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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第266回

ビットコインETF承認で何が変わる? ポイントは投資家保護

2024年01月16日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 ビットコインのETF(上場投資信託)が、米国で認められた。

 米国の証券取引委員会(SEC)が2024年1月10日、ビットコインの現物に連動するETFを初めて承認した。

 ビットコインの現物に連動する上場投資信託と言われても、すんなりと腹には落ちてこない。

 「現物に連動する」とは、ビットコインそのものの値動きが直接反映されると理解できる。

 つまり、ビットコインそのものを保有しなくても、ビットコインに投資できる金融商品だ。

 ビットコインETFがSECの規制対象となることで、証券会社が経営破たんしたとしても、投資家保護の対象となる可能性が出てきた。

 こうした動きに対して、1月11日の日本経済新聞は「投機から投資へ」という前向きな見出しをつけた。

ETF承認で何が変わるのか

 11日のロイターによれば、ビットコインに投資するETFが認められるまで、最初の申請から実に11年が経過している。

 ビットコインETFが承認されたことで、どんな変化が起きるのだろうか。

 これまでは、ビットコインの現物を買いたい人はまず、仮想通貨の取引所(暗号資産交換業者)に口座をつくる。

 口座を開設した後は、日本円を入金し、円をビットコインに交換する。

 問題は、投資家の保護だ。

 日本では、マウントゴックスやコインチェックなどのハッキング事件が相次ぎ、取引所を暗号資産交換業者として登録させ、規制下に置いた。

 日本の交換業者は、顧客の資産と会社の資産を分けて管理する「分別管理」が義務付けられている。業者が経営破たんしたとしても、別々に管理されていた顧客の資産を返金できるからだ。

 世界各国で規制が進んではいるものの、タックスヘイブンなどを拠点とする海外の取引所が経営破たんした場合、投資家の資金が保護されるかどうかは不透明だ。

 ETFの取引が始まったことで、投資家は、証券会社の証券口座を通じてETFを売買することができるようになった。

 米国でも証券会社は規制の対象であるため、仮に証券会社が破たんしても、一定の投資家保護は図られることになる。

承認に踏み切ったSECの狙いは

 長い間、ビットコインのETFを認めてこなかったSECが承認に踏み切ったきっかけは、2022年11月の大手取引所FTXの経営破たんだと見られている。

 FTXは顧客資産の分別管理が、極めてずさんだった。

 顧客の資産の一部は、別の事業に使われたり、仮想通貨の売買に使われたりしており、米国などの顧客については返金を受けられなかったケースがあるとみられている。

 一方、日本では顧客資産の分別管理が義務化されていたたため、FTXの日本法人を通じて仮想通貨を売買していた顧客の資金は払い戻された。

 仮想通貨の取引所は、顧客資産の分別管理など投資家保護が徹底されていない場合があるが、証券会社なら米国でもSECの規制下にある。

 交換所経由のビットコイン取引よりも、証券会社を通じたビットコインETFの売買を認めるほうが、仮に会社が破たんしたとしても顧客の資産が保護される可能性は高くなる。

 この点から、SECはしぶしぶETFの承認に踏み切ったとの見方が強そうだ。

「投機から投資」は実現するか

 今回のETF承認で、ビットコインを売買する投資家が多様化すると考えられている。

 今回、11本のETFが承認されているが、その運用主体にはブラックロックやフィデリティなど世界的に知名度の高い企業が名を連ねている。

 取引所に口座を開設するのに抵抗がある投資家でも、著名な資産運用会社のビットコインETFなら買ってみようかと考えるかもしれない。

 証券会社など機関投資家による、ビットコインへの投資も活発化する可能性があるとみられている。

 日本経済新聞によれば、ビットコインのETFの取引が開始された11日、売買代金は46億ドル(約6700億円)にのぼった。

SECは引き続きビットコインに懐疑的

 11本のビットコインETFを承認したものの、米SECはなお仮想通貨に対する懐疑的な態度を変えていない。

 ゲーリー・ゲンスラー委員長は10日の承認に併せて声明を発表し、次のように述べている。

 「ビットコインは主に投機的でボラティリティの高い資産であり、ランサムウェア、マネーロンダリング、制裁逃れ、テロ資金調達などの非合法活動にも使用されていることに留意したい」

 「投資家は、ビットコインや暗号と価値が結びついた商品に関連する無数のリスクについて、引き続き慎重であるべきだ」

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