「Oracle CloudWorld 2024」の主要な新発表を“3つの戦略”でまとめる
分散クラウドからソブリンAIへ、“先行他社とは違う”オラクルOCIの戦略とは
2024年10月18日 11時00分更新
分散AI(ソブリンAI):「データとAIの主権」という新たな課題への対応
オラクルでは、ここまで説明してきた「分散クラウド」と「AIインフラ」の特徴を掛け合わせるかたちで、3つめの戦略である「分散AI」を実現しようとしている。
シャガラジャン氏はとくに、注目が高まっている「データとAIに対する所有権、主権(ソブリンティ)」という課題を指摘し、その解決策となるのが分散AI、言い換えれば“ソブリンAI”であると説明した。
「OCIは、柔軟な所有モデルと豊富な運用モデルを持ち、ロケーション(場所)の問題も解決できる。それゆえに、分散AIはOracle Cloudだけが実現できるものと考えている」
前述した分散クラウドの特徴により、OCIはデータを保管する場所を柔軟に選択できる。またAlloyのように、各国のパートナーが運用管理を担うかたちで、運用にまつわる国籍などの要件も解消できる。そして、商用リージョン以外でも「OCI Generative AI Service」を含むすべてのサービスが利用できる。
シャガラジャン氏のセッションでは、OCIのソブリンAIを活用している顧客企業としてZoomがゲスト登壇した。Zoomでは「Zoom AI Companion」という生成AIアシスタント機能を提供しているが、この推論実行にはOCIが採用されており、顧客データを地域内に保持してソブリンAIを実現できる点も有効だという。
そのほかソブリンAIに期待する声として、日本のNRIやUAEのE&といったパートナー企業からのコメントも紹介された。
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OCW 2024では、ほかにもOCI関連で多数の発表が行われたが、それらも「分散クラウド」「AIインフラ」「分散AI(ソブリンAI)」という3つの戦略に当てはめて理解することで、位置づけが分かりやすくなるだろう。
冒頭で挙げたシャガラジャン氏の現状分析にもあるとおり、こうした戦略は、エンタープライズワークロードのクラウド移行を推し進めること、AIへの投資価値を具現化すること、デジタル主権戦略に沿ったAI活用を推進することを目指している。クラウド市場の“後発組”として、他社とは違うポジション取りを図るOCIの動きには、引き続き注目したい。
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