期待と現状のギャップから「必然的にバブルになる」
これに関連して、直近のユーザー動向をまとめたのが、テクノロジーアナリストのベネディクト・エヴァンス(Benedict Evans)氏が公開した「AIの夏(Summer of AI)」。今のChatGPTの課題をまとめた記事です。
記事では、「(ChatGPTが)1億人のユーザーを獲得するまでのスピードは、罠だったのかもしれない」と論じています。そもそも2007年に発売されたiPhoneは初年度に540万台しか売れず、普及するのも2010年と数年がかかったと。ところが、ChatGPTはわずか1年で数億人のユーザーを抱えてしまったことで、みんなが勘違いしたかもねということです。ChatGPTは過去25年間で積み重なってきたインターネットの世界的なインフラに乗っかってユーザーを抱えたものの、それはユーザーへの実際の浸透を示しているわけではなかったと。それが実際に使い続けているユーザーは少ないという形で出ていると。
現に、過去18ヵ月間にAIをさわった人のうち、習慣的に使っている人は全体の20%以下にとどまり、毎日使っている人は5%以下。週に1度としてもアメリカでも17%程度にとどまります。AIサービスは世の中に言うほど浸透しておらず、継続して使える魅力的なサービスになっていないというのが現状だというわけです。
「ほとんどがまだ実験的な予算しかない技術のために、唖然とするほど多額の設備投資(そして他の多くの投資も)を前倒しで行っている」と論じ、「実際の製品を作りながら、製品と市場の適合性がどのようなものかを見極めようとする、ゆっくりとした痛みを伴う時期をスキップしてしまったのだ」としています。「LLMは、実際のユーザーに会う前に、これが何なのか、何のためのものなのかを考え、『すべてを実現するものだ!』と直感したのだ」。そのうえで、投資がAI分野へと過剰に集中する状態が生まれており、「必然的にバブルになる」と述べています。
「LLMは、既存のソフトウェアのほとんど、あるいはすべてを飲み込むことができるかもしれない。LLMは、これまでソフトウェアになかったような膨大な種類のタスクを自動化することができるかもしれない。(略)しかし、今年は違う」と結論。エヴァンス氏は必ずしも、AIに否定的な立場ではないのですが、今この瞬間に、ユーザーをたくさん獲得できている状況と、継続して惹きつけられていない状況との両方が存在することから、投資とのバランスの乖離が起きていることを指摘しています。
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