【効かない薬をなくす】細胞レベルのオーダーメイド医療は医療費削減にもつながる
医療も“多様化の時代”へ
世の中の多様化はますます加速している。ファッションも働き方も、人それぞれの選択肢が当たり前になった。そしてその流れは、医療にもやってきている。
そもそも人によって体質は違うのに、薬は“万人向け”として量産されてきた。だから「効く人には効くけど、自分には効かない薬」が存在するのも不思議ではない。結果、日本では複数の薬を飲み続ける「ポリファーマシー」問題が広がり、医療費は膨らむ一方だ。
こうした問題の解決につながりそうなのが、個人に合わせた薬を作るオーダーメイド創薬だ。
細胞で“効く薬だけ”を選ぶ
北海道大学発スタートアップのHILO株式会社が開発しているのは、患者由来の細胞に薬を与え、その反応を光でとらえる技術。細胞の中でシグナル分子やたんぱく質がどう変化するかをリアルタイムに測定することで、「効いている/効いていない」を事前に見極められる。従来の「投与してから数週間待つ」やり方に比べて、格段にスピーディーで正確だ。
この仕組みは患者のためだけでなく、製薬会社にとってもありがたい。治験の効率化や動物実験の削減につながり、効かない薬を市場に出すリスクも減らせる。つまりHILOは「創薬支援」という裏方としても価値を発揮するのだ。
オーダーメイドなのに実はお手頃
「オーダーメイドだから高額なんでしょ?」と遠い世界の話と思えるかもしれない。でも実際は、動物実験や治験を減らせるので、数十億円から数百億円規模の開発コストを減らせる可能性がある。患者にとっても最初から効く薬だけを選べれば、体も財布も守れるし、社会全体の医療費削減にもつながる。
効かない薬は飲まない。そんな未来を現実にする一歩が、北の大地から始まっている。




































