エンジンのビートをバックに軽快な走り
走り出して、とにかく驚きました。何がどうしたかと言えば、「まるでエンジン車のよう」だったからです。ボリュームは小さいものの、しっかりと4気筒エンジンの粒の揃ったサウンドが耳に届きます。しかも、アクセルの操作にあわせてエンジン回転が高まり、シフトアップやキックダウンのような音の変化もあります。ステアリングの裏にあるパドルを操作すれば、まるでシフトダウンをしたような減速もできます!
しかし、新型アコードはハイブリッド車なのです。しかも、搭載される「e:HEV」というシステムは、走行シーンの大多数をモーターで走行します。エンジンの力を直接に使うのは、高速域などごく一部。ほとんどの領域においてエンジンは発電に徹しているはずなのです。
つまり、アクセル操作にあわせてエンジン回転数を細かく変化させる必要はないし、シフトアップやキックダウンを模すような回転変化をさせることも本来はありえません。
ところが、ホンダは新型アコードのために、あえてエンジン車風の味付けをしていたのです。2022年に発売された「シビック ハイブリッド」でも、同様の味付けをしていましたが、新型アコードでは、ハイブリッドシステムを進化させ、さらにエンジン車風の味付けを濃くしてきたのです。これには驚きました。
また、パドルシフトは回生ブレーキの効き目を変化させるものですが、新型アコードでは、より減速力を高め、効き目の段数も6段へと増やしています。このことで、まるでAT車のエンジン・ブレーキのように使うことができるのです。
コーナーをクリアするたびに感じる楽しさ
新型アコードに使われる駆動用モーターは、最高出力135kW(184馬力)・最大トルク335Nm。主に発電を行ない、一部で駆動と駆動アシストを行う2リッターのエンジンの最高出力は108kW(147馬力)・最大トルク182Nm。ミドルセダンとしては、そこそこのスペックですが、とりたてて高性能というわけではありません。
とはいえ、その走りはなかなかに楽しいものでした。ハンドリングは素直で狙ったラインを気持ち良くトレースします。そのとき、アクセル操作に対して生み出されるパワーが、エンジン音としてフィードバックされます。コーナーをひとつクリアするたびに、車体の大柄さを忘れる一体感を感じることができました。
また、シフトボタンの後ろにはドライブモード・スイッチがあって、スポーツからノーマル、コンフォート、エコなどを選ぶことができます。モードによってステアリングのしっかり感や、サスペンションの硬さなどが変化します。ただし、変化の幅はそれほど大きいものではありませんでした。
それでも全体に乗り心地が良く、スポーツモードでも十分に許容範囲。逆にスポーツモードを「これくらい締まっていた方がクルマ酔いしない」と思う人もいるはずです。
グーグルのサービスが車内で使用可能に!
進化したホンダセンシングをはじめ充実の最新機能
新型アコードの最後のトピックは先進機能の充実です。
そのひとつが、ホンダ初となるグーグルサービスの搭載です。Googleアシスタント、Googleマップ、Google Playを車内で使用できます。普段使っているスマートフォンと同様にナビや音楽の再生などができるようになりました。
また、ADAS(先進運転支援システム)も進化しています。それが「ホンダセンシング360」の採用です。これは、フロントカメラと5台のミリ波レーダー(フロントと、クルマの四隅)を装備することで、クルマの全周囲360度をセンシングするという技術です。従来からのホンダセンシングに加え、前方交差車両警報や車線変更支援機能などが加わっています。もちろん、国内のホンダ車としては、最も進んいる充実した機能となります。
ホンダらしいスポーティさとフラッグシップの貫禄
新型「アコード」を試乗してみて思ったのは「ホンダらしいクルマだな」ということです。フラッグシップらしく、堂々としたスタイルがあり、最新機能も充実しています。しかし、華美にならず端正さが前面に出るというのはホンダならではでしょう。
また、ハイブリッド車であり、進化した電動車でありながらも、エンジンの価値を重視して、スポーティで楽しい走りを実現しているのも、ホンダらしい部分なのではないでしょうか。
セダン好きで、ファンな運転が好きだという人にオススメしたいクルマです。
ホンダ「アコード」の主なスペック | |
---|---|
パワートレイン | e:HEV (2L直噴エンジン +2モーターハイブリッド) |
最大出力 | モーター:135kW(184馬力) エンジン:108kW(147馬力) |
最大トルク | モーター:335Nm エンジン:182Nm |
駆動方式 | FF |
サイズ | 全長4975×全幅1860×全高1450mm |
車両重量 | 1580kg |
燃費(WLTCモード) | 23.8km/l |
価格 | 544万9400円 |
この連載の記事
-
第482回
自動車
これがBMWの未来! フラッグシップEVの「iX」は乗り心地良すぎで動くファーストクラス -
第481回
自動車
アルファ・ロメオのハイブリッドSUV「トナーレ」はキビキビ走って良い意味で「らしく」ない -
第480回
自動車
独特なデザインが目立つルノーのクーペSUV「アルカナ E-TECH エンジニアード」はアイドルも納得の走り -
第479回
自動車
レクサスのエントリーSUV「LBX」は細部の徹底作り込みで高級ブランドの世界観を体現した -
第478回
自動車
レクサスの高級オープン「LC500 コンバーチブル」は快適さのその先を教えてくれる -
第477回
自動車
BMWの都市型SUV「X4」は直6エンジンならではのパワフルな走りがキモチイイ! -
第476回
自動車
最新のマツダ「ロードスター」は乗った誰もが乗り換えを検討するレベルのデキの良さ -
第475回
自動車
EV=無個性ではない! BMWのEV「iX3」は剛性ボディーが魅力のミドルサイズSUV -
第474回
自動車
ルノーのコンパクトカー「ルーテシア E-TECH エンジニアード」は軽量でパワフルでスポーティー! -
第473回
自動車
ホンダの大人気ミニバン「FREED」に乗ってわかった5つの良くなったポイント -
第472回
自動車
三菱のピックアップトラック「トライトン」をあらた唯がドライブ! 見た目と違ってソフトな乗り心地 - この連載の一覧へ