2024年は、激動の年になりそうだ──。
特に、国際政治や国際情勢の分析を専門とする人たちから、こんな声が出ている。
その根拠は選挙だ。
1月13日:台湾総統選
3月17日:ロシア大統領選
4月10日:韓国総選
9月:自民党総裁選
11月5日:米国大統領選挙
ざっと日程を見るだけでも、世界情勢に大きく影響する選挙が立て続けに予定されている。
特に、直近の台湾総統選は中台関係に重大な影響を及ぼし、日本への波及も避けられないだけに、重要度が高いだろう。
この連載のテーマである「規制とテクノロジー」の分野も、激動の1年になるだろうか。
新NISAスタート(1月1日)
課税の対象となる投資枠が大幅に広がる。
これまでのNISAでは、一般のNISAを選択した場合、年間の投資の上限額が120万円だったが、新NISAでは3倍の360万円に引き上げられる。
また、これまでのNISAは期限付きの制度だったが、期限がなくなり「恒久的」な制度になる。
この短い説明では、「なんのこっちゃわからない」という声が聞こえてきそうだ。
非課税の枠を広げるのでバンバン投資してくださいという制度だが、追って本連載であらためて詳しく取り上げたい。
電子帳簿保存法改正(1月1日)
これまで帳簿類は紙での保管が義務付けられていたが、原則として電子データで保存しなければならない。
請求書や、取引の記録なども電子メールなどで保存し、紙で受け取った請求書や領収書はスキャナで電子化して保存することになる。
デジタル化そのものは前向きに受け止めたいが、要件がなかなか厳しいとの声も聞く。本連載であらためて勉強したいと思う。
EU、デジタルサービス法(2月)
EUのデジタルサービス法の全面適用が、2月17日からスタートする。
Google、Apple、Facebook、Amazon、Alibabaなど「非常に大規模なオンラインプラットフォーム」に指定された17サービスと、Google、Bingの2検索エンジンが対象とされる。
同法は、大規模オンラインプラットフォーム違法コンテンツや、違法な製品・サービスを排除するための措置を義務付ける内容だ。
若干残念だが、いまのところ日本の事業者で指定の対象となったサービスはない。
日本はEU法の域外ではあるが、具体的にどのような波及効果があるのか注視する必要がある。
また、同法に準ずる日本法を制定する議論の展開にも注目したいところだ。
限定的ライドシェア解禁(4月)
一般のドライバーが有料で顧客を乗せるライドシェアが解禁される。
ただしタクシーが足りない地域、かつタクシーをつかまえにくい時間帯や季節に限る。運行管理もタクシー会社が担うことになる。
既存のタクシー業界に配慮した形のスタートになるが、政府は、タクシー会社以外の参入を認めるかどうかについて議論を継続し、6月をめどに結論を出すという。
ウーバーなど、ライドシェア事業者の参入が認められるかどうかがポイントとなる。
デジタル教科書(4月)
2024年4月から、小学校5年から中学3年の英語でデジタル教科書が導入される。
紙の教科書だけでなく、音声や動画を使って、ネイティブの発音に親しめるなど、一定のメリットは期待できそうだ。
ただ、子どもたちの視力低下や、自宅のネットワーク環境の有無で学力に差が生じやすくなるなど、すでにデメリットも指摘されている。
家庭の事情で自宅にインターネット回線がない子どもたちに対して、何らかの支援メニューが用意されるだろうか。
マイナカード、健康保険証と一体に(2024年秋)
2024年秋、マイナカードと健康保険証が一体になり、現行の保健証は廃止される。
マイナカードをめぐって、他人の情報が紐づけられるなどの事務的なミスが相次ぎ、批判が根強い。
健康保険証には、これまでにどのような病気でどのような治療を受けたか、どのような薬が処方されたかなど、極めてセンシティブな情報がひも付けられる。
政府は2024年秋までに、一気にマイナ保険証への切り替えを進める考えだが、かなり深刻な事務的なミスが起こりそうではある。
運転免許証とマイナカードも2024年度末(2025年3月末)までに一体化される予定だ。
台湾半導体大手TSMCの熊本工場が稼働(年末)
台湾の半導体の受託生産最大手TSMCの熊本工場が完成し、2024年末から本格生産を始める。
2023年11月13日の時点で、NHKは「まもなく完成」の見通しだと報じている。
関連企業の熊本進出も相次いでいる。各種の予測でばらつきはあるが、周辺産業を含めておおむね6,000人~8,000人の雇用を生むと予測されている。
半導体の国産化を目指しているラピダスは3年後の2027年から、北海道の工場で本格生産を始める計画だ。
台湾の力晶積成半導体(PSMC)も、SBIホールディングスとの合弁事業で、宮城県に工場を建設し、2027年から量産を目指している。
2023年は半導体関連のニュースが相次いだが、2024年も引き続き注目すべき最重要分野のひとつだろう。
筆者──小島寛明
1975年生まれ、上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒。2000年に朝日新聞社に入社、社会部記者を経て、2012年より開発コンサルティング会社に勤務し、モザンビークやラテンアメリカ、東北の被災地などで国際協力分野の技術協力プロジェクトや調査に従事した。2017年6月よりフリーランスの記者として活動している。取材のテーマは「テクノロジーと社会」「アフリカと日本」「東北」など。著書に『仮想通貨の新ルール』(ビジネスインサイダージャパン取材班との共著)。
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