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小島寛明の「規制とテクノロジー」 ― 第14回

リーチサイトも被害は大きい:

著作権法改正見送り 議論が必要な「第2の規制」

2019年03月18日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 著作権を侵害しているコンテンツのダウンロードを違法とする著作権法の改正案をめぐって、自民党内が開会中の通常国会への提出を見送るという。2019年3月13日、複数の報道機関が報じた。

 権利者の許可なくインターネットにアップロードされたと知りながら、マンガや論文などの著作物をダウンロードする行為を違法とするのが改正案の柱だった。

 違法なコンテンツを含む画面をスマホやPCに保存するスクリーンショットだけでも違法になる可能性があることから、マンガ家たちからも「インターネット利用の萎縮を招く」と慎重な議論を求める声が上がっていた。

 政府・与党がこうした声に応える形で改正案の提出見送りを決めたことには、さまざまな立場の専門家や関係者から評価の声が上がっている。

 ただ今回の提出見送りで、ダウンロード違法化と並ぶもう一つの海賊版対策も先送りされることになった。リーチサイト対策だ。

●「国民の間でも疑問が沸き起こっている」

 3月13日、自民党の古屋圭司・衆院議員はブログに次のように書き込んだ。

 「今朝の自民党幹部会にて、ダウンロード対象範囲拡大(投網で大魚だけでなく小魚も一網打尽してしまう懸念)など、まだ関係者の理解を得られていないばかりか、国民の間でも疑問が沸き起こっていることから、今国会での法案提出は見送り。

 次期国会までに関係者へのヒアリングなど丁寧な対応を行い、皆が納得できる法律にブラッシュアップして提出することを決定。

 これこそ自民党の奥深さと良識だ」

 古屋氏はマンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟(MANGA議連)の会長を務めており、自民党内では今回の法改正について慎重派の中心だったとされる。

 今回、異論の強い法案を数の力で押し切らなかった点で、確かに与党は「良識」を示したといえる。

 ただ、今回の著作権法改正は2018年春以降さまざまな案が検討されてきた海賊版対策の柱として浮上したものだ。いまも被害が続く海賊版に対して実効性のある策は示されていない。

 コンテンツ海外流通促進機構(CODA)は13日、後藤健郎・代表理事の名義で、

 「著作権法改正案について、今国会への提出が見送られたことは、大変遺憾です。海賊版サイト問題はますます深刻化し、文字通り喫緊の課題です。そのなかのひとつの対策であるダウンロード違法化問題に関し、私的使用目的以外の複製との混同や、対象となる行為への誤解もあったようであり、理解が得られず残念です」

 と、遺憾の意を表明した。

●規制を回避するリーチサイト

 今回、政府が提案を目指していた著作権法の改正案にはリーチサイトへの規制が盛り込まれていた。

 リーチサイト運営者は、サイトに海賊版のマンガをアップロードせず、海外のストレージサイトなどへのリンクを書き込む。

 海賊版のマンガをウェブサイトにアップロードするのはすでに違法行為だが、アップロードそのものには関与せず、「リンクを貼る」ことで規制の回避を狙ったものとみられる。

 コンピュータソフトウェア著作権協会によれば、最大級のリーチサイト「はるか夢の址」(閉鎖)による被害額は、2016年7月から2017年6月までの1年間で、731億円にのぼったとされる。

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