このページの本文へ

科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第26回

【JSTnews8月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業さきがけ/研究領域「植物分子の機能と制御」/研究課題「『擬態する花』に着目した昆虫操作の物質・遺伝基盤解明」

くさいにおいを作る「腐肉擬態花」のメカニズムを解明

2025年08月19日 12時00分更新

文● 中條将典

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 花の中には、腐った肉のようなにおいでハエなどの昆虫をおびき寄せる「腐肉擬態花」という奇妙な花が何種類もあり、代表例としてはラフレシアがよく知られています。しかし、いかにしてこのような臭さの成分を作ることができるようになったかはよくわかっていませんでした。

 国立科学博物館の奥山雄大研究主幹らのチームは、山野草のカンアオイの仲間が臭さの成分であるジメチルジスルフィド(DMDS)を生み出す仕組みを解明しました。同チームは、アミノ酸の一種であるメチオニンからDMDSを生合成する酵素活性がカンアオイの仲間の一部の種の花に存在することを実験で確認。その中でDMDSを花のにおいに含む種と含まない種とを30系統選び、それぞれの花で全遺伝子の発現状態を比較解析しました。その結果、DMDS生成に関与していると思われる2つの遺伝子、MGLSBPを見つけました。その後、SBPで作られる酵素でメタンチオールからDMDSが生成することを発見し、ジスルフィドシンターゼ(DSS)と名付けました。同チームはさらに、カンアオイ属の進化の系統においてSBPに遺伝子の変化が起きたこと、またメタンチオールからDMDSを作らずに分解する酵素MTOXが祖先であり、そこからDSSが派生し、両者の機能の違いはたった3アミノ酸の違いで決まっていること、ザゼンソウ属とヒサカキ属でも同様の派生が起こっていることも突き止めました。

 つまり、「臭い花」への進化の道筋は限られており、3つの植物群は全く同じプロセスを経て全く同じ物質を作るようになったということです。これは異なる生物種が同じような環境に置かれた結果、独立に同じ機能を獲得したという収れん進化を分子的に解明できた貴重な成果と言えます。

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    TECH

    フォーティネットの「SSL-VPN廃止」 IPsec移行と脱VPN、それぞれの注意点を総ざらい

  2. 2位

    ソフトウェア・仮想化

    「SaaSの死」の影響は感じない ― グローバル以上に好調な日本市場、ServiceNow鈴木社長が語る

  3. 3位

    ネットワーク

    ネットワークとセキュリティの統合に強み 通信事業者系ZTNA/SASEサービス3選

  4. 4位

    TECH

    「蟻の一穴」となるリモートアクセスVPNの脆弱性 ZTNA/SASEはなぜ必要か?

  5. 5位

    デジタル

    海外駐在員の負担を軽減し、ワンチームへ kintoneは言語と文化の壁を越える「翻訳の魔法」

  6. 6位

    ビジネス

    医療費5兆円抑制につながる“国産ヘルスケア基盤”構築へ SMBC×富士通×ソフトバンクが業務連携

  7. 7位

    エンタープライズ

    基盤も古いし、コードも酷い! そんなクエストにGitHub Copilotで試行錯誤しまくった「みんな」こそ最高

  8. 8位

    サーバー・ストレージ

    「30%ではなく“30倍”の生産性向上へ」 AIエージェント時代に求められるIT基盤、マイケル・デル氏が語る

  9. 9位

    ビジネス・開発

    いますぐ捨てたいITサービスは? AI推しにそろそろ飽きてません? 情シスさんのホンネを「ゆるっとナイト」で聞いた

  10. 10位

    ITトピック

    AIセキュリティで必要な6つの対策/20代の半数が「検索エンジンを使わない」/生成AIツールはエンジニアの「業務インフラ」へ、ほか

集計期間:
2026年05月19日~2026年05月25日
  • 角川アスキー総合研究所