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科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第74回

【JSTnews2月号掲載】さきがける科学人/創発的研究支援事業 「海洋の光共生が織りなす異生物間ネットワークの解明」

白亜紀から続くロマンに惹かれて挑む、浮遊性有孔虫の研究

2026年02月18日 12時00分更新

文● 畑邊康浩

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高木悠花。東京大学 大気海洋研究所 海洋生命システム研究系 海洋生態系科学部門 准教授。静岡県出身。2016年早稲田大学大学院創造理工学研究科地球・環境資源理工学専攻博士課程修了。博士(理学)。日本学術振興会特別研究員(PD)、千葉大学大学院理学研究院助教などを経て、24年より現職。21年~24年ACT-X研究者、22年より創発研究者。

Q1 研究者を目指したきっかけは?
A1 「火の鳥」の壮大な世界観に心奪われ

 幼少期から、地球や宇宙などに漠然と興味がありました。特に、手塚治虫の「火の鳥」に夢中になり、過去と現在が交錯する壮大な世界観に心を奪われました。高校では自然科学を学びたくて理系を選びましたが、選択科目ではあえて物理を選び、生物は自分で勉強しました。

 大学でこそ地学を学ぼうと、地球科学を専攻しました。研究室選択の際には、フィールドワークができ、かつ生き物に関われる古生物学・古環境科学の研究室を選びました。そこで「浮遊性有孔虫」という海を漂う単細胞生物の化石の研究に出会い、以来このテーマで研究を続けています。

 炭酸カルシウムの殻を持つこの生物は、化石として地層に残るため、白亜紀の地層からも見つかります。修士課程の時に、有孔虫に「光共生」という生態があることを知り、興味を惹かれました。光共生とは、光合成をする微細藻類を細胞内に共生させることです。化石からも共生の痕跡を探ることはできますが、光共生という現象そのものの理解を深めるため、現生の有孔虫を扱うようになりました。

Q2 現在取り組んでいる研究は?
A2 光共生の進化史や制御遺伝子の特定

 多くの有孔虫は細胞内に微細藻類をすまわせています。宿主の有孔虫も共生藻もそれぞれ単細胞でありながら、共生藻は光合成で作った有機物を有孔虫に渡し、有孔虫は代謝産物を共生藻に提供する光共生の関係を築いています。

 研究を進める中で、放散虫という別のプランクトンでも、有孔虫の共生藻と同一の藻類を共生させていると報告されていることがわかりました。私は、共生藻を介して異なる種類のプランクトンがつながり、目に見えないネットワークが海の中に形成されているのではないかと考え、このネットワークの全貌を解き明かすことを目指しています。最近では、浮遊性有孔虫における光共生の進化史を解明し、強固なパートナーシップが長い進化の中で形成されてきたことを示しました。

 また、光共生を制御する遺伝子の特定にも取り組んでいます。浮遊性有孔虫の遺伝子発現解析は世界でもほとんど例がなく、RNAの抽出方法を検討するところから始めましたが、現在は遺伝子を解析するためのデータを得るところまで進んでいます。

光共生している浮遊性有孔虫の写真です。

Q3 研究者を目指す人にメッセージを
A3 手法を限定せず、挑戦を続ける

 今でも忘れられない運命的なエピソードがあります。修士課程の時に、当時読んで感銘を受けた論文の著者である米スクリプス海洋研究所のリチャード・ノリス氏が率いる研究航海に参加する機会を得たのです。

 船上で自分の研究を発表する機会があり「あなたの論文を読んで、この研究を始めた」とノリス氏に伝えたところ、若い研究者にインスピレーションを与えられたことを心から喜んでくれました。私もいつか若い研究者の道しるべのような存在になれたらうれしいですね。

 有孔虫の光共生は、世界でも研究者の少ない分野です。見つけた現象の多くが「世界初」の発見になるのが醍醐味(だいごみ)です。私は、出会いを大切にすることで、熱中できる研究対象に出会えました。研究手法を限定せず、必要だと思えば何でも試してきました。有孔虫は、化石になっても、生きている姿も、とても美しいです。顕微鏡の向こうに広がる小さな宇宙の美しさに、今日も心を奪われながら挑戦を続けています。

プライベートでは3児の母です。

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