【JSTnews1月号掲載】NEWS&TOPICS 創発的研究支援事業(FOREST)/研究課題「新世代量子ビームによる超100テスラ量子物性の解明」
地磁気の約200万倍・110テスラの磁場を発生する、移動可能な小型磁場発生装置を開発
2026年01月19日 12時00分更新
近年、1000テスラを超える超強力な磁場が実験で使えるようになり、こうした磁場が物質の結晶構造を不安定化し、新しい結晶構造を出現させることがわかってきました。しかし、結晶構造を調べるには物質にX線を当てて、その回折像を調べる必要があります。超強力な磁場およびX線の発生には、それぞれ施設級の大型装置が必要であり、両者を組み合わせて実験をするのは困難でした。
そこで電気通信大学大学院情報理工学研究科の池田暁彦准教授らの研究グループは、一巻きコイルに100万アンペアほどの電流を流し、爆発する一瞬に超強力な磁場を発生させる破壊型パルス磁場発生装置「PINK-02」を開発。一辺の長さが約1.5メートルの立方体の形状で重量1.1トンの移動可能なこの装置により、地磁気の約200万倍にあたる110テスラの磁場を発生させることに成功しました。研究グループは、世界で2番目に強力なX 線自由電子レーザーを発生できる国内施設「SACLA(サクラ)」にPINK-02を持ち込み、110テスラの磁場における固体酸素のX線回折像のデータを取得。固体酸素の結晶構造が1パーセントにも達する異方的な大きな歪(ひず)みを示すことを確認しました。
こうした極限環境で発生する現象を研究することは、物質の未知の性質を発見し、新しい機能性物質の創出につながります。池田准教授らは今後、さまざまな結晶が超強力な磁場でどのように構造が変化するか調べる他、固体酸素に120テスラ付近で現れると予想されている全く新しい結晶構造を明らかにしたいと考えています。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事
-
第114回
TECH
パンや酒、チョコづくりにも関わる微生物「酵母」の進化を追求 -
第113回
TECH
希少糖が高血糖を改善、2型糖尿病の予防・治療につながる仕組みを解明 -
第112回
TECH
傷ついた植物が器官を再生させる仕組みを解明、バイオテクノロジーの発展へ期待 -
第111回
TECH
ナノ構造が生み出す微小な力を3次元的に精密計測するマイクロドローンを開発 -
第110回
TECH
高効率に発光&発電が可能な太陽電池発電を開発、発電できる有機ELディスプレイへの応用も -
第109回
TECH
油を溜め込むサプリメント酵母で、ウナギを手頃にもっと美味しく! -
第108回
TECH
数理モデルを駆使し、数学者が挑む「じんましん」発症のメカニズムの解明 -
第107回
TECH
18桁の精度で「秒」を刻む! 最先端の時間計測技術「光格子時計」とは -
第106回
TECH
ファンタジーの魔法使いのような人工知能に夢を見た。日本語のニュアンスを捉える自然言語処理を研究 -
第105回
TECH
次世代エレクトロニクスデバイスの性能向上のために重要な、有機薄膜の自己組織化メカニズムを解明 -
第104回
TECH
子宮内での胚の着床の分子機構を解明、不妊治療の発展に期待 - この連載の一覧へ








