Mr.ウォーカー・玉置泰紀がキーマンに聞く「新しい街づくりのOS」 第7回
【国土交通省・後藤隆昭氏】防災は「共創のOS」である。シン・ゴジラのコミケ本『虚構と防災』が翻訳する、公助の限界を超えた都市のレジリエンス
街づくり、街おこし、そして都市計画。その最前線には、常に常識を書き換える「キーマン」たちがいる。元ウォーカー総編集長であり、長年日本の街を見つめ続けてきた玉置泰紀が、いま最も話を聞きたい相手に直撃、大きく変容する日本の「新しい街の形」を紐解いていく。
第7回は、国土交通省北海道局総務課長の後藤隆昭氏。1995年の国土庁入庁以来、阪神・淡路大震災から東日本、熊本、西日本豪雨、能登半島地震まで、激甚化する災害の最前線に立ち続けてきた「防災のプロフェッショナル」だ。一方で、映画『シン・ゴジラ』の行政手続きを徹底解説した同人誌『虚構と防災』を執筆し、コミケ発の「中の人の解説本」という異例のムーブメントを巻き起こした「発信し続ける官僚」の旗手でもある。
「公助には限界がある」――。役所が自らの「できないこと」を直視し、エンターテインメントという補助線を引いて市民に情報を翻訳・還元する。かつての開拓使のDNAを継ぐ北海道というフロンティアから、官民の垣根を超えて「守り」を「創る」へと転換させる、後藤流・まちづくりのOSに迫る。
【ゲスト】後藤 隆昭(ごとう たかあき)氏
後藤 隆昭(ごとう たかあき) プロフィール 国土交通省 北海道局 総務課長。1995年、旧国土庁入庁(2001年より国土交通省)。内閣府防災担当として東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨等の最前線で対応に当たった。一方、現役官僚の視点で映画『シン・ゴジラ』の行政手続きを徹底解説した同人誌『虚構と防災』を執筆し、コミケ発の「中の人の解説本」という異例のムーブメントを起こした「発信し続ける官僚」の旗手。
原体験とOSの限界
1995年入庁、バブルの「後始末」と「自衛隊アレルギー」の狭間で
玉置: まずは後藤さんのキャリアを深掘りしたいのですが。入庁は1995年、旧国土庁ですね。阪神・淡路大震災の年。最初から「防災」を志していたんですか?
後藤: いえ、実はそうでもないんです。話せば長くなりますが(笑)、当時はバブルが弾けて、日本経済がどうなっていくかという時期でした。私は経済学部だったので民間なら金融系もありましたが、バブル経済とその後の崩壊過程での民間の混乱ぶりを見る中で、民間よりも「国として政策をどうしていくか」をやりたいなと。そんな、ある種「軽い気持ち」でのスタートでした。
玉置: 90年代半ばといえば、まさに「失われた10年」の真っ只中。『東京ウォーカー』もバブル崩壊直後に創刊して、「お金がない中でいかに効率的に遊ぶか」という情報を出していた全盛期でした。後藤さんが最初に入られたのは……?
後藤: 「地価調査課」です。公示価格、つまり土地の値段を扱う部署ですね。当時は地価が下がりまくっていて、まさにバブルの後始末。国会では不良債権問題が連日議論されている、そんな時代でした。その後、1998年に防衛庁(現・防衛省)へ出向することになります。ここが、私の防災キャリアの第一歩でした。
玉置: 防衛庁への出向。そこがいきなり『シン・ゴジラ』的な世界だったわけですね。
後藤: 阪神・淡路大震災の際、当時の村山政権下で「自衛隊の派遣が遅れた」と散々叩かれましたよね。実際には情報の遮断や法的な縛りなど、一方的に言われているのとは違う事情も多々あったのですが。そこで「政府の防災の調整役である国土庁防災局と自衛隊の連携を深める必要がある」ということで、人事交流が始まり、私が自衛隊の災害派遣担当の係長になったんです。
玉置: 当時はまだ、自衛隊に対する社会的な「アレルギー」も強かったのでは?
後藤: そうなんです。野党を中心に「たとえ災害であっても自衛隊が出てくるのはけしからん」という空気がまだ残っていました。でも、現場では「自衛隊が来てくれて助かった」という声があふれていた。兵庫県庁が被災して連絡が取れないから、知事の要請を待たずに自主派遣の準備ができるようにしようとか……そうやって少しずつ、自衛隊の運用も含めた「災害対策のOS」を書き換えていく。まさにその過渡期に、私は現場に立っていたんです。
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