Silicon Valley Bank 写真:Minh Nguyen
金融セクターが揺れている。
激動のきっかけは、米国の銀行2行の経営破たんだ。3月10日には、シリコンバレー・バンク(SVB)が経営破たんし、12日にはシグネチャー銀行が事業を停止した。
SVBはスタートアップ企業への積極的な融資で知られ、シグネチャー銀行も近年は仮想通貨関連企業とさかんに取引していたことで知られる。
金融危機の再来が懸念される状況にあるが、テクノロジー関連の分野への影響の広がりも気になるところだ。
日本政府が力を入れる、スタートアップ政策への影響も避けられそうにない。
スタートアップのための銀行
まず、破綻した銀行とテック業界との関係の深さについて、あらためて理解しておきたい。
SVBは、その名の通り、テック企業が集まる米カリフォルニア州のシリコンバレーを拠点とする。
同行のホームページでも「スタートアップ・バンキング」を前面に打ち出していて、スタートアップ企業への融資を積極的に行ってきた。
スタートアップという言葉は、設立されたばかりの会社と誤用されていることがあるが、実際にはけっこう細かい定義がある。
おおざっぱな理解としては、イノベーションを起こす可能性があると見られていて、ベンチャーキャピタル(VC)などから一定額以上の資金を調達したことがある新興企業がスタートアップに当たる。
VCから出資を受けることがスタートアップ企業の第一歩になるが、その次のステップがSVBに口座を開くことと考えられていたようだ。
スタートアップはVCから出資を受けて事業を始め、日々の運転資金などについて相談するためSVBに出向くという流れが定着していたようだ。
スタートアップ企業に融資をするのは、当然だが、長年経営を続けてきた大企業に融資するのと比べて段違いにリスクが高い。
SVBはこうしたリスクを取ることで、スタートアップの育成にも貢献してきた面があるが、SVBが破たんしたことで、こうした「リスクマネー」の供給に一定のブレーキがかかることは避けられない。
資金繰りに困って破綻するスタートアップが、多数出ることも懸念されている。
アジアへの広がり
アジアのスタートアップへの影響も指摘されている。
インドや中国、シンガポールなどのスタートアップもアジア系のVCだけでなく、米国のVCからの資金の調達を目指す。
世界的に著名な米国のVCから資金を得ることができれば、そのスタートアップは世界規模で活躍する可能性があると認知され、より事業を進めやすくなるからだ。
アジアのスタートアップもまた、米国のVCからの資金調達に成功するとSVBに口座を開く流れがあった。
こうしたスタートアップが多数存在するだけに、中国、インドを始めとしたアジアからスタートアップを生み出すエコシステムにも、甚大な影響が生じかねない。
世界的に著名なVCとしては、日本のソフトバンクグループ傘下のビジョン・ファンドもその1つとして認知されている。
影響が気になるところだが、3月13日のロイターによれば、ソフトバンクグループは「ほとんど影響がない」としている。
日本の政策にも冷水
スタートアップの育成を強化する、日本政府の政策への影響も避けられそうにない。
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