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量子力学出身の生成AI開発者が作った新しいシステム開発の世界観

魔法、群知能、デジタル生命 Babel・Zoltraak開発者の頭の中

2024年10月04日 11時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

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 「こんなシステムがほしい」とリクエストすると、生成AIが作ってしまう。こんな「魔法」を実現してしまうのが、KandaQuantumの元木大介さんが開発したZoltraak、そしてBabelだ。急速に成長するシステム生成AIの領域に挑む元木さんにインタビュー。ビジネスプロフィールやZoltraakやBabelが生まれた背景、生成AIがシステム開発に与えるインパクトについて話を聞いた。(インタビュアー ASCII編集部 大谷イビサ 以下、敬称略)

起業の話をしたら、福岡から母親と姉が説教しにきた(笑)

大谷:今日はよろしくおねがいいたします。まずは元木さんのビジネスプロフィールから教えてください。

元木:学生のときは、東大の物理で量子力学関係をやっていました。何度か自分で会社を立ち上げようと思ったのですが、最初はフリーランスとして働き、友人が立ち上げた量子ベンチャーのJijや教育AI系のアビレンのお手伝いをしていました。これが4~5年前ですかね。

ただ、この2社のお仕事に携わる中で、研究を中心にしてしまうと、なかなかお客さまの課題解決が進みにくいと感じたので、自分で事業を立ち上げることにしました。当時は、量子コンピューターおよびAIを社会実装するため、研究者と企業をしっかりつなぎ込む産学連携が大事だと思っていました。松尾研究所はそういった産学連携のエコシステムを情報系でうまく作っていたのですが、理学系の産学連携って全然なかったんですよ。

大谷:成果に結びつきにくいということですかね。

元木:もはや生活が大変というレベルですね。バイトしたり、実家から仕送りしてもらって研究を続けている先輩もいます。

研究で知的好奇心を満たしたり、新しいことを探求しながら、しっかり自力で稼いでいくのは正直難しい。ビジネスで成果を出しながら、研究資金を自ら確保できる仕組みをなんとか作れないかと思って大学院生の時期に立ち上げたのが、今のKandaQuantumです。当時、神田に住んでいたので(笑)。

KandaQuantumの元木大介さん

大谷:ちなみに会社員という選択肢はなかったんですか?

元木:子どもっぽい話なのですが、なにかを成し遂げたい、歴史に残るようなことをやりたいという想いは昔から持っていました。そんな想いで起業したのですが、直前まで就活もけっこうやっていました。

大谷:エンジニア不足の昨今なので、元木さんのようなキャリアであれば、わりと引く手あまただったのではと思うのですが。

元木:私の就活はプログラマーに絞らず、幅広く見ていました。コンサル系やSIer、Web系の会社、スタートアップ、外資のIT企業、事業会社のデジタル部門などを受けて、いくつか内定もいただきました。本当にありがたい限りなんですけど、当時はフリーランスとしての収入もそれなりに伸びてきていたので、かなり迷ったんです。

迷った末に休学させてもらい、最終的には起業の道を選びました。起業したいという話を福岡の実家の母と姉にしたら、2人とも飛行機で東京まで来て、カフェで2時間延々と説教です。「とにかく就職しろ」と(笑)。

大谷:なるほどー。でも、私も子どもが二人いるので、親の気持ちもわかるんですよね。「1回考え直して見たら」くらいは言うかもしれません。

元木:こちらはニュートラルに話し合いたいなと思っていたのに、頭ごなしに怒られたので、逆に起業してしまった感じですね(笑)。

大谷:反逆心ですねー。で、今はどんな事業をやっているんですか?

元木:生成AI系の方々とチームを組んで、大きく3つやっています。ネスレさんやコニカミノルタさん、九州大学さんなどと生成AIの活用や開発を支援しています。生成AI活用協会に所属しているので、そこからお仕事につながることが多いです。

あと、生成AI塾というビジネス・開発者向けの教育事業を展開しており、卒業生の方々はトヨタコネクテッドやデジタル庁、NTTなどで活躍してくれているので、ネットワークも拡がっています。

3つ目が今回お話しするプロダクトで、ZoltraakやBabelなどの開発システムになります。

魔法という世界観からスタートしたZoltraak

大谷:さっそくZoltraakとBabelの開発経緯を教えてください(関連記事:顧客の要望から要件定義、システム生成まで自動化する「Babel」 OSSの「Zoltraak」がコア)。

元木:昨年は生成AIの活用を進めるためにひたすら駆け回っていました。その結果、生成AIを組み込んだプロダクトを作る側と、そのプロダクトを使って通常開発をブーストさせる側の2パターンを考えました。その上でおもにAnthropicの技術的な可能性を考えて、後者を選びました。

大谷:生成AIのめまぐるしい進化に可能性を感じたわけですね。

元木:LLMのエポックメイキング的な話をすると、最近ってOpenAIがちょっと元気ないような気がしています。OpenAIってどちらかというと、声や目の情報を得たり、絵を描いたり、なんでもできる1人の人間を作ろうという開発のモチベーションとして大きいと思っています。

一方で私が使っているAnthropicは、AIを動かすための文書や指示書、いわばプログラムに当るモノやテキストを大事にしています。このAnthropicが2024年3月に最上位モデルのClaude 3 Opusを出して、6月にClaude SonnetおよびArtifactが発表されたことで、ここからAIが自律的にシステムを生成する「生成AIの第二幕の開始」を直感的に感じたんです。これが今年の3月頃ですね。

LLMの歴史と転換点

ただ、現状の生成AIはこちらからのリクエストに対して回答が1対1でしか出てこないので雑です。そこで、自然言語による要件定義を挟み、そこからプログラムやシステムを作り上げいく手順が必要だと思いました。

大谷:今まで日本企業が培ってきたシステム化のための言語能力をうまく活かそうと考えたわけですね。

元木:はい。こうしてできたのがZoltraak(ゾルトラーク)です。お察しの通り、「葬送のフリーレン」の魔法から来ています。日本の企業がしっかり持っている要件定義の文化を活用でき、英語べースのプログラミングを日本語でできるようになります。だから当時は「日本語プログラミング」と言っていました。これができれば開発人口は一気に増えるはずですし、国力も増進します。

あと、日本語は繊細な表現ができるという特徴があります。たとえば介護現場で使われるロボットを設計するときにも、従来型のプログラミング言語では難しい丁寧な作業フローや処理を理解できるLLMからプログラムに落とし込むことができます。

大谷:ZoltraakはBabelの基盤となるOSSのプログラムですね。Babelの記事がとてもハネたのも、要件定義という呪文を唱えるとシステムができあがるという、ある意味フリーレン的な世界観に今後のシステム開発の未来を見せていたような共感が集まったイメージありますね。

元木:今のAIって能力を十分に引き出せてないという課題があります。いわば火縄銃が日本に持ち込まれたけど、一発撃っておしまいなのが今のLLM。だから、火縄銃をメカニカルに連動させて、巨大な火力を作るみたいな方向性にしたかったんですね。

AIの能力を限界まで引き出すにはどうしたよいかを試行錯誤した結果、たどり着いたのが魔法という世界観です。考えたことを具現化するという魔法が生成AIの最終形態だと思ったし、なにより魔法という物語は、人類史で古代からずっと生き残っている世界観ですからね。

魔法という世界観からスタートしたZoltraakとBabel

今では要件定義からシステムを作りますという一般的な用語に落とし込めたのですが、起点にあるのは妄想したものを作り出す魔法という世界観がありますね。

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