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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第81回

AIイラスト、こうしてゲームに使っています

2024年10月14日 07時00分更新

文● 新清士 編集●ASCII

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AIの強みはアイデア出し 技術の見極めが難しくなる

 やっぱり「ディレクターが考えている世界にいかに近づけるか」ということを考えると、生成AIの強みは、アイデア段階に強いという印象を持っています。ただ、この辺も、さらに今後の発展で変わっていくと考えられます。

「Exelio -エグゼリオ-」でUE5のコード作成に使っている例

 ちなみに、画像生成AIは絵的にわかりやすいので、話題になりやすいのですが、ChatGPTなどのLLMも積極的に使っています。

 特に使っているのがプログラミング作業で、UE5のC++のコードを書くために独自のプロンプト設定を作り、積極的に使っています。ChatGPTも初期は学習範囲に制限があったので、最新のUE5の情報を調べると間違えることが多かったのですが、バージョンアップがされるたびに学習範囲が追いついてきたのか、最近はかなりの情報に的確な返答をしてくれるようになりました。ただし、それでもハルシネーションが消えているわけではなく、正しい回答は5回に1回ぐらいで、生成されたコードがそのまま動くことも少ないということを頭に入れたうえで使う必要があります。

 LLMは設定資料づくりでも使っています。LLMにはハルシネーションはつきものですが、フィクションを扱うゲームの場合には、むしろそれで独自の科学設定などを出してくれる方が都合の良い面があります。いくつも考えさせ、面白い設定などを提案してきた場合のみ採用するというやり方を取っています。

 一方で、シナリオ生成は、現状まるで使いものになりません。いくつものLLMで試しましたが、そのまま使い物になる水準のシナリオを出力することはまだ難しく、アイデア出しにも使えるか微妙な水準です。今は、人間の代わりにはならないと結論づけています。

 筆者のチームはベテランばかりとはいえ、開発スタッフが4人ということでよく驚かれます。確かに生成AIによって効率化が成し遂げられている部分もありはするのですが、実際のところは、生成AI以上にUE5を使える部分の方が、それなりの規模のゲーム開発を実現するには重要な要素だと考えられます。UE5は、売上が100万ドル(約1億4000万円)を超えるまでは無料で使えるというところも大きいです。

 今年の東京ゲームショウでもインディーゲームブースが大いに盛り上がっており、目玉のひとつにまでなっていますが、UE5やそのライバルのゲームエンジンであるUnityを通じて間口が広がっていなければ、ここまでのインディーゲームの隆盛は起きていなかっただろうというのが実感です。

 一方で、この2年間の生成AIの技術発展を追い続けて感じているのは、使用時の見極めの難しさが上がっていることです。技術発展が速く、派生技術も次々に登場しています。どういう使い方をして、どの技術を選ぶのかを決めるための専門知識の難易度は上がっており、これが平易になることはないのではと感じています。生成AIは今後、ゲーム開発に様々な面で組み込まれていくと考えられますが、まだまだゲーム開発に使える部分は限定的なため、意図を絞って適切に使っていく必要があるように思えています。

 

筆者紹介:新清士(しんきよし)

1970年生まれ。株式会社AI Frog Interactive代表。デジタルハリウッド大学大学院教授。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲームジャーナリストとして活躍後、VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム「ソード・オブ・ガルガンチュア」の開発を主導。現在は、新作のインディゲームの開発をしている。著書に『メタバースビジネス覇権戦争』(NHK出版新書)がある。

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