世界中のメディアが新型コロナウイルス一色のいま、米国の国防総省がとても興味深い発表をした。
UFO(未確認飛行物体)に見える物体が飛んでいる様子を海軍が撮影した、3本の映像を公開したのだ。
これらの映像は以前、米国の報道機関が独自に入手したと報じていたものだが、国防総省は声明の中で「確かに海軍のビデオだ」と認めている。
暗い話が多くなりがちだが、こうしたニュースは素直に楽しい。米政府は予算をつけてUFOの研究もしている。
UFOの極秘研究ではないが、日本政府も宇宙関連の取り組みを進めている。
この数年、日本政府がとくに力を入れているのは、宇宙をビジネスの舞台とする取り組みだ。
●UFOじゃない、UAPだ
米国防総省が3本の映像を公開したのは、2020年4月27日のことだ。3本の映像のうち1本は2004年11月、2本は2015年11月に撮影された。
2015年の映像では、楕円形の物体が雲の上を飛んでいる。
映像のタイトルは「ジンバル(Gimbal)」とされているが、ジンバルは物体の向きを一定に保つ装置だ。
最近は、動画撮影用のカメラに取り付けるジンバルが安価になり、言葉としても一般化しつつある。
映像のタイトルどおり、この物体は一定の傾きを保ちながら高速で飛んでいるようにみえる。
こうした物体は長い間、未確認飛行物体(Unidentified Flying Object、UFO)と呼ばれてきたが、米国防総省は未確認航空現象(Unidentified Aerial Phenomena)と呼んでいる。
今後、こうした現象は、UAPと呼ばれるようになるかもしれない。
映像に写っている現象について米国防総省は、いまも「未確認のままだ」としている。
米政府は、UFOに関する研究も進めてきた。2017年12月にはニューヨーク・タイムズが、ペンタゴンのビル5階で進められている謎めいた研究プログラムの存在を報じている。
●宇宙ビジネス振興
米軍の謎の研究プログラムとはちょっと様相が異なるが、日本政府は近年、宇宙を舞台とするビジネスを後押しする政策を進めている。
旗振り役は、やはり新しい物好きの経済産業省だ。
宇宙ビジネスは、世界的な成長産業と考えられている。中でも、民間企業の参入が進む分野は通信、測位(GPS)、地球観測の3分野だ。
内閣府の公表資料によれば、2020年度(令和2年度)は、全省庁を合計すると3674億円の宇宙関連予算がついている。
民間のビジネスとの関連が深そうな事業のひとつに、経済産業省の「政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利用環境整備・データ利用促進事業」というプロジェクトがある。
このプロジェクトには2020年度、18億円の予算がついている。
●衛星データを民間企業とシェア
宇宙関連と呼べる産業は日本にも存在するが、大部分が政府からの機器類の需要に依存している現状がある。
経産省の公表資料によれば、政府が打ち上げた人工衛星から膨大なデータが集まっているが、民間企業が利用できるデータとしては公開されていない。
こうしたデータを民間企業も利用できる形に処理して、企業に提供し、新しいビジネスにつなげてほしいというのが経産省の考えだ。
経産省は、衛星の製造に必要な部品の開発を促す事業も進めている。
米国の事例になるが、衛星データの活用で注目を集める「Orbital Insight」という企業がある。
同社が公開しているユースケース集が興味深い。
衛星画像を通じて、世界中にある2万6000ヵ所以上の原油タンクの備蓄量をリアルタイムでモニタリング。実際の備蓄量の推計や、需要予測などに活用されている。
先物取引などに携わる企業にとっては、非常に有益な情報だろう。
さらに同社のシステムでは、衛星画像をAIが解析。競合他社の製造拠点をモニタリングし、保守作業員が一時的に急増しているといった情報を得る。
保守作業員が集まっているということは、競合他社の製造拠点でなんらかのトラブルが起きているのかもしれない。そうなると、今後、その企業からの供給が現象する可能性が高いと予測できる。自社にとってはチャンスかもしれない。
監視に使いやすい技術が高度化する今、企業同士もテクノロジーをフル活用して監視しあう時代に入っているのだろう。
●ワクチン開発とも関係の深い宇宙ビジネス
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