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最新ユーザー事例探求 第60回

使い慣れたツールからの移行を促し、全社で利用を定着化させたノウハウを披露

規模拡大するSansanが抱えた“成長痛”、Notion全社導入と定着化で克服

2024年11月12日 08時00分更新

文● 末岡洋子 大塚/TECH.ASCII.jp

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NotionとNotion AIの活用で「お互いが見えるようになった」

 そうして導入されたNotionは、全社レベルの全体最適というSansanの狙いを実現しつつあるようだ。西場氏は、特に「Notion AI」に対して高い評価を与える。

 「Notion AIで情報を検索すると、いろいろな部の情報がお互いに見えるようになった。これにより、プロジェクトが計画通りに進むようになった。プロジェクトのリスク管理などの情報検索も半自動化でき、透明性が向上している」(西場氏)

 例えばプロダクト開発においては、顧客からのある要望に対して、営業チームと開発チームとで“温度差”が生じるケースがある。営業チームから要望を聞いた開発チームでは、要望している顧客の規模や与える影響などのイメージがわかない、ピンと来ない、そういった状況だ。

 ここでNotionが活躍する。顧客との過去の議事録ややり取りがすべて記録されていれば、Notion AIが、その顧客がそもそもどういう経緯でSansanのサービスを導入したのか、どのくらいの規模で使っているのかといったことをまとめてくれる。これにより、営業チームとの“温度差”が縮まるわけだ。

「ミクロ(個人)」と「マクロ(組織全体)」の両方にメリットを

 西場氏は、こうしたNotionの活用は「(Sansan社内の)全員がNotionをドキュメントツールとして使っているからこそできる」と強調する。つまり、会社としてNotionを導入するだけではだめで、利用定着化のための策をきちんと講じたことで達成できたと言える。

 具体的にどのような施策を講じたのか。まず紹介したのは「テンプレートとデータベースの設計」だ。これにより、集合知、ベストプラクティスなど、現場でやっていくにあたっての改善をプロセスに落とし込むことができた。西場氏は「PDCAを回すことで、どんどん良くなっていっている感じがある」と話す。

 次は「社員のスキルアップ」である。西場氏は、「Notionを使いこなすためにはスキル向上が必要。社内でも研修をやっている」と語る。

 そこまでやったとしても、使い慣れたツールからの移行、Notionへの統一がうまくいくとは限らない。Sansanも、過去には「Confluence」で統一を試みて、うまくいかなかった経験があるという。

 なぜ、Notionではうまくいったのか。その理由について西場氏は、「『ミクロ(個人)』と『マクロ(組織全体)』の両輪で回したから」だという。つまり、「個人」と「組織全体」の両方でメリットが感じられるようにするという意味だ。

 個人のミクロレベルでは、Notion AIを活用することでドキュメント作成などの業務効率が改善する。当然、個人としてはうれしい。さらに、社内ポータルをNotionに移行し、社内制度などについての問い合わせをNotion AIでできるようになったため、利便性も増している。

 一方、組織全体のマクロレベルでは、プロジェクトとドキュメントをNotionで一元管理することで透明性が高まる。このことが、組織としての戦略的な意思決定を支援する。さらに、Slackの全体アナウンスをNotionでデータベース化し、社員個々人の未読/既読管理を高度化していると話した。

 「ミクロとマクロの両方でメリットがあることが重要。たとえ組織全体にはメリットがあったとしても、個人レベルで不便になるのであれば、ツールの移行は難しい。それならば結局、スプレッドシートに戻ってしまう」(西場氏)

 西場氏が強調するのは、事業企画とエンジニアが同じツールを使うことで得られるメリットだ。エンジニアリングの要件として書かれていることを直接読んでも、ビジネス側ではそれがビジネスニーズに合致しているかどうか理解できない。これをNotion AIで“解読”してもらうことで、そうした会話ができるようになる。

 「これはお互いの理解を深めるのに役立っているだけでなく、プロジェクトのリスクもいち早く検知できるようになった」(西場氏)

 SansanのNotion導入が成功したもうひとつのポイントは、導入の「How(どうやって)」ではなく「Why(なぜ)」が明確だったことだろう。西場氏は次のように語った。

 「なぜこのような取り組みをやるのかというと、我々はグローバルテックカンパニーを目指すという成長戦略を掲げているから。その成長を支えるために、透明性を確保し、最速を目指してコミュニケーションコストを削減したいという目的がある」(西場氏)

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