マイナンバーカードにひも付けたキャッシュレスサービスを使うとポイントが還元される「マイナポイント」の申し込みが2020年7月1日から始まった。
マイナンバーとキャッシュレス決済をひもづけると、買い物やチャージの際にポイントが付与される。この事業には、キャッシュレスサービスと、マイナンバーカードの利用を同時に促進する狙いがある。
一方で、新型コロナウイルスの感染拡大とともにマイナンバー制度の未成熟さが浮き彫りになったが、6月末には今後の制度の方向性を示す動きがあった。
菅義偉・官房長官が6月30日午後の記者会見で、マイナンバー機能のスマートフォンへの搭載や生体認証の利用などを検討する方針を明らかにした。
今後、有識者らが参加する「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」で議論を重ねるという。首相官邸が公開している会見の動画で菅氏は「政府として、できるものから実施していきたい」と述べている。
この日開かれたワーキンググループ(WG)は、今後の制度のあり方を予測するうえで、重要な内容が多く含まれていた。議論を呼びそうな内容も少なくないことから、詳しく見てみたい。
●マイナンバーと生体認証をひもづけ?
WGの開催後に公表された資料には、マイナンバー制度や国と地方のデジタル化に関する33項目の課題が整理されている。
まず目につくのは、「生体認証などの暗証番号に依存しない認証の仕組みの検討」という項目だ。
政府は緊急経済対策で10万円を一律に配ったが、マイナンバーカードをめぐる混乱が生じた。
オンラインで給付を申請して、いち早く10万円を受け取りたいと考えた人は少なくなかったが、マイナンバーカードの暗証番号が分からない人が続出し、区市町村の役所に長い列ができた。
マイナンバーカードを作る際に、指紋や顔などのデータを登録しておけば、暗証番号がわからず申請ができないという問題は防ぐことができる。
スマートフォンへの搭載も検討項目に挙げられている。マイナンバーカードの代わりに、スマホのアプリにカードと同等の機能を持たせる構想だと考えられる。
●必要なサービスを迅速に届けられる仕組みとは
このWGには、ヤフーでCSO(最高戦略責任者)を務める安宅和人氏や、セキュリティなどの分野のインフルエンサーとして知られる楠正憲氏ら6人の有識者委員が参加している。
6人の委員は同日の会議に、デジタル化の方向性を示す文書を提出した。この文書の中で、委員らは次のように提言する。
「働き方やライフスタイルの多様化に対応して、全ての人々が困っているときに、居住地や所属に関わりなく迅速に手を差し伸べられる仕組みを構築する必要がある。マイナンバーカードを早急に普及させ、マイナポータル等を通じて、24時間365日、誰もが確実にアクセスできるデジタルとリアル双方の接点を持ち、居住地にいなくても待たずに確実に必要なサービスを受けられるようにすることを目指してはどうか」
新型コロナウイルスの第一波に対して、政府は必要なサービスを迅速に届けることができなかった。生体認証の活用は、こうした事態への反省から浮上したものだろう。
ただ、政府が個人の生体情報を保有することに対しては、すでにSNS上で反対意見も見られる。本格的な制度設計の段階では、より激しい議論を呼ぶとも思われる。
少なくとも、マイナンバーを運用する行政機関と捜査機関の間に厳しいファイアーウォールを設けるなど、拒否感を抱く人たちへの対応は必要になるだろう。
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