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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第81回

AIイラスト、こうしてゲームに使っています

2024年10月14日 07時00分更新

文● 新清士 編集●ASCII

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AIで「三面図」を出し、衣装のバリエーションを作る

 東京ゲームショウ時の取材で見せたのは、その新しく試していた手法です。ゲームのヒロイン向けに追加の衣装を作ろうという話が出ており、新たにデザインを起こす必要が生まれました。ちょうど8月に登場した画像生成AI「FLUX.1」の性能が高く、デザイン的に一貫性を保ったままいきなり三面図を作成できることがわかったので試し始めたのです。

 ディレクターからは「チャイナドレス風衣装は作れないか。物理オブジェクトがついている、ヒラヒラしているような」というオーダーがあったんです。またしても「なんやそれ……」という感じだったんですが(笑)。

 まず、Midjourneyのアニメ系画像生成AIサービスの「Nijijourney」を使い、ヒラヒラしたチャイナドレス風衣装を着たキャラクターのバリエーションを大量に作りました。バリエーションを作る「Vary」の機能を使うことで、一度出た画像のバリエーションを出すことは簡単で、また生成にかかる時間もカエルの頃よりも格段に早くなっています。

Nijijouneyを使って作成したチャイナドレス風衣装の一部

 次に、出てきた画像を選別し、30枚のセットにしてFLUX向けのLoRAを開発しました。LoRA作成ツールは「FluxGym」を使います。ポイントは三面図を出力することが目標であるため、そのなかに後ろ姿の画像も含めておくという点です。それにより、背面の出力も適切にできる可能性を高めることができます。

 そして、ヒロインキャラクターの3Dモデルのスクリーンショットを用意し、Flux.1が動作するWebUI Forgeの環境で、LoRAと組み合わせてImage-to-Image(i2i)で生成します。これによって、様々な服装をした女性の三面図のバリエーションが、30秒に1枚くらいのペースで出せるようになりました。ControlNetを使ったほうが望ましい一貫性を作成できる可能性があるのですが、まだForgeではその環境が登場していないために、i2iで作成しています。

 生成される画像は完璧ではなく、前後を取り違えたり、デザインが破綻していたりと完全な一貫性を担保できていないものも少なくないのですが、まずは十分です。

WebUI Forgeのi2iの画面。左側にヒロインモデルの三面図の元となるスクショを配置し、そのポーズを参考に、生成された画像が出力される

衣装の生成結果の一部。プロンプトの変更やLoRAの強度を変えることで、様々なバリエーションを生み出せる

生成した画像の一枚。アイデア出し段階なので、一定の整合性があれば、完全でなくても問題ない

 ここで出された三面図のなかから、どんなコンセプトを狙っていくのかという絞り込みを進めています。カエルの時よりも、精度が高い画像をより速く出せるようになっています。参考にできる画像が出てくると、ディレクターのイメージも膨らむもので、「若干SF的な意匠を盛り込んでほしい」などの追加注文が出てきます。それらを他の自作LoRAなどと組み合わせたり、レタッチ作業をして情報を整理しながら、精度を上げていきます。そして、まだ最終的な完成には至っていないのですが、最後は人間の手でデザインをまとめ上げていくことになります。

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