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あのクルマに乗りたい! 話題のクルマ試乗レポ 第363回

日本本格進出のBYDの新型コンパクトEV「ドルフィン」は街乗りしやすいサイズ感がイイ

2023年09月01日 10時00分更新

文● 鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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■価格次第では日本の自動車業界を揺るがす存在か!?
■中国BYDが満を持して日本投入するEV「DOLPHIN」

BYD

BYD「DOLPHIN」

 BYDがこの秋に発売を予定する新型コンパクトEV「ドルフィン(DOLPHIN)」のプロトタイプカーのメディア向け試乗会に参加してきました。価格は9月20日の発売時に明らかにされるとのこと。

 「ドルフィン」は、すでに発売開始されているミッドサイズSUV「アット3(ATTO3)」に続く、BYDの日本発売第2弾モデルとなります。特徴は、EV専用のプラットフォーム「e-Platform3.0」に、BYDのリチウムイオン電池「ブレードバッテリー」を搭載すること。そして、中国やASEANで、すでに約43万台もの販売実績を積んでいるとか。また、日本向けに全高を1550mmに落とし(グローバルは1570mm)、ウインカーハンドルを右にし、急速充電のチャデモ対応を実現。さらに、誤発進抑制システムや日本語音声認識を追加しています。

BYD

 コンパクトEVと呼んでいますが、現車の「ドルフィン」を前にすると、それほどコンパクトなわけではありません。「ドルフィン」の全長4290×全幅1770×全高1550mmという寸法は、いわゆるBセグメントとCセグメントの中間といったもの。同じEVである日産「リーフ」(全長4480×全幅1790×全高1560mm)よりも小さく、日産「ノート」(全長4045×全幅1695×全高1520mm)よりは大きいというサイズ感です。

■航続距離とパワーが違う2モデルをラインナップ

 発売が予定されているのは、2つのグレードです。ひとつはエントリーとなるスタンダードモデルで、リチウムイオン電池を44.9kWhを積んで、一充電当たりの走行距離が400km。モーター出力は70kW(95馬力)・最大トルク180Nm。もうひとつが、上位グレードの「ロングレンジ」で58.56kWhのバッテリーを積んで、一充電当りの走行距離が476㎞。モーター出力が150kW(204馬力)・最大トルク310Nm。どちらも1モーターの前輪駆動。サスペンションは、スタンダードがフロントにストラットで、リヤにトーションビーム。ロングレンジは、フロントにストラットでリヤにマルチリンクになります。エクステリアはスタンダードが単色のところ、上位の「ロングレンジ」はルーフがブラックの2トーンカラーとなっています。

BYD

なお、USBの出力はTYPE-Aが5V、1.5A、7.5W。TYPE-Cが5V/20V、3A、MAX60Wとなる

 また、先進運転支援システムとして、衝突被害軽減自動ブレーキ(AEB)をはじめ、アダプティブクルーズコントロール(ACC)やレーンキープアシスタント(LKA)、ブラインドスポットインフォメーション(BSD)、クロストラフィックアラート&ブレーキなどを多数装備。最新の日本車と同等の内容を揃えているのも特徴でしょう。さらに、室内に2つのミリ波レーダーを備えて、子供やペットの置き去り検知機能を備えているのは、日本車にない機能です。

■安全性の高さが特徴のブレードバッテリー

 個人的に良いなと思ったのは、「ブレードバッテリー」と名付けられた電池に、リン酸鉄リチウムイオン電池を採用しているところです。リン酸鉄系のリチウムイオン電池は、エネルギー密度は低いものの、安全性の高さが特徴だからです。BYDでは、同バッテリーに釘を打ち込んでも、バッテリーが燃えたり爆発しないというテスト動画を発表しています。また、バッテリーをブレード(刃)のようにぎっしり並べることで、エネルギー密度の低さをカバーしているのも見事。さすがバッテリーメーカー! と思える、よく考えられたEV用バッテリーと言えるでしょう。

■シンプルな室内、気持ちイイ加速感

 そんな「ドルフィン」試乗は、スタンダードモデルからスタートしました。黒中心のインテリアは、豪華なものではありませんが、日本車とも欧米のクルマとも違うエキゾチックな雰囲気を備えます。ダイヤル式のシフトスイッチや、横から縦に回転するディスプレイなど、デザインの内容も意欲的です。ただし、運転席と助手席の間に大きなセンターコンソールがあって、運転席まわりがタイトになっていました。同クラスのエンジン車などよりも長い、2700mmものホイールベースを活かした、広い室内空間を感じにくかったのが残念なところです。

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 走らせてみて最初に思ったことは、「スペックよりも、よく走るな」ということ。車両重量1520kgに対して、最高出力70kW(90馬力)のモーターは、相当にささやかな数字です。ところがトルクが180Nmありますから、加速感はまずまず。街乗りだけでなく、試乗した首都高速を流れに乗って走るのであれば、十分なパワーだと思えました。

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このタブレットは縦と横、どちらでも使えて、ワンタップで切り替わる。これは切り替わっている途中

 また前後にギクシャクせず、路面の凹凸を上手にいなす乗り心地の良さも印象的です。アクセル操作の、特に戻す方向の反応が、よい塩梅に鷹揚で、前後の揺れが小さくなっていました。同乗者にとっては、うれしいセッティングではないでしょうか。

 続いて、バッテリー容量の大きい「ロングレンジ」に乗り換えます。車両重量が1680kgにまで増えていますが、パワーは2倍以上の150kW(204馬力)、トルクも1.7倍以上の310Nmにまでアップしています。ですから、加速は1クラスも2クラスも上のような強力さです。とは言っても、「スポーティーなのか?」といえば、そうでもありません。あくまでも、乗り心地の良さ、スムーズさといった点が優先されているという印象です。

 ハンドルのセンターの微小舵があいまいですし、なんとなく腰高感があり、コーナーでの安定感ももうひとつ。パワーは、高速道路などの追い越し加速などで使うものと考えた方がいいではないでしょうか。個人的にはパワーとハンドリング、乗り心地のバランスは、「ロングレンジ」よりも、スタンダードのほうが好みです。

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【まとめ】ディーラー網も整備する日本参入への本気度が楽しみ

 そんな「ドルフィン」の価格は、まだ公開されていません。とはいえ、第1弾であったSUVの「アット3」が440万円~と、日本車や韓国車よりも割安感のある価格設定であったことを考えると、「ドルフィン」も同様な価格感になるのでは。日産「リーフ」の40kWh搭載モデルの価格は408万1000円であり、60kWh搭載モデルの価格は525万3600円~。これに勝る割安感になることになるはず。

 また、BYDは日本全国にディーラー網を構築中です。割安感があり、近くにディーラーがあれば一定の顧客を獲得するのは難しくないことでしょう。街中で、「ドルフィン」を目にする日は意外に近い! これは間違いありません。

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