同意していないユーザーを勝手にAmazon Primeに登録したとして、米国の連邦取引委員会(FTC)が2023年6月21日、アマゾンを提訴した。
FTCのリナ・カーン委員長はプレスリリースの中で、政府機関としては異例に見えるほど、強い言葉でアマゾンを批判している。
「アマゾンはユーザーをだまして、同意なしにサブスクリプションをさせ、ユーザーをいら立たせるだけでなく、多額の損害を与えた」
「このような手口は、消費者にも遵法企業にも損害を与える。FTCは今後も、デジタル市場における“ダークパターン”や、その他の不公正または欺瞞(ぎまん)的なやり方から米国人を強く保護していく」
米国で時価総額第3位の巨大IT企業を詐欺師扱いしているのは興味深いが、それ以上に、FTCが指摘した「ダークパターン」について、ユーザーとしても詳しく知っておきたい。
加入は簡単、解約は困難
Amazon Primeは、日本では月額500円、年間4900円のサブスクリプションサービスだ。
購入した商品を通常より早く届けてくれる「お急ぎ便」を選択したり、Prime Videoの膨大な動画コンテンツを視聴できたりと、手厚いサービスが用意されている。
筆者も会員だが、サービスの手厚さと、会費が低額に抑えられていることから、いまのところ不満はない。
一方、米国では月額15.99ドル、年間139ドル。年間会員の費用を日本円に換算すると、日本のほぼ4倍にあたる1万9895円の価格が設定されている。
FTCは、アマゾンが米国のユーザーを騙したり、操ったりするユーザーインターフェース(UI)を用いて、同意しないままPrimeに加入させていたと主張している。
FTCの主張によれば、Prime会員でないユーザーが、Amazonで商品を購入するとき、Primeを使わない選択肢を見つけることは難しいという。
一方で、解約については、膨大なプロセスを経なければ手続きが完了しない。
FTCは、ユーザーを誘導してPrimeに加入させ、いったん加入したユーザーに対しては、必要以上に長い解約プロセスを用意し、解約しないように誘導していた点を問題視している。
6月22日のロイターによれば、アマゾンは声明で次のように反論している。
「真実は、顧客はプライムを愛し、顧客が会員にサインアップするのもキャンセルするのも、わかりやすくで簡単にできるように設計されているということです」
Primeの加入と解約をめぐるプロセスについて、日本ではいまのところ大きな問題とはなっていない。
その要因は、現時点で日本におけるPrimeの費用が年間4900円に抑えられているからではないか。
アマゾンが日本でも会費の値上げに踏み切り、米国と同水準になったとしたら、様々な不満が噴出するのは避けられないのではないか。
アマゾンの手法は「ゴキブリホイホイ」
FTCは、アマゾンがユーザーを誘導するために用いていたUIを、「ダークパターン」にあたると指摘している。
ダークパターンに特化したメディアdarkpatterns.jpは、この言葉を「ユーザーが無意識に不利な行動を取るように設計された、悪意のあるデザイン」と定義する。
このメディアは、ダークパターンを12種類の類型に分類しているが、Amazonで採用されているパターンは以下のようなものだろう。
●ゴキブリホイホイ:簡単に登録できるが、キャンセルや退会方法が複雑で難しい。
●こっそりカゴに入れる:顧客の同意なしにユーザーのショッピングカートに商品を追加する。
「強制継続」という手法もある。
この手法の場合、無料でアクセスするサービスを始める前に、ユーザーにクレジットカードの情報を登録させ、無料期間が終わると強制的に課金する。
無料期間が終わると、強制的に継続させる手法は、大新聞を含む大手メディアも多数採用している。
大企業の多くもダークパターンを採用

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