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サッカーとテクノロジー〔FIFAワールドカップ2026〕 第6回

カーボベルデ、キュラソー…… 初出場・小国チームの健闘が止まらない裏側にあるのは“データの力”か

番狂わせ続きのサッカーW杯、その背景に“AI参謀”あり? すべての参加チームが使う「FIFA AI Pro」とは

2026年06月25日 18時30分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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「プレーの言語化」と「ナレッジグラフ」が“サッカー専用の頭脳”を実現

 こうして誕生したFIFA AI Proは、サッカー向けの「初の知的アシスタント」と位置づけられている。LenovoのAIインフラソリューション「AI Factory」を用いた基盤上に構築され、複数のAIエージェントが数百万のデータポイントと2000以上の指標を参照しながら、試合戦術についての質問にリアルタイムで答えるという。

 サッカー専用AIが実現した背景には、FIFAが取り組んで来た「プレーの言語化」があるという。FIFAでは、長年をかけて「パスとは何か」「クロスとは何か」といった、プレーの中で当たり前に発生するイベントを定義してきた。FIFA AI Proは、この“サッカー言語(Football Language)”を土台に、選手/チーム/戦術/イベントを意味的に結びつけた、1つの巨大なナレッジグラフを構築している。

 たとえば、ある1人の選手は、これまで所属した全チーム、出場した全試合、起用されたフォーメーション、関係したすべてのプレー(ゴール、ロストボール、ディフェンスでのボール回収など)とひも付けられている。これを数千人の選手、数百のチーム、数十年ぶんの大会に拡大すれば、複雑につながり合ったデータ群が出来上がる。このナレッジグラフが同システムの“頭脳”であり、単純な表形式のデータベースでは回答できないものを回答可能にする。

 サッカー言語を理解するAIと、ナレッジグラフ化した過去のデータを用意することで、どんなことが可能になるのか。たとえば「前回のW杯でハイラインを敷くチームに所属し、3バックでの経験もある左利きのセンターバックは誰か」といった質問に対し、サッカーの技術・戦術的な概念を理解しつつ、選手の特性やフォーメーションの履歴を参照して、最もふさわしい選手を抽出できるのだ。

 FIFA AI Proでは、分析能力を3つのレイヤー(Tier 1~3)で整理している。Tier 1/2は、ボール・トラッキングや選手の骨格動作データ、プレーのシーケンス(連続性)の分析を組み込み、空間的な位置関係や選手の動きを高い精度で捉える基盤となる。一方、Tier 3はその上位に位置する分析能力であり、複数のデータソースから隠れたパターンを読み取り、トップアナリストのような文脈的・予測的な推論によって、「なぜ」を問う複雑な質問にも答える。

 もうひとつの特長は「AIが答えを偽造しない」仕組みだ。質問に答えられるだけの十分なデータがない場合には、推測で答えるのではなく「該当するデータがありません」と回答する。FIFAが持つデータだけを参照するよう制限することで、いわゆるハルシネーションを防ぐ。

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