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宇宙デブリを撃ち砕け! 阪大発“超強力レーザー”が現実に

特集
未来を変える科学技術を追え!大学発の地味推しテック

強くてカッコいいレーザー砲は今どうなってる?

 今、私たちの周りはレーザーであふれている。スーパーのバーコードリーダーや光通信から、美容クリニックのシミ取りまで、レーザーは生活を支える身近な光だ。

 しかし思い起こせば、子どもの頃に夢中になったマンガやアニメでは、レーザーといえば最強の兵器だった。ドラえもんのレーザー銃や、宇宙戦艦ヤマトの艦隊戦で飛び交う光線は未来の力の象徴だった。あの強力なレーザーは現実に存在するのか?

 平和な日常で目にすることはないが、現実の世界でもレーザー砲の研究は進んでいる。米軍ではレーザー兵器が実際に導入され、日本の防衛省も研究開発を進めている。そして大阪大学は、50年にわたり強力なレーザー技術を磨き続けてきた。その大阪大学レーザー科学研究所から生まれた株式会社パワーレーザーが目を向けるのは、なんと宇宙だ。

「切る」どころじゃない、金属を一瞬で蒸発させる光

 パワーレーザーの武器は、わずかフェムト秒(1000兆分の1秒)単位で光を発する「極短パルスレーザー」だ。普通のレーザーがじわじわと熱を加えるのに対し、これは一瞬でエネルギーを叩き込む。例えば、金属に発射すると「切れる」どころか、一瞬で蒸発してしまうほどの圧倒的なパワーだ。

宇宙ゴミを撃ち落とし、核融合に火をつける?

 同社はそんなレーザーを、地球の周りに漂う宇宙ゴミ(スペースデブリ)の除去に使おうとしている。現在、地球周回軌道には1cm以上のデブリだけで約120万個も存在し、人工衛星や宇宙ステーションの脅威となっている。デブリにレーザーを照射して軌道を変え、大気圏で燃やす。SFのレーザー砲さながらの発想だが、すでに実現可能性が検討されている。

基地の建築から給電まで宇宙用途いろいろ

 さらに視野に入れているのが核融合エネルギー。超高出力レーザーで燃料を圧縮し、太陽と同じ反応を人工的に起こす。必要な温度は数千万度、圧力は数億気圧にも達する。もし成功すれば、人類のエネルギー問題を一気に解決するブレイクスルーになる。

 もちろん産業用途も有力だ。金属やセラミックの加工など、微細で高精度な処理が必要な現場で、レーザーの「破壊力と精密さ」が同時に生きてくる。

世界の電力1000倍! 大阪にある“ラスボス級レーザー”

 ちなみに、日本はレーザー研究の先進国でもあり、大阪大学レーザー科学研究所は世界最大級の超高出力レーザー「LFEX(Laser for Fast Ignition Experiment)」を保有している。

 LFEXは、1兆分の1秒(1ピコ秒)の間に、2ペタワット(2000兆ワット)もの出力を発生させることができるという。単位が大きすぎて想像がつかないが、「世界の電力使用量の約1000倍」を一瞬で出力するようなものだそう。つまり、子どもの頃に夢見たレーザー砲が、現実に近いところまで来ているのだ。宇宙ゴミの除去や核融合エネルギーの実現も、意外と夢ではないのかもしれない。

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