Mr.ウォーカー・玉置泰紀がキーマンに聞く「新しい街づくりのOS」 第12回

【E-DESIGN代表取締役・忽那裕樹氏】「かたち・しくみ・うごき」で都市を変える。行政・経済・市民を繋ぐ「トライセクターリーダー」が始動する、新しい街づくりのOS

文●玉置泰紀(エリアLOVEウォーカー総編集長)

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【万博レガシー】閉幕した万博の「ハレ」の空間から、日常の「ケ」への還元

玉置: 2025年の大阪・関西万博では、ランドスケープデザインディレクターという重責を担われました。喧騒から離れ、アートと自然が融合した「静けさの森」のプロジェクトなども大きな話題になりましたが、万博という巨大な「ハレ(非日常)」の空間で培われたこの緑のネットワークや環境デザインの手法は、今後どのように大阪の日常の「ケ」の都市OSへと還元・移植されていくのでしょうか。

忽那: 実は最初、僕は万博に関わるつもりは全くなかったんですよ(笑)。でも、会場デザインプロデューサーの藤本壮介さんたちから、リングの内側に森をつくる提案をしたけれど、会期後は、すべて切り倒して更地にして返す計画だと聞いたんです。

 僕は「木植えて切ったら、命輝かへんやん」と猛反発しました。命を扱っておいて、終わったら更地にするなんてあり得ないだろうと義憤に駆られて飛び込み、「絶対にレガシーとして残すべきだ」と協会へ直談判して、籠城するような覚悟でこのプロジェクトを牽引することになったんです。

 この「静けさの森」ですが、森を構成している樹木1500本のうち、約半分の700 本は「1970年の万博記念公園」から将来間伐が必要となる樹木を持ってきて移植したものなんです。また200本は 服部緑地や久宝寺緑地、大泉緑地、鶴見緑地、大阪城公園など多岐にわたる大阪府内の公園から間伐予定のものを移植しました。

玉置: 70年万博の森からですか! それは驚きの事実ですね。

忽那: ええ。70年万博の森は、博覧会終了後にパビリオンを撤収し、人工地盤の上に木を植えて自然の森を再生した類を見ない場所です。しかし50年が経過して木が一斉に生長した結果、森の中に光が入り込まなくなり、高木の下の木が枯れてなくなってしまうような状態になっていました。

 森というのは、ただ「自然を大切に」と放置すればいいわけではありません。人間が適度に「間伐」して光を入れ、循環させてやらないと、森は死んでしまうんです。だから、70年万博の森を守るために「どうしても間伐しなければならなかった木々」を引き受け、2025年の万博会場に移植して「静けさの森」を作りました。1970年の万博から2025年の万博へと命を繋ぐ、まさに「命のリレー」なんです。

玉置: イベントのために新しいものを消費するのではなく、既存の命を救い出し、森のサイクルを回す。それが世界的イベントの舞台で行われた意義は計り知れないですね。

忽那: そうなんです。そして、この2025年万博が終わった後、この森はどうなるのか。実は、会場中央の「静けさの森」は、会期後もそのままレガシーとして夢洲に残置される方針です。その継承を組織化するために、宮田裕章氏と藤本壮介氏が共同代表となり、新たに「静けさの森共鳴機構(FoR:Forest of Resonance)」という組織も設立され、僕も共同理事を拝命し、ともに活動しています。

 もちろん、会場内の他の開発エリアなどにある木々についても、終わったからといって捨てるわけではなく、緑を中心とした街づくりを進める自治体などへ再び「移植」され、再利用されていく予定です。大阪市の横山英幸市長も「これからは人の感性や自然との共鳴を大切にするまちづくりが必要」と述べていますが、万博というハレの場で提示した「命のリレー」と「人と自然の新しい付き合い方」のモデルは、一過性のイベントで終わりません。これからの都市OSへと確実に還元され、未来の街の「器」として生き続けていく。それこそが、僕たちが仕掛けた最大のレガシーなんです。

大阪・関西万博「静けさの森」

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