パナソニックがフルサイズミラーレス機「LUMIX S1Ⅱ」を発表した。最高秒70コマの高速連写が可能な2410万画素の部分積層型撮像素子を搭載した高速モデルで、3月に発売された4430万画素の高解像度モデル「S1RⅡ」とは性格の異なるフラッグシップ機になる。
また同時にコンパクトな開放F2.8大口径標準ズーム「LUMIXS 24-60mm F2.8」も発表され、こちらも注目だ。
ともに発売は6月19日予定とまだ先になるが、パナソニックから試用機を借用できたので、さっそく撮ってみた。
部分積層型撮像素子で
毎秒70コマ撮影の威力
やはり最大の特徴は昨年発売のニコン「Z6Ⅲ」に次いで採用された部分積層型撮像素子による高速撮影機能だろう。連写速度はシャッターの電子/メカや画質の設定などで異なるが、電子シャッターで撮影する超高速の連写モード「SH」ならRAW+JPEGでも最高秒70コマ撮影ができる。
さらにプリ連写も可能と速度面だけでみればライバルの高速モデル機を上回るスペックだ。鳥が飛び立つ瞬間など高速な動きも細かく捉えることができる。

秒70コマのプリ連写で撮影した作例その1。
使用レンズ「LUMIX S 70- 300 mm F4.5-5.6」・焦点距離300mm・絞りF6.3・シャッタースピード1/6400秒・ISO1600。
(以下追記がない限り共通フォトスタイルスタンダード・ホワイトバランスオート・JPEG FINE)
AFも動きが素早く不規則な被写体では連写中に外れることもあったが、その後復帰してくれることもあり、まずまずの追随性能といえるだろう。
「SH」での連続撮影は180枚で一度ストップし、その後バッファが開放され次第続けて撮影が可能になる。これはRAWでもJPEGでも変わらない。また連写速度も秒70コマ(もしくは秒60コマ)に固定される。飛行機の離着陸など被写体によっては速すぎる場合もあるので、欲をいえば秒40/30/20コマなど段階的に選べるようにしてほしかった。
電子シャッターの動体歪みも全面積層型ほどではないが、一般的な撮像素子よりも抑えられている。ただストロボ同調はできないようで、同じ部分積層型を採用しているニコン「Z6Ⅲ」では可能だっただけに少し残念だ。
ボディデザインはS1RⅡとまったく同じ
電源オフ時のシャッター閉幕機能も搭載
ボディーの形状は「S1RⅡ」と兄弟機だけあってまったく同じ。見た目の違いは前面のロゴくらい。両機を共用しても操作系が統一されているので使いやすい。半面見た目で区別がつきにくいので、シールを装着するなど工夫が必要かもしれない。
おさらいがてらボディーの特徴を述べていくと、先代の「S1」シリーズよりも大幅に小型化され、スタンダード機「S5Ⅱ」に近いサイズ感。グリップも手に馴染む形状で安定して構えられる。
上面のダイヤル類にはロックボタンを設け、左肩ドライブダイヤルの下段には静止画と動画の切替スイッチを備えている。
EVFは576万ドット倍率0.78倍の高精細で、背面液晶の可動方式もチルトとフリーアングルのハイブリッドを採用している。
ペンタ部にはお馴染みの冷却ファンがあり、電 源オフ時のシャッター閉幕機能も搭載され、熱やゴミへの対策もバッチリだ。
手持ちで9600万画素のハイレゾモード
新機能「AI AWB」は未来だ
24-60mm F2.8は新発明
メディアはSDとCFexpress Type-Bのデュアルスロット。連写モード「SH」でRAW+JPEGで撮影し、バッファが一杯になった状態から書き込みが終了するまでの時間を計測すると、CFexpress Type-Bが約41秒、UHS-ⅡのSDが約43秒と大差は無かった。
PCへの転送(RAW+JPEG180の180コマで約4.73GB))ではCFexpress Type-Bが約25秒に対し、UHS-ⅡのSDは35 秒と差があった。大量に連写撮影をするなら、やはり高速のメディアのほうが有利そうだ。
バッテリーは現行LUMIXのフルサイズ機共通の「DMW-BLK22」で充電器も付属する。公称撮影枚数は背面液晶350枚/EVF310枚。実際でもRAW+JPEGで300カット600枚撮影時に電源目盛残り一つだった。
撮影中スリープからの復帰が少しのんびりだったり、前面右下部のFnボタンを不用意に押してしまいがちなど、気になる点も「S1RⅡ」と同様だが、剛性感が頼もしいボディーや、バタつきの無いメカシャッターも撮っていて心地よく、この辺りはフラッグシップ機の名に恥じない造りだ。
画質は2410万画素とフルサイズ機ではスタンダードだが十分な解像感があり、しっとりした豊かな階調再現にも好感がもてる。

連写画像を合成する「ハイレゾモード」では9600万画素相当(12000×8000ドット)の高解像での記録が可能。こちらは通常撮影。
使用レンズ「LUMIX S 24-105 F4」・焦点距離69mm・絞りF8・シャッタースピード1/125秒・ISO400。
また「S1Ⅱ」から新たに搭載されたのが「AI AWB」で、AI技術で光源ごとに調整する機能だ。現状ではカメラ内RAW現像のみ処理で、シーンによっては若干微妙な場合もあるが、今後の進化に期待が持てる機能だ。
新レンズ「LUMIXS 24-60mm F2.8」の紹介もしていこう。最近各社からコンパクトなF2.8ズームが登場している。そのなかで標準ズームは28-70mm前後がほとんどだが、あえて24-60mmと広角側にシフトしているのが特徴だ。
望遠側に物足りなさを感じるかもしれないが、画像の一部を拡大することで望遠効果が得られる「ハイブリッドズーム/クロップズーム」で十分カバーできる。全長も99.9mmと短いので持ち運びもしやすく価格もリーズナブル。大口径標準ズームの新定番になりそうな予感がする。

「LUMIXS 24-60mm F2.8」広角側絞り開放で撮影。少し周辺光量低下を残した補正。ピント部の解像感は高い。
焦点距離24mm・絞りF2.8・シャッタースピード1/2500秒・ISO100。

個人的に気に入ったのが望遠側60mmとういう焦点距離。あまり馴染みはなかったが、街中のスナップでは思いのほか相性がよく楽しめた。
焦点距離60mm・絞りF2.8・シャッタースピード1/500秒・ISO100。
ISO25600まで実用的画質
手ブレ補正も強力だ
高感度の常用最高はISO51200と「S1RⅡ」と同じだが、拡張でISO204800まで設定が可能。ノイズ処理のバランスもよくISO25600程度でも実用的な画質。画素数控えめなぶん高感度耐性も高いようだ。
ボディー内手振れ補正の効果も「S1RⅡ」と同等。手ブレ補正非搭載の「LUMIXS 24-60mm F2.8」でも遠景1秒程度、近景1/4秒程度でもブレを防止することができた。
高解像度モデルと高速モデルがそろった「S1Ⅱ」シリーズだが、もう1機種「S1ⅡE」という製品も登場している。これは通常の2420万画素の撮像素子を搭載し、価格は35万6400円と10万円近くお安い。
高解像度や高速性能はそれほど必要ないが、フラッグシップクラスのカメラが欲しいユーザーには良い選択肢になるだろう。ラインナップが充実した「LUMIX S」シリーズ。レンズの展開も含め今後が楽しみだ。
