビットコインを日本円に交換した場合、ビットコインの価格は暴落しかねない。こうしたリスクがビットコインの価格を押し下げる要因のひとつになっている。
犯罪で押収されたビットコインの行方
次に注目されているのはドイツの捜査当局の動向だ。2024年7月4日には、ドイツの捜査当局が約12億円相当のビットコインを複数の仮想通貨取引所に移動したと報じられている。
1月31日のロイターによれば、海賊版サイトに対する捜査の過程で、ドイツの捜査当局が約5万BTCのビットコインを押収している。このためドイツ政府は現在、大口の仮想通貨保有者とみなされていて、保有する仮想通貨を一気に法定通貨に交換する場合、市場に大きく影響する。このためマウントゴックスの再生管財人と同様に、時間をかけて少しずつ法定通貨に交換する方法を採用するものと考えられる。
米国や英国の政府なども犯罪捜査の過程で押収したビットコインを保有しており、数兆円規模の大口保有者だと見られている。考えてみると仮想通貨はマネーロンダリング(資金洗浄)や海賊版コンテンツの売買など違法な取引で使われることがある。このため政府が犯罪捜査の過程で多額の仮想通貨を押収する事態は、日本を含む多くの国で起きているのではないだろうか。
エヌビディア株との関係
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