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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第35回

誰でも使える、誰にも覗かれない

画像生成AIに“表現の自由”を スーパーハッカーが挑んだ「Fooocus」

2023年09月04日 07時00分更新

文● 新清士 編集●ASCII

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複雑とシンプル オープンに繰り返されるカウンター

 StabilityAIは、SDXLリリース後、展開の再編に入っています。初心者向けツールは「Clipdrop」というクラウド型サービスへと集約化を進め、基本無料の月額課金型サービスへと展開を進めています。

 一方、アプリの側は、ComfyUIの開発者のcomfyanonymous氏を雇用し、ComfyUIと同社のStableSwarmUIの統合を進めています。開発環境としては専門知識を要求する複雑な環境へと発展していますが、カスタマイズ性に優れ、複雑なワークフロー設計ができることからエンジニアに強くアピールする内容になっています。同社の環境を基本としたContorlNetに近い機能「Control-LoRAs」を発表するなど、高機能化によって差別化をはかるとともに、これらをClipdropのAPIに統合することで、開発者の支持を得ようとしています。

StabilityAIが発表した「Control-LoRAs」の線画抽出機能「Canny」。ComfyUIでサンプルのワークフローを動作させている様子。左下で入力した画像が、線が抽出され、右側の画像になって出力される

 Fooocusは、こうした複雑化していく画像生成AIの環境そのものへの強烈なカウンターになり、初心者には難しいと考えられていたSDXLのハードルを一気に引き下げました。「画像にメタデータを入れるのが当たり前」と思われていた大手の考え方に対するカウンターにもなっています。さらに、Fooocus自身もFooocus-MREのようなカウンターも受けて発展していく。こうした意外な成長の仕方をしていくのもオープンソースコミュニティの強みであり、とてつもなくイノベーションが早い理由になっているように感じます。

 

筆者紹介:新清士(しんきよし)

1970年生まれ。株式会社AI Frog Interactive代表。デジタルハリウッド大学大学院教授。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲームジャーナリストとして活躍後、VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム「ソード・オブ・ガルガンチュア」の開発を主導。現在は、新作のインディゲームの開発をしている。著書に『メタバースビジネス覇権戦争』(NHK出版新書)がある。

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