今年、アスキーチームとして初参戦した「第37回 メディア対抗ロードスター耐久レース(以下、メデ耐)」。実は昨年の段階で出ようという話があったのですが、いろいろと条件を満たせなかったため破談になり、今年ようやく……という感じだったのです。
満たせなかった条件のひとつが「国内Aライセンス」です。これを持っていないとメデ耐は出られないのです。なので、今年はまず国内Aライセンス取得から動きました。サーキットを走らないといけないので、ハードルが高いと思っていたのですがそんなことはなく、筆記試験のほうが難しかったくらい。そんなライセンス取得までをレポートします。みなさんも国内Aライセンスを取ってレースに出ましょう!
国内Aライセンスはたった1日で取れる!
国内Aライセンス(通称Aライ)。クルマ好きなら一度は耳にしたことがあるこの言葉に、レース好きなら憧れている人も多いのではないでしょうか。正式にはJAF(日本自動車連盟)が発給する「国内Aライセンス」と呼ばれるもので、これがあれば国内で開催されているレースを含め、ほぼすべてのJAF公認モータースポーツに参加できるようになります。
今回、私は「チームクレバーレーシング」が筑波サーキットで開催している「Aライセンス講習会」を受講し、実際に1日で国内Aライセンスの取得までこぎつけました(講習会に同行してくれたライターの鈴木ケンイチさんもクレバーレーシングで取得したそうです)。
この記事では、受講条件の確認から申し込み、当日の流れ、そして取得後の手続きまでを、順を追って紹介します。これから国内Aライセンス取得を目指す人の参考になれば幸いです。
1. まず知っておきたい「国内A」と「国内B」の違い
JAFの四輪競技ライセンスには、大きく分けて「国内B」と「国内A」があります。国内Bライセンスは、モータースポーツの入門ライセンスです。JAF支部などで開催される2時間程度の講習を受けるだけで取得でき(今はオンラインでも可)、ジムカーナやダートトライアル、ラリー、サーキットトライアルといった競技に参加できます。
国内Aライセンスは、その一段上のライセンスです。最大の違いは「レース」に出場できること。ナンバー付き車両のワンメイクレースや地方選手権レースなど、JAF公認レースへの道が開けます。もちろんレースに出る予定がなくても、ステイタスとして取得する方も少なくありません。
ただし国内Aは、講習を受ければ誰でも取れるというものではありません。講習・筆記試験・実技試験に加えて、一定のサーキット走行経験や競技出場経験が求められます。ここがハードルに感じられる部分ですが、ネットで検索すると、このハードルを1日でクリアできるプログラムを用意している団体がいますので、まずは調べて最寄の講習会を探しましょう。
なお、ライセンスには「国際」もあり、こちらは最終的にF1ドライバーの「スーパーライセンス」まであります。
2. 受講条件とプラン選び
クレバーレーシングのAライセンス講習会には、受講者の経験に応じて5つのプランが用意されています。筆者が選んだのは、「スタンダードプラン(3万3000円)」です。公式サイトでも「多くの方がコレでお申込み」と紹介されている、いわば王道のプランです。3万3000円の内訳は、Aライセンス受講者限定サーキットトライアルの参加料1万2000円と、Aライセンス講習会の受講料2万1000円です。
スタンダードプランの受講条件は、次の3点です。
• 本年度有効な国内Bライセンスを所持していること
• JAF公認競技会に出場した経験がないこと
• 同日開催のサーキットトライアルに参加すること
つまり、「国内Bライセンスは持っているけれど、競技にもサーキット走行にもあまり縁がなかった」という方のためのプランです。筆者は以前ラリーのコドライバーを経験したので国内Bライセンスは取得済みでした(五十の手習い!? イチ編集者がラリーのコドライバーに挑戦!)。
そして、講習会と同じ日に、Aライセンス受講者だけが走る専用クラスのサーキットトライアル(JAF公認競技)に出場することで、必要な走行経験をその場で積めるようになっています。
国内Bライセンスを持っていない方は、まずBを取得してからスタンダードプランを選ぶのが、もっとも一般的なルートです。なお、各種ライセンスの取得にはJAF個人会員であることが条件になるので、未加入なら早めに入会しておきましょう。JAFの会員メリットはロードサービスだけじゃないのです。
3. 手ぶらはNG! 事前準備をしっかり
講習会は各団体のウェブサイトから申し込みます。今回参加したクレバーレーシングの場合、受付期間は開催日の2ヵ月前から1週間前までで、定員に達し次第締め切られます。Aライセンスクラスのトライアルは30台限定(先着順)なので、日程が決まったら早めに申し込むのがオススメです。
当日の持ち物は以下のとおりです。
• ヘルメット
• グローブ(軍手は不可)
• 長袖・長ズボン(レーシングスーツは不要です)
• 運転免許証
• 国内Bライセンス
• 教材(モータースポーツハンドブック、国内競技車両規則、H項)
• ボールペン(書類の記入や試験などで使います)
ヘルメットとグローブを持っていない方は、それぞれ1000円でレンタルできます。申し込み時に参加料と一緒に支払う仕組みです。また、教材を持っていない方は当日会場で購入できます。まだちゃんとしたヘルメットを持っていなかった筆者は、同行してくれたライターの鈴木ケンイチさんから借りました。
走行するクルマは、ナンバー付きであれば車種は問いません。ノーマル車でまったく問題なく、オートマ車でもOKです。私はマツダの「ロードスター NR-A」で参加しました。マツダさんがご厚意で広報車を用意してくれたのです。ありがたや。
注意点は、オープンカーの場合は4点式以上のロールバーが必要なこと(NR-Aは装着済み)、そして消音効果のあるマフラー(103dB以下)を装着していること。ストレートマフラーは認められません。
あわせて、前日までにタイヤの空気圧と摩耗、ブレーキパッドの残量、オイル類を点検しておくと安心です。車内の荷物は走行前にすべて降ろすことになるので、荷物を置いておくスペースや袋も用意しておくとスムーズです。
4. いよいよ講習会当日! 筑波サーキットへ
今回の試験会場は茨城県下妻市にある筑波サーキット コース2000です。数々のレースやタイムアタックの舞台となってきた、関東のモータースポーツファンにはおなじみの名コースです。
この日は、クレバーサーキットトライアル in 筑波の第2戦と同時開催。パドックにはB部門・C部門に出場する本格的なマシンも並び、朝から独特の緊張感が漂っていました。当日は天気も快晴で、気温も高くなく、最高のサーキット日和。雨だけは降らないでくれ! と祈った甲斐がありました。
さて、まずは受付を済ませ、ゼッケンなどを受け取ります。その後、車内の荷物を降ろし、走行に向けた準備を進めます。周りを見渡すと、私と同じようにノーマルのナンバー付き車両で参加している方が多く、「自分だけ場違いではないか」という不安は早々に消えました。スポーツカーだけでなく、SUVやワゴンの人もいたのは驚きました。
座学でルールとフラッグを学ぶ
講習の中心となるのが座学です。ここでは、
• 国内競技規則
• 競技車両規則
• フラッグ(旗)などのルール
について学びます。
特に大切なのがフラッグです。サーキットでは、コース上の状況をドライバーに伝える手段として、さまざまな色の旗が使われます。たとえば黄旗は前方の危険を、赤旗は走行の中止を意味します。小規模なレースでは無線がないことも多く、旗の意味を正しく理解し、瞬時に反応できることが安全の大前提になります。
レースに出場する以上、「知らなかった」では済まされません。ルールを知らないことは自分だけでなく周囲のドライバーを危険にさらすことにつながります。「速く走る」以前に「安全に走る」ための知識を身につける、という意味で非常に有意義な時間でした。
6. 筆記試験は意外と難しい
座学のあとは筆記試験です。と言っても身構える必要はありません。座学で学習した内容についての簡単なテストです。講習をしっかり聞いていれば十分に対応できる内容ですが、うっかり居眠りなどしているとわからないことだらけになります。朝早いので眠くなりますが、エナドリなどを飲んで寝ないようにしましょう。
また、事前に教材のモータースポーツハンドブックに目を通しておくと、より安心して臨めるはずです。
7.実技試験 Aライ受講者限定のサーキットトライアル
いよいよこの日のハイライト、実際にサーキットを走る時間です。
スタンダードプランでは、同日開催の「Aライ受講者限定サーキットトライアル(Aライクラス)」に出場します。サーキットトライアルとは、1周のタイムを競うタイムアタック形式の競技です。レースのように他車と順位を争ってバトルするわけではなく、自分のペースで落ち着いて走ればOKというのが大きな特徴です。クラッシュは即失格になります。とにかくしっかり完走することが目標です。
しかも、走るのはAライ受講者だけ。「サーキットをガンガン走っている人といきなり一緒に走るのはこわい」という声を受けて設けられたクラスなので、初めてのサーキット走行でも安心です。前の人についていけばいいのです。
走行前には入念なミーティングが行なわれます。コースの走り方、ピットロードの出入り、旗が出たときの対応など、初めての方が戸惑いやすいポイントを丁寧に確認してくれます。走行回数は2回で、最初に慣熟走行がてら走り、インターバルを置いて本番の2回目、というスケジュールです。午前中に座学をみっちり、午後は夕方まで実技となっています。
Aライクラスの走行時間は約15分間です。コースインした瞬間、目の前に広がるのは、レースゲームや動画で何度も見てきた筑波のコース。最初の数周は様子を見ながら、徐々にペースを上げていきました。技術もクルマもみんなバラバラなので、慎重に走行。タイムよりも、安全にルールを守って無事に走り切れたことが何よりの収穫でした。
なお、Aライクラスでも参加台数の35%(最大6位まで)に賞典が授与されます。1~3位にはメダルと副賞、4~6位には副賞が贈られるので、上位を狙ってみるのも楽しみのひとつです。
サーキット走行が終わったらライセンス取得……というワケではありません。もう一度筆記試験があり、問題は先ほどの試験とは別のものになります。ここで合格できないと1日が水の泡になるので、サーキット走行後の疲労感もありますが、全力で取り組みましょう。
8. 合格、そしてライセンス申請へ
すべてのカリキュラムを終えると、いよいよ国内Aライセンスの申請に進みます。最後の筆記試験合格後は、JAFに国内Aライセンスの申請を行ないます。なお、教材費・ライセンスの申請料・JAF入会金は講習会の参加料に含まれていませんので、別途準備しておきましょう。申請料の最新の金額は、JAFの公式サイトで確認しておくと確実です。
筆者の場合、申請から2週間ほどでライセンスが届きました。これでメデ耐に参加する条件のひとつをクリアできました!
9. 費用のまとめ
今回かかった主な費用は以下のとおりです。
・スタンダードプラン 3万3000円
ヘルメット・グローブのレンタル(必要な場合) 0円
教材費(持っていない場合) 0円
国内Aライセンス申請料 4100円
JAF入会金・年会費(未加入の場合) 0円
合計 3万7100円
このほか、筑波サーキットまでの交通費や高速代、ガソリン代なども考えておきましょう。朝7~8時くらいに筑波サーキット集合なので、前日入りするならホテル代もかかります。
【まとめ】国内Aライセンスは思っているより近い
振り返ってみると、国内Bライセンスさえ持っていれば、特別なクルマも、サーキット走行の経験もなしに、たった1日で国内Aライセンスを取得できるというのは、とても魅力的なプログラムだと感じました。
ルールを学び、筆記試験を受け、そして自分のクルマで筑波サーキットを走る。その一日は、単に資格を取るだけでなく、モータースポーツの世界に正式に足を踏み入れる、特別な体験でした。
「いつかは国内Aライセンスを」と思っている方は、ぜひ一度講習会をのぞいてみてください。クレバーレーシングの場合はこのあと12月13日(日)にも開催が予定されています。憧れの「Aライ」は、思っているよりずっと近くにあります。
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