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週替わりギークス 第9回

なぜ定番シンセ「microKORG」にスピーカーが付くだけで革新的なのか

2016年10月04日 17時00分更新

文● 坂巻匡彦

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この連載は江渡浩一郎、落合陽一、きゅんくん、坂巻匡彦が週替わりでそれぞれの領域について語っていく。今回は坂巻匡彦が、コルグの新製品「microKORG S」を紹介する。

 9月頭にKORGの秋の新製品が発表されました。バスドラム用シンセ、鍵盤のないシンセ、音の良さを測るチューナー、イヤフォン型メトロノーム、ゴルフ製品、ダンス製品と我ながらなんの会社なのかわからないラインナップですが、その中から一つをピックアップして紹介したいと思います。

 それはmicroKORG Sです。

 microKORG Sは定番シンセサイザーのmicroKORGにスピーカーを付けた製品です。シンセサイザーの本分である音を作る機能に新しいところはなく、ほぼスピーカーを付けただけです。

 新しい製品が出るたびに山のような新機能が追加されるシンセサイザーとしては「なにも変わっていない!」と言われかねないmicroKORG Sですが、このスピーカーこそが最大の挑戦であり、シンセサイザーの新しい可能性への挑戦なんです!

スピーカーを付けてシンセを本当の楽器にしたい

 僕たちは楽器を作っていますが、本体だけで音を鳴らすことのできないシンセサイザーは本当に楽器と呼べるのだろうかと議論することがあります。

 ピアノやアコースティック・ギターは本体だけで音がします。音は楽器全体が鳴ることで作られ、その振動を演奏しながら感じることができます。でも、本体だけでは音の鳴らないシンセサイザーにはそれがありません。そこでシンセサイザーにスピーカーを付けて"本物の楽器"にしよう! と始まったのがmicroKORG Sのプロジェクトでした。

 いざ、開発が始まると困難の連続でした。普通にスピーカーを付けるとつまらない音になってしまいました。音質も悪く、音量も小さく、子供用のポータブル・キーボードのよう。microKORGはプロもステージで使う本気のシンセサイザーなので、スピーカーを付けるからにはオモチャではなくて楽器にしたい。実現するために試行錯誤と議論を重ねました。

 ヒントは楽器にありました。それはギター・アンプです。

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