次世代、スタートアップに政府も期待を込める CEATEC 2023が開幕
提供: 日本エレクトロニクスショー協会
2023年10月17日より20日まで幕張メッセにて「CEATEC 2023」が開催される。それに先だって10月16日にはプレスデーを開催。今年の見所を解説するプレスブリーフィングのほか、先行展示という形でいくつかの出展企業や団体が、来場した記者に向けてブースにてプレゼンを行っていた。
CEATECは2000年に第1回を開催。当初はデジタル家電見本市として発展してきたが、2016年に「脱・家電見本市」を宣言。Society 5.0の実現を打ち出して「IoT」と「共創」をテーマとして、未来の社会や暮らしを描く技術展示をメインとしたイベントに転換している。
さらに今年は「次世代」をキーワードに、新たな取り組みも実施。スタートアップやグローバル、若手エンジニアを対象にした、出展者同士が交流を持てる「出展者ネットワーキングイベント」も会場で終了後に実施される。未来を担う学生や若手のキーパーソンにスポット当てたステージ「Future Hub」もパートナーズパーク内に設置され、次世代を担う若手に各業界とクロスできるイベントが取り組まれる。
昨年の2022年に3年ぶりのリアル開催となり、さらに2023年は、対面式のカンファレンスも再開。展示会を「見て」、カンファレンスを「聴ける」という両輪が揃ったイベントとなっている。
展示会は今回、「パートナーズパーク」、「アドバンスドテクノロジー」、「キーデバイス」、「スタートアップ&ユニバーシティ」、「グローバル」と5つのエリアを設置。トータルで684社/団体が出展している。特に海外からの出展はグローバルエリアを中心に21カ国から195社/団体が出展。ウクライナが初めて出展するなど、国際色豊かな展示会にもなっている。
また、スタートアップ/大学研究機関の出展者数も、昨年の81社/団体から153社/団体と大幅に増加。そのためスタートアップ&ユニバーシティエリアでは、出展者を「サステナビリティ」、「ウェルビーイング」、「ビジネスイノベーション&クリエーション」、「イノベーティブな技術・研究開発」の4つのジャンルに分け、パネルも色分け。パネルを見ればその出展者がどういったジャンルの展示をしているのか分かるように工夫されている。
カンファレンスも、国際会議場のほか展示エリアに4つのトークステージを設置。200を超えるセッションが予定されている。また17日のセッションでは「AI等のエマージング技術を活用したデジタル社会基盤の構築」に科学技術政策担当大臣の高市早苗氏、「デジタル田園都市国家構想 ~官民連携によるデジタルを活用した地方創生~」にはデジタル大臣の河野太郎氏と群馬県知事の山本一太氏、福井県副知事の鷲頭美央氏が登壇。CEATECの歴史で、日本の現役大臣が登壇するのは初めてのことで、それだけCEATECが国のデジタル構想において、重要視されているイベントであるといえる。
会期前日の16日に実施された幕張メッセでのプレス向け展示のあと、オープニングレセプションが行なわれ、こちらには岸田文雄首相と総務大臣の鈴木淳司氏、デジタル大臣の河野太郎氏、経済産業大臣の西村康稔氏が来賓として登壇し祝辞を述べていた。CEATEC AWORD 2023の受賞式もあり、スタートアップ企業のエレファンテックが経済産業大臣賞を受賞し、西村大臣から表彰を受けた。
ここからは、プレスデーでいち早く展示を行っていたブースの中で、気になる企業/団体をピックアップして紹介していく。まずは出展数が大幅に増えた「スタートアップ&ユニバーシティ」から6つのブースをピックアップ。
5秒の会話でストレスチェックができるサービスロボット
PLEN Roboticsは、顔認証機能を備えた手のひらサイズのサービスロボット「PLEN Cube」を展示。受付や入退管理に利用できるほか、音声認識機能で声帯の震えも分析可能で、その人のモチベーションや注意力、危険認知能力などを可視化でできる。
SDGs時代のフレキ基板製造方法
CEATEC AWORD 2023の経済産業大臣賞を受賞したエレファンテックは、従来のエッチングなどで製造するフレキシブル基板ではなく、製造時に使用する電気や水の量を劇的に減らせる金属インクジェット印刷と無電解銅めっきプロセスを組み合わせたピュアアディティブ法を開発。実際にピュアアディティブ法で製造されたフレキ基板を展示している。
AIカメラを使って白杖に情報を伝達
マリス creative designは、視覚障がい者が介助者を必要とせず、ひとりで外出することができるアシストAIカメラ「seeker」を展示。AIカメラが捉えた映像はエッジ側で処理され、白杖に取り付けた振動センサーへて情報を伝達。リアルタイムで横断歩道や信号、駅のプラットフォームを検知し情報を伝えられる。エッジ側はルネサスのRZ/VシリーズのDRP-AIを使用している。
実用的で高精度なモーションキャプチャー
Xenomaはモーションキャプチャーシステムの「e-skin MEVA」を展示。センサーとセンサーをつなぐ配線部分に、伸縮性と耐久性が高い「PCF(Printed Circuit Fabric)」を使用。高い伸縮性は着心地の良さにもつながっており、しかもセンサーを取り付けたまま洗濯も可能で実用性も高い。
ギター用のエフェクターをストラップで操作
「DIMENSION TRIPPER」は、ギターのストラップの部分にバネで伸縮するコントローラを装備。この伸縮具合をマルチエフェクターと連動させたレシーバーに送ることで、音をひずませるなどエフェクトの操作が可能となる。足で操作するフットペダルよりも、エフェクトのコントールをより「演奏」として操作でき、ライブパフォーマンスとしての可能性も広げられる。現在、クラウドファンディングを実施中だ。
脳波を検知して自分に合ったものをレコメンド
CyberneXは耳の穴から脳にアクセスするイヤホン型BCI「XHOLOS」を展示。従来モデルよりも小型化した貼り付けタイプを新たに発表している。脳波を検知してリラックス度などが計測できるので、たとえばアロマなどを嗅いだとき、脳波が本当にリラックスしたものをチョイス可能なレコメンドモードも利用可能。
ちなみにASCII STARTUPもハードウェア、IoT企業のブース「IoT H/W BIZ DAY 2023」として「スタートアップ&ユニバーシティ」エリアで展開している。
大手企業が出展している「アドバンスドテクノロジー」エリアにもチェックしておきたいソリューションや技術が多く展示されている。
ミリ波を使って危険物を検知
東芝の「空間セキュリティマネジメントソリューション」は、CEATEC AWORD 2023の総務大臣賞を受賞しているソリューション。空港などを想定し、ミリ波のレーダーを使うことで、衣服内に隠し持っている危険物を検知。さらにカメラと連動して対象者の顔とあわせて保安員にタブレットなどで伝えるというデモを行っている。
世界最小最軽量のライブカメラ
ザクティは直近で発表したばかりの、リアルタイム映像DXソリューション「Xacti LIVE」を展示。世界最小最軽量のライブカメラとして、眼鏡のフレームに取り付けたり、衣服に装着したりしても邪魔にならない。映像は強力なブレ補正機能が搭載されており、カメラを大きく動かしても水平が保たれた映像を録画したり配信できる。
ふくろうのはばたきで自然な風を
シャープは、同社が15年間取り組んできた、静物の構造から着想を得た生物形態模倣技術の「ネイチャーテクノロジー」を展示。ネイチャーテクノロジーは、たとえば洗濯機のパルセーターにイルカの尾びれと表皮しわを模したデザインを取り入れたりといった技術。今回はふくろうの羽ばたきを手本としたヒーリングファン「はねやすめ」を初出展している。