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科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第56回

【JSTnews12月号掲載】戦略的創造研究推進事業ERATO 豊田植物感覚プロジェクト

食虫植物が獲物を捕らえる「感覚毛」の全容解明に一歩前進

2025年12月15日 12時00分更新

文● 中條将典

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 食虫植物であるハエトリソウの葉には6本の「感覚毛」と呼ばれる組織があり、虫などの獲物からの接触刺激を感知すると、左右に分かれた葉が閉じ合わさって捕らえます。この機構は発見から200年以上もの間、多くの研究者によって調べられてきましたが、刺激を感知する細胞レベルでの詳しい仕組みは不明でした。

 埼玉大学大学院理工学研究科の須田啓助教らの研究チームは、細胞内のカルシウムシグナルと電気シグナルを同時に測定する技術を開発。ハエトリソウの感覚毛で多く発現していて、動物には存在しないたんぱく質DmMSL10が接触刺激を感知する高感度なセンサーとして機能していることを明らかにしました。研究チームは、カルシウムイオンと結合すると緑色の蛍光を発するバイオセンサーを導入したハエトリソウを作製。開発した装置を組み合わせ、感覚毛を曲げた時の応答を調べました。小さく曲げると基部の一部の細胞周辺だけに伝わるカルシウムシグナルと微弱な電気シグナルが発生し、大きく曲げると葉全体の長距離に伝わる強い両シグナルが発生することを明らかにしました。長距離に伝わるシグナルが2 回起こると葉が閉じ合わさりました。さらにDmMSL10遺伝子の機能を壊した株では、大きく曲げても両シグナルが発生しないことも見いだし、実際の生態系を模した環境で感覚毛が虫を感知しづらくなることを明らかにしました。

アリ(紫)が感覚毛に触れたときの応答(白矢印)を観察したところ、野生株(左図)では虫を感知してカルシウムシグナルが葉全体に伝わるが、DmMSL10破壊株(右図)では虫を感知できないことがある。

 接触刺激を感知する触覚の存在は、さまざまな植物で知られています。今回の成果は動物とは異なる植物の感覚の解明に向けた大きな一歩になる可能性があります。

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