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ローカルから始め、グローバルに拡大するサービスが続々

なぜ急成長できたのか? AWSから見たインドのスタートアップエコシステム

2024年01月29日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 昨年参加したAWS re:Invent 2023の期間中、AWS Indiaのスタートアップ担当エグゼクティブ、クマラ・ラグハバン(Kumara Raghavan)氏に話を聞くことができた。インドならではのスタートアップのユニークなポイントと事例を紹介してもらいつつ、インドにおいてなぜエコシステムが拡大したのかを教えてもらった。

AWS India スタートアップ担当エグゼクティブ、クマラ・ラグハバン(Kumara Raghavan)氏

成長著しいインドのスタートアップ アクセラレーションプログラムも充実

――まずインドのスタートアップ市場について教えてください。

インドは世界で5番目の経済大国で、GDPも健全な成長を続けています。また、450万人以上の開発者を抱える世界第2位のデベロッパー大国でもあります。この10~15年の間にスタートアップが数多く現われ、エコシステムも成長しており、現在は10万以上のスタートアップがしのぎを削っています。

こうした中、グローバルで展開している「Activate」というスタートアッププログラムがインドでも展開されており、クラウドクレジット、トレーニング、サポートの3つが提供されています。トレーニングにおいては、たとえばフィンテックのテクノロジーや不正検知、あるいは地域ごとのコンプライアンス要件などを知ることができます。Activateのコンソールではこれらのプログラムやトレーニングを促進しており、多くのスタートアップが利用してます。

また、インドではアーリーステージの市場において、業種に応じたアクセラレータープログラムを用意しています。もっとも古いのは「SaaS Central」と呼ばれるプログラムで、今年私たちは4期目を終えました。これは最高のアイデアを持つスタートアップを選び、8つのクレジットを還元するものです。メンターシップに関しては、AWSの担当はもちろん、業界の他のメンターからも受けられます。SaaS Centralは10週間のプログラムですが、成功した他のSAS Centralのスタートアップが多くのスタートアップを指導します。

――スタートアップ同士のメンタリング体制がすでにあるんですね。

はい。SaaS Centralとは別のプログラムにはなりますが、今年は30人近くのスタートアップの代表を米国のベイエリアに連れて行き、すでに米国で成功を収めているインドのスタートアップからメンタリングを受けました。プロダクトをどのようにデザインすればいいか、値付けやパッケージングをどうするか、米国でのセールスチームをどのように構築するかなどなど。これらすべてがファウンダーから共有されるのです。

さらに、今年は「ML Elevate」というプログラムを生成AIスタートアップに対して実施しました。こちらでは20万ドル相当のクレジット、メンタリング、われわれの基盤モデルにアクセスするためのツールやプログラムを提供しました。同様にフィンテックや物流、犯罪抑止、女性向けなどのアクセラレーターを用意しています。実際このアクセラレータープログラムで、24もの女性起業家が生まれています。

14億人を抱えるインドならでのスタートアップのポイント

――インドのスタートアップやAWSの施策でユニークな点を教えてください。

インドのスタートアップエコシステムのために、私たちがインドで行なってきたことは、他の地域と異なる3つの側面があります。

1つ目のクラウドの力です。グローバルで発表されているサービスがインドでも利用できます。インドでは昨年末ハイデラバードに2つ目のリージョンがオープンしました。現在、インドには2つのリージョンがあるので、より多くのキャパシティで、より大規模なお客様のニーズに応えることができます。AWSはインドに対して2030年までに127億ドル(約1兆8815億円)の投資をコミットしており、インドのお客様のニーズと私たちのスケーリングをご理解いただけると思います。

――インフラやサービスへの大きな投資があり、スタートアップが利用しやすい環境が整っているわけですね。

はい。AWSはスタートアップが非常に迅速にイノベーションを起こせるよう支援しています。スタートアップは実験し、失敗し、また新しい実験に挑戦することができます。失敗しても、成功するまで挑戦し続ければいいのです。

また、いったん成功したアイデアがあれば、それを素早くスケールさせる敏捷性があります。インドであろうと、世界の他の地域であろうと、私たちの32のリージョンのどれを使っても、数分のうちにソリューションを展開することができます。もちろん、私たちのサービスが提供するセキュリティやイノベーションの要素も大きいと考えています。

2つ目の側面は、14億人近い人口を抱えるインドの消費者のニーズは、時として非常にユニークであるということです。そのため、クラウドの力を使ってこうしたニーズに対応する新興企業もあります。

――具体的な事例を教えてください。

インドではPaytmというスタートアップがあります。Paytmは決済をビジネスとしていますが、銀行でもあり、フィンテックの複数の分野にも急速に進出しています。加入者は3.5億人、加盟店は2000万社にのぼります。そのため、インド人がお店に行って商品を買う場合、スマホのPaytmアプリを使い、クリックで決済することができます(関連記事:ソフトバンクとヤフー、新たなスマホ決済サービス「PayPay」を今秋提供)。

PaytmはAWSのサービスを利用し、データレイクを構築しています。その結果、意思決定にかかる時間を30%短縮できました。また、ETLもオンプレミスからAWSに移行しています。これにより、12時間かかっていたETL処理を今では10分にまで短縮しています。

インドでは多くの人が銀行口座を持っておらず、クレジットカードも所持していません。Paytmの目標は、こうしたインドのような国で金融サービスを包括的に提供することです。だからPaytmは、5億人のインド人が金融を利用できるようにしたいと考えています。それが目標であり、これにクラウドの力を使っているのです。

同じような事例は株式市場です。インドのような国では、個人投資家の参加はそれほど多くありません。ですから、一般的なインド人が持っている株式ポートフォリオは非常に少ないです。これに対して、現在では多くのスタートアップが株式市場への参加を容易にしています。こうしたスタートアップの1社がUpstoxです。数百万人の加入者を抱え、平均的なインド人の株式市場への参加を改善し、市場資本を大幅に増加させています。

――まさに国情や市場のニーズを汲んだスタートアップですね。

また、HealthifyMeは、体重を減らしたい、血圧を抑えたい、糖分を減らしたいなどの要求に対して、オンラインコーチと栄養士が応えてくれます。ここは今日3500万以上の加入者がいます。多くの国ではこの加入者は膨大な数となりますが、インドではこれくらいの規模になるのです。

HealthifyMeには2000人のコーチと栄養士がいるのですが、Amazon SageMakerを用いて、顧客体験をより改善しました。基盤言語モデルを導入することで、コメントでの感情や情緒を察知し、コーチにどのようなアドバイスをすべきかを伝えることができるようになりました。これにより、多くの消費者に共感をもたらすことができ、会話の質を向上させることが可能になりました。そしてコーチが消費者と接する時間も75%増えました。

HelthifyMeが行なったもう1つは「Snap」というアプリを導入したことです。アプリで写真を撮ると、その食べ物が何なのかがわかります。量はどれくらいで、栄養は何カロリーなのか、自動的にアプリに記録することができます。こちらもAmazon SageMakerを採用しており、画像解析により、顧客環境にこのような入力をもたらすことができています。

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