生成AI時代、 “来歴情報”が必要不可欠に
そんな懸念に対して、積極的に活動しているのがアドビだ。同社では2019年にCAI(Content Authenticity Initiative)を設立。ニコンやライカなどのデジタルカメラメーカーやニュースサイトを運営するメディア、最近ではBingイメージクリエイターを提供するマイクロソフトなど2000近い企業や団体が加盟している。
CAIに関してはこの連載でも昨年取り上げているが、あらためて説明すると、デジタルコンテンツが誰によって作られ、どういった加工がされたのを確認できる仕組みを開発し、普及させようとしている団体だ。こうした取り組みはAdobe1社では実現できないため、メディアやIT企業、非政府団体、学術機関などが参加し、コンテンツの信頼性や透明性の向上に向けた議論や技術導入を進めているのだ。
昨年のAdobe MAXではニコンの試作機が展示される一方で、ライカのカメラは画像しかなかったが、今年のAdobe MAXではライカも試作機が展示されていた。いよいよ製品として販売される日も近いようだ。
デジカメには画像ファイルに来歴記録を書き込める機能を搭載しており、誰がどのカメラで撮影したかが記録される。撮影した画像データを、Photoshopで加工すると、クラウドにアップされ、どういったカメラで撮影した画像データと、Adobe Stockにあるどの画像データが合成されたのか、誰のPhotoshopで加工したのかなどの来歴が確認できるようになっている。
これこそ、生成AIによる画像が大量生産されるであろう時代に必要不可欠な仕組みと言えるだろう。ウェブ記事に生成AIが作った怪しい画像が載っていた場合、来歴情報を辿ることで、本物なのか、偽物の場合、どうやって作られたかを確認できるのは心強い。
著作権を持つデータが悪用された場合も、誰が作ったかの確認ができる。また、こうした来歴情報があれば、Adobe Stockなどの画像が利用された場合は、「利用料」を請求できるようになるため、利用された側も収益を得られる可能性が出てくるわけだ。

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