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WRCファン必見! オートサロンで展示の個人所有「インプレッサ WRC」3台を紹介

2024年01月21日 12時00分更新

文● 栗原 淳 編集●ASCII

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 1月12~14日に幕張メッセで開催された世界最大級のカスタムカーショー「東京オートサロン 2024」。趣向を凝らした様々なカスタムカーが893台。国内外からこの3日間で23万人の来場者が訪れて活気にあふれていました。

インプレッサ

筆者のインプレッサ。昨年のクリスマスに車検を通して、インプレッサオーナー11年目となりました。現在走行距離19.5万km(購入時6万km)

 東京オートサロン2024に愛車の初代GC8型「インプレッサ WRX STi」で訪れた自分が、取材対象として真っ先に足を運んだのは、「WISESQUARE」という90年代あたりのネオクラシック・スポーツカーのヘッドライトリペアレンズキットを開発・製造販売しているブースでした。

インプレッサ

 そのブースの前には、鮮やかなブルーのカラーリングをまとった、自分の愛車と同じ初代インプレッサが3台が展示されていました。しかし、この3台はただのインプレッサではありません。

インプレッサ

 現在、TOYOTA GAZOO Racing WRTが「GRヤリス Rally1」で出場しているWRC(世界ラリー選手権)に90年代後半から2000年頭まで参戦していた、WRCを勝ち抜く為に設計開発された「スバル インプレッサ WRC」たちなのです。

 なんとこの3台は個人所有! うち1台は日本のナンバープレートを取得して、足として「第2のクルマ生」を歩んでいます。

 今回はこの3台のインプレッサWRCにスポットを当てて、それぞれ紹介していきます。

◆SUBARU IMPREZA WRC 97(S5) "R17 WRC"

インプレッサ

カラーリングの「555」ロゴはBAT(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)のブランド

 「R17 WRC」というナンバープレートを装着したインプレッサWRCは、このラリーカーの規定である「WRカー(ワールドラリーカー)」が登場した1997年に製造された個体です。

 WRカー規定について簡単に説明します。1987年からWRCのトップカテゴリーとなった「グループA」。このカテゴリーは、ベース車両からのエンジン・駆動方式・エアロパーツなどの変更ができないので、市販モデルでハイパワーターボエンジン+4WDの設定のあるスポーツカーを販売している日本車メーカーが強さを発揮しました。しかし、欧州メーカーは上記のような設定の市販車がほとんどないので、WRCを主催するFIA(国際自動車連盟)に働きかけ、1997年から一定の生産台数をクリアした車種であれば、駆動方式の変更、エンジンの変更、外観の大幅な改造が認められた「WRカー規定」がスタートしました。

 以下の動画は、FIAがWRC公式のWRカーの歴史を紹介しているものなので、よかったらご覧ください。

 スバルとSTiは、参戦時からタッグを組んでいる英プロドライブ社ともに、2ドア自然吸気エンジンの「インプレッサ リトナ」をベースに、名エンジン「EJ20型」水平対向4気筒ターボ+4WDに加え、大幅なワイドボディー化でこの「インプレッサ WRC」は誕生しました。

インプレッサ
インプレッサ

今のレーシングカーからすると、まだまだケーブルやパイプなどが大分賑やかなエンジンルーム

 さてこのR17 WRCは、1997年のラリー・オーストラリアと翌年1998年のスウェディッシュ・ラリー(現ラリー・スウェーデン)ではスバルワークス・チームが走らせました。スウェディッシュ・ラリーでは、故コリン・マクレーがステアリングを握っており、彼の存在なしでは、このマシンの誕生はなかったでしょう。

インプレッサ

コクピットのデジタルファンクションメーターが、当時最新鋭装備で注目を集めた。エアコンの吹き出し口やワイパースイッチは、市販車と同様のものが使われている

インプレッサ

エンジンルーム横に装着されているプロドライブ社のコーションプレート。「PRO/WRC/97.017」は97年の17号車を示している

インプレッサ

反対側にはスバルの生産ラインでのコーションプレート。車台番号は、「PRO GC8-97-017」となっているのでプロドライブ向けの車体であることを示している。下半分のエンジン型式、ミッション形式、外装色コードが未打刻なのは、未塗装のホワイトボディーでプロドライブ社に引き渡されたから

 その後は、ヨーロッパのプライベーターに売却され、様々なラリーで戦っていましたが、2013年に現オーナーが購入したことで日本に帰国。2015年から岐阜県にあるヤマオカアイオン商事にて本格的なレストア作業がスタートして、2022年にレストアが完了しました。

◆SUBARU IMPREZA WRC 2000(S6) "W24 SRT"

インプレッサ

 次に紹介するのは、WRC2000年シーズンに登場したGC8型最後のラリーカーです。そのため、大きな改良が行なわれています。

インプレッサ

1999年モデルから、75%は新設計と言われた2000年モデル。その目的は翌年の01年モデルの先行開発と言われてたが、高い信頼性でデビューから高い戦闘力を発揮した

インプレッサ

 まず目を引くのが、フロントの「STi」ロゴが刻まれている巨大インタークーラー。ボンネットを開けると左右に振り分けられたカーボン製の大型ダクト。このダクトは、インタークーラーとその下にあるラジエターの熱を、エンジンルーム内に入れずに排出するために設けられています。水平方向エンジンの強みである重量配分のメリットを、さらに向上させた設計なのです。

インプレッサ

この個体は、シートはオリジナルからCORBEAU製に変更され、シーケンシャルシフターが装着されている

 ドライビングデバイスも改良が施されています。まず、ペダルが市販車でもオーソドックスな吊り下げ式から純レーシングカーで採用されているオルガン式に変更されて、低重心化を図っています。そしてステアリングの右横には新設計のパドルシフトが。

 1999年シーズンの途中からオーソドックスなHパターンのMTから新設計の電子制御式6速セミATに変更しています。これによってドライバーは、右手を常にステアリングを握った状態でも素早いシフトチェンジが可能となりました。

インプレッサ

よく見ると大型リアウィング中心下にハイマウントストップランプが装着されている

 この2000年モデルはデビュー時から高いポテンシャルを発揮し、シーズン終盤まで三菱、プジョーと激しいチャンピオン争いをしました。惜しくもタイトルは逃したものの、このシーズンで得た様々なデータは翌2001年シーズンから投入したGDB型インプレッサ WRC2001に活かされ、1999年からエースドライバーを任されていたリチャード・バーンズがドライバーズチャンピオンを獲得しています。

インプレッサ

 展示車の"W24 SRT"は、当時のバーンズのチームメイトで、4度のドライバーズチャンピオンを獲得していた"フライング・フィン"、ユハ・カンクネンがドライブ。その後、2001年にニュージランドのスバル使いであるポッサム・ボーンの愛車となり、一度右ハンドル車に組み直されました。その後、再び左ハンドル車に戻されて現在に至ります。カラーリングは、最終戦RAC(英国)仕様になっています。

◆SUBARU IMPREZA WRC 98(S5)

インプレッサ

 最後に紹介するのは、日本のナンバープレートを取得して公道走行している「インプレッサ WRC」です。この個体のオーナーは、先に紹介したW24 SRTのオーナーでもあります。

インプレッサ

 この個体はおそらくプライベーター向けに製造され、1998年のWRCサンレモ・ラリーに出場、ラリー中のクラッシュで大きなダメージを受けたあと修復され、イタリアに拠点を持つ有力プライベーターチーム「PROCAR」の元でデモカーとして保管。今から7年前に現オーナーの日本に帰国しました。

 そこからヤマオカアイオン商事の協力の元、「可能な限りオリジナルのS5に近い公道走行可能なWRカー」を目標に6年の年月をかけて完成しました。

インプレッサ

先に紹介した2台と比較すると、かなりすっきりとまとめられているエンジンルーム

 エンジンやミッションはそれぞれGDB用・GC8用を搭載していますが、それ以外はプロドライブ製で当時のWRC専用パーツが組み込まれています。まだ理想の完成ではなく、今後はレーシングカーに多く採用されているシーケンシャルドグミッションの搭載など、改良が予定されています。

 インテリアは当然ながら当時の状態を可能な限り保っています。その中でもこだわりのポイントがメーターです。オリジナルのインプレッサ WRCが登場した当時も、メーターが特徴的でした。今では当たり前となっているデジタル液晶によるマルチファンクションメーターですが、インプレッサ WRCは真っ先に導入していたのです。

 この個体は、エンジン制御をMoTeC ECUというコンピューターで行なっています。このMoTeCは、専用のデータロガーで回転数・スピードなどなど様々な数値を表示できます。そのデザインをオリジナルのマルチファンクションメーターを忠実に再現しています。

インプレッサ

左上の「PAGE」という赤いツマミを回すことで、デザインが変わっていく。これがオリジナルのメーターデザインを再現したもの。全部で4種類

インプレッサ
インプレッサ
インプレッサ

 イベント期間中、小さなスペースの中に多くの人がこのメーカーでもなかなか実現できないスペシャルな展示を、写真や動画に収めようとしていました。特に海外からの来場者の人気が高く、YouTuberやメディアの人たちが興奮混じりにコメントしながら収録していたり。

 スバリストのみなさんは、また来年もこの並びが見れることを楽しみにしていましょう!

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