Mr.ウォーカー・玉置泰紀がキーマンに聞く「新しい街づくりのOS」 第12回

【E-DESIGN代表取締役・忽那裕樹氏】「かたち・しくみ・うごき」で都市を変える。行政・経済・市民を繋ぐ「トライセクターリーダー」が始動する、新しい街づくりのOS

文●玉置泰紀(エリアLOVEウォーカー総編集長)

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【未来のメガプロジェクト】2030年「夢洲IR」を牽引するトータルデザインの統括体制

玉置: 万博のレガシーの先には、2030年秋頃の開業予定で、2025年4月に本体工事が着工したばかりの「大阪・夢洲のIR(統合型リゾート)」が控えています。初期投資額が約1.5兆円規模に上る、日本にとって全く新しいこのメガプロジェクトにおいて、忽那さんたちはランドスケープデザインという重責を担われています。

 万博という期間限定の実験場とは異なり、MGMとオリックスが推進するIRという永続的な「非日常」のエンターテインメント空間をゼロからデザインするにあたり、現場ではどのような統括体制と「新しい風景のOS」の構築が進んでいるのでしょうか。

忽那: 夢洲のIRプロジェクトにおけるランドスケープデザインについては、ありがたいことにRFP(提案要求書)の段階から深く関わらせてもらっています。最初はMGMの会長から直接「会場のランドスケープ全体を描いてほしい」と依頼を受け、ランドスケープの全体構想を描きました。その後、コロナ禍による減額や計画の見直しなど様々なハードルがありましたが、MGM・オリックス側で揉んだ結果、最終的に事業手法がゼネコン主導の「デザイン&ビルド(設計施工一貫方式)」へと移行する形になりました。

 現在、広大な敷地は竹中工務店、大林組などが担当する「3つの工区」に分かれています。しかし、ランドスケープデザインに関しては、その3工区すべてから僕たちが一括して発注を受けており、トータルで全体のデザインを統括するという、非常にダイナミックな推進体制をとっています。

玉置: ラスベガスのような本格的なエンターテインメント空間を日本に作るのは、誰も経験したことがない前人未到のチャレンジですよね。

忽那: おっしゃる通りです。日本がこれまで体験したことがない、極めてインパクトのあるエンタメ空間になります。僕らが重要視しているのは、単なる閉ざされた商業施設開発にするつもりはない、ということです。

 僕たちはIRの中に「パーク(公園)」という概念を取り入れました。例えば、ラスベガスのベラージオのように屋外で大噴水がバーンと上がるような「非日常のエンタメ」がありつつ、外の公園のような場所にバーを出し、そこでお酒を飲みながら施設の中へとすーっと入っていく。少し外のような空間で過ごしつつ、中に入ったり出たり、また劇場へと足を運んだり……。屋内と屋外がシームレスに繋がる設計です。

 遊園地のように「柵で囲い込む」のではなく、オープンな街として設計し、日常的に市民が利用できる場を目指しています。「柵で囲まない、ものすごい面白い街ができている」という最高のアプローチです。この巨大な開発の全体ランドスケープデザインを担当するにあたっては、緑のネットワーク形成を含む統合的な空間設計を行い、万博やこれまでのプロジェクトで得た知見を、永続的な空間の「器」として最大限に落とし込んでいくつもりです。

【都市の実装】公園から街路・水辺へ。点から面へ広がる官民連携の次なる課題

玉置: 公園の再生だけでなく、「トコトコダンダン」のような水辺空間や、なんば駅前の広場化(なんば広場)、そして御堂筋の歩行者空間化など、個別の「点」から「線・面」へとプロジェクトの規模がどんどん広がっています。

 とくに「トコトコダンダン」は、忽那さんが官民連携プロデューサーとして関わり、建築家の岩瀬諒子さんが設計した木津川の護岸整備事業ですよね。元々は入り堀だったところを埋め立てて生み出された土地を有効活用し、耐震補強された護岸を土台にして雛壇状の遊歩道や広場を設置することで、防災機能と人の居場所を見事に両立させ、グッドデザイン賞金賞(経済産業大臣賞)なども受賞しました。

 こうした多様なステークホルダーが絡み、官と民が一体となって街全体の回遊性を高めるための「共通言語(OS)」づくりにおいて、今現場で一番の課題だと感じていることは何ですか?

忽那: おっしゃる通り、これまでは公園を一つ綺麗にするという「点」の整備でしたが、今はそれらを繋いで都市全体の回遊性を高める「面」のダイナミックな街づくりへとスケールアップしています。

 その時に絶対にぶつかる最大の課題が、「組織と仕組みの限界」なんです。

 これまでの日本の街づくりは、行政主導のトップダウンか、あるいは行政と市民の「1対1」の対立構造になりがちでした。しかし、その1対1の関係性のみでやっていると、どうしても既存のルールや既得権益ばかりが守られてしまい、新しいことは何もできません。市民は「行政がやってくれるはず」と甘え、行政も前例踏襲から変わろうとしない。結果として、街は完全に停滞してしまいます。

玉置: 当事者意識が生まれず、お互いに文句を言い合うだけの不毛な関係になってしまうわけですね。

忽那: そうです。それを突破するためには、かつて私たちが作った「水都大阪パートナーズ」のような、行政と民間の中間に立つ「エリアマネジメント組織(中間支援組織)」が絶対に不可欠なんです。

 行政、経済界、そして市民。この3者がフラットなテーブルで本音で議論し、一緒に汗をかける官民連携のプラットフォームを、その地域の実情に合わせてデザインしなければなりません。

 僕自身、今全国の様々な自治体から呼ばれて、この「官民連携プラットフォーム」の立ち上げや、組織運営の支援に入っています。はっきり言って、こういうフラットな中間組織がないまま「街を良くしよう」と綺麗事を言っていても、実現するのは絶対に無理です。

 だから、もしその仕組みがない街であれば、僕たちは空間のかたちをデザインするより前に、まず「組織をつくること」から始めます。空間のデザイン以上に、制度設計や組織論に泥臭く踏み込んでいくこと。それこそが、これからの都市実装において一番難しく、かつ一番重要な課題ですね。

なんば広場

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