Mr.ウォーカー・玉置泰紀がキーマンに聞く「新しい街づくりのOS」 第9回
【慶應義塾大学准教授・岩尾俊兵氏】老舗企業に眠る500兆円市場を再起動せよ。気鋭の学者が社長として仕掛ける「日本覚醒プラットフォーム」
街づくり、街おこし、そして都市計画。その最前線には、常に常識を書き換える「キーマン」たちがいる。元ウォーカー総編集長であり、長年日本の街を見つめ続けてきた玉置泰紀が、いま最も話を聞きたい相手に直撃、大きく変容する日本の「新しい街の形」を紐解いていく。
第9回は、慶應義塾大学商学部准教授の岩尾俊兵氏。経営学者として「改善(Kaizen)」や組織論の最先端を研究しながら、株式会社トライアイズの代表取締役社長として、伝統ブランドの再生や「日本覚醒プラットフォーム」の構築を指揮する、理論と実務を縦横無尽に「越境」する人物だ。
父親が事業に失敗して、高校進学を断念、自衛隊に入隊し、肉体労働を経て高卒認定試験に合格し、慶應義塾大学商学部に入学、さらには東京大学初の経営学博士となった異色のキャリア。彼が構想する、日本の優れた技術や文化を最新の経営知で再興させるための、2026年を見据えた新しい都市のOSに迫る。
【ゲスト】岩尾俊兵氏
【岩尾俊兵氏プロフィール】 慶應義塾大学商学部准教授。株式会社トライアイズ代表取締役社長。博士(経営学)。1989年佐賀県生まれ。東京大学大学院経済学研究科マネジメント専攻博士課程修了。専門はビジネスモデル・イノベーション、組織論。組織学会高宮賞、義塾賞など受賞多数。著書に『世界は経営でできている』『13歳からの経営の教科書』『経営教育』など。理論と実践の往復を通じて、経営概念の再定義に挑んでいる。
「群像新人賞」への挑戦と、文学の力が必要な理由
玉置泰紀(以下、玉置): 今日はよろしくお願いします。実は、岩尾さんと初めてお会いしたのは、私が一般社団法人メタ観光推進機構を立ち上げる前(2021年1月以前)ですから、もう結構前ですよね。
岩尾俊兵(以下、岩尾): 東大の情報理工学系研究科の「イントロダクション・トゥ・マネジメント」という正規授業にゲストで来ていただきました。もともとTwitterで玉置さんの発信を拝見していて、お話を伺いたいと思っていました。当時の後輩が玉置さんにとても可愛がっていただいていて、彼を通じてお願いしたんです。
私は当時、明治学院大学の専任講師でしたが、自分が東大で博士号を取ったコースの第1期生だった縁で、そのコースの先生として戻っていました。
玉置: その後、5、6年ぶりに岩尾さんから突然「本を出したい」とご連絡をいただいて。私がKADOKAWAの編集者を紹介したのですが、彼が岩尾さんの企画に強く興味を持って話が進みました。
岩尾: ええ。『13歳からの経営の教科書』という形になりましたが、完全な小説形式にしました。主人公の少年が図書館で不思議な本を拾うんですが、裏から読むと、その本自体がこの教科書になっているというメタ構造の仕掛けを入れたりして。
玉置: 岩尾さんのアプローチは、単なるビジネス書を超えた「文学的な面白さ」があります。その後出された『世界は経営でできている』も15万部売れる大ヒットになり、ご自身の文体を「令和冷笑系」と名乗るなど、すごくユニークです。
岩尾: 私はもともと文学への思い入れが強くて、『群像新人賞』にも応募していたんです。最終候補まで残ったんですが、私の年は受賞作無しになってしまいました。審査員の東浩紀さんにボロクソに言われたり、数年後に東さんと和解したりしました。でも、自分の表現にはどうしても文学の力が必要だったんです。
玉置: それはなぜですか?
岩尾: 私は親父の会社の失敗など色々あって、高校に行けずに自衛隊に入りました。その時、自衛隊に、そしてその奥にある「日本という国」に自分の人生を助けてもらったという強い思いがあります。だから、恩返しとして日本をもう1回いい国にしたい。そのためには、人々の「経営に関する考え方そのもの」を変える必要があり、それには論理だけではない「文学の力」が不可欠だと思ったのです。
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