政府が、巨大オンライン・プラットフォーム企業の規制強化に乗り出すようだ。
NHKが2024年1月17日、GAFAMと呼ばれる巨大IT企業に対して新しい法律の制定を目指していると報じた。
報道によれば、アプリストアや決済、検索、ブラウザー、基本ソフト(OS)などが規制の対象となる。
市場で圧倒的な優位にある巨大IT企業が、公正な競争を妨げるのを予防するため、早ければ年内に新しい法律案を国会に提出するという。
背景にあるのは、明らかにEUの動きだ。
EUでは2024年2月17日に、プラットフォーム企業への規制を強化する「デジタル市場法」の全面適用が始まる。
アップル、アプリストアの外部決済を認める
欧州を起点にプラットフォームへの風当たりが強まる中、アップルは少しずつ、アプリストアの決済などについて、段階的に方針を軟化させている。
1月16日には、米国のアプリストアのガイドラインを変更し、アプリ内に外部決済へのリンクを追加できるようになった。
これまで、アプリを開発・運営する事業者はアップルの決済を使う以外の選択肢がなかったが、自社の決済システムなどにユーザーを誘導できるようになった。
ただ、リンクは1ヵ所のみに設置でき、アップルへの手数料も発生する。手数料は通常27%で、小規模の事業者については12%に設定されている。
外部決済を使う場合、アプリの開発・運営事業者は、アップルに27%の手数料を支払い、クレジットカード会社などの決済事業者にも手数料を支払うことになる。
この手数料水準には、すでに激しい反発が起きている。
アップルは2022年6月から、韓国でも外部決済を認めているが、手数料は米国とほぼ同水準の26%に設定されている。
EUでは兆円単位の罰金になりうる
EUのデジタル市場法は、大規模のプラットフォーム企業を「ゲートキーパー」に指定する。
そのうえで、ゲートキーパーの義務や、禁止事項を定めている。
「ゲートキーパーのオンライン仲介サービスを通じて提供されるものとは異なる価格又は条件で、エンドユーザに同一の製品・サービスを提供することを妨害すること」
注目すべきなのは、デジタル市場法が定める罰金の額だ。
デジタル市場法に違反した場合、最大で全世界の売上高の10%、違反を繰り返す場合は20%の罰金が課せられることになる。
アップル、マイクロソフト、グーグル、アマゾンなどプラットフォーム各社の全世界売上高を考えると、場合によっては数兆円規模の罰金が課せられる可能性もある。
すでに10%の罰金が適用される可能性がある分野もある。
音楽配信サービスは、世界的にはSpotifyが高いシェアを誇るが、アップルやアマゾンなどと激しい競争を繰り広げている。
Spotifyは、アップルがアプリストアを通じたSpotifyのサービス利用を妨害していると主張している。
音楽配信サービスをめぐって、アップルの行為がSpotifyなど競合企業への妨害に該当するかどうか、遠からずEU当局の判断が示されると予測されている。
選択肢をどう増やすか
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