ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第792回
大型言語モデルに全振りしたSambaNovaのAIプロセッサーSC40L Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU
2024年10月07日 12時00分更新
DDR5を実装したSN30
中身はLPDDR5Xをベースにしたカスタム版メモリーか?
ちなみに同じ資料で、SN30のスペックが簡単に示されている。688TFlopsというのはチップ2つ分の性能と考えれば、SN20は半分の344TFlopsということになる。
SN10の320TFlopsから7.5%ほどの性能向上である。この7.5%に近いものとしては、例えば元が1.3GHz駆動でこれを1.4GHz駆動にすると7.69%ほどの性能向上で、320TFlops→344.6TFlopsという計算になる。
もう1つの可能性としてはPCU(Pattern Compute Unit)の数が増えることだが、アルゴンヌ国立研究所が2023年10月に発表した"A Comprehensive Performance Study of Large Language Models on Novel AI Accelerators"という論文のなかに下のような表があり、ここでSN30はPCUが1280個と明記されている。なのでSN20は640個と推察できるし、これはSN10と変わらない。
オンチップSRAMは? というと、SN10では"> 300MB on-chip memory"という表現になっており、正確なところはわからない。ただPCUとPMU(Pattern Memory Unit:SRAMである)が1:1で搭載されるのがRDUの基本構成であることを考えると、PMUの数もPCUと同じく640個で、おのおの0.5MBのSRAMを搭載して合計320MBと考えるのが妥当だろう(確証はないので、前掲の表では"?"を付けてある)。
では改めてSN10とSN20の違いを説明すると、動作周波数と外部メモリーのI/F以外にもう1つ、RDU-Connectの有無ではないかと筆者は考えている。プラットフォームの説明に戻るが、640個のPMUとPCUは、160個づつに分割されており、これをタイルと呼んでいる。
SN30では合計1280 PMU/PCUなので8タイルになり、SN20では半分の4タイルであるが、SN20ではSN10と異なり、Top-Level Interconnectに外部接続用のパスが追加されたものと考えられる。そしてSN30は、このSN20を2つパッケージに搭載し、間をインターコネクトで接続したような構成ではないかと考える。チップレットというよりはMCM(Multi-Chip Package)的な接続と思われる。
さらにもう1つ謎なのが、SN30のOff-Chip DRAMである。2022年9月28日付のEETimesの記事によれば「パッケージには2つのコンピュート・チップレットと、1TBの直接接続されるDDRメモリー(HBMではない)が含まれている」とあって、これが正確だとするとパッケージの中にDDR5チップを実装していることになる。
SamsungのBlogエントリーもあるようにSambaNovaはSamsungと協業しているようなので、Samsungのラインナップで見てみるとDDR5は最大でも32Gbit品しかないため、これで1TBを実装しようとすると256チップをパッケージ内に収める必要がある。言うまでもなく不可能だ。
GDDR6も最大で16Gbit品なので状況はむしろ悪化する。可能性があるのはLPDDR5Xで、こちらだと128Gbit品があるため1TBは64個でいける。まだかなり多いが、256個よりは現実的である。
これも筆者の推定なのだが、SambaNovaはLPDDR5Xをベースにしたカスタム版メモリーの開発を依頼したのではないだろうか。もちろん64個を平面的に実装するのは不可能だろうが、例えば下図のような構成はあり得るだろう。
上図でいうところのドーターカードを薄くすれば現実的になるだろう(図では最下段もドーターカードにしているが、ここはパッケージ基板に直接実装でもいい)。ドーターカードを薄くすると機械的強度が気になるところだが、もともとLPDDR系は発熱が少ないので、例えば実装後に全部接着剤などで固めてしまえば(放熱には不利だが)機械的強度の確保は難しくない。というか、他の実装方法が思いつかないというのが正直なところだ。
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