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羽田空港の自動運転バスの実証実験をANAが実施

2020年01月23日 10時00分更新

文● 鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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空港内を移動するバスも自動運転で無人化を目指す

 1月22~31日にかけて、羽田空港において「大型自動運転バスの実用化」に向けた実証実験が実施される。その初日となる22日にメディア向けの発表・取材会が行なわれた。

 実証実験を行なうのはANAで、将来の労働力不足対策のための空港内バスの自動化が目標だ。ANAはその実現のため、すでに2017年度、2018年度と2回の実証実験をしており、今回は3度目となる。初年度はバスの自動化の検証であり、2年目は空港という環境下での自動化の検証。そして3度目の今年度は、より実用化を見据え、自動運転レベル3の実証実験という内容となった。

 協力するのはSBドライブ、先進モビリティ、そしてビーワイディージャパンの3社。運行管理のためシステムなどをSBドライブが提供し、自動運転技術を先進モビリティ、そしてビーワイディージャパンがEVバスを提供する。

 取材陣を待ち構えていたバスは、空とANAの機体をモチーフにしたデザインが施され、車両の前後に大きく「自動運転 実証実験中」の文字が躍る。中国ブランドのBYDのバスは「K9RA」というモデルで、324kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池を搭載し、最大航続距離はエアコンを使用した状態で最高250㎞。モーターは後輪のインホイールモーター。EVバスとして、世界各国で採用される信頼度の高いモデルだという。

 自動運転のために追加されたセンサーは、車両の前に3つ(前面の屋根、ボディーの左右の角)、リヤ(屋根)に1つの、計4個のLiDAR(レーザーレーダー)、屋根の中央部のGPS、そして前面のナンバーの上にミリ波レーダーというもの。LiDARを使って周囲の地図を作りながら自分の位置を推定するSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)と、GPSによる自車位置確認、そして自車内のセンサーで位置を推定する慣性航法という3つの手法を併用することで、信頼性の高い自動運転を実現するというのだ。

現状ではドライバーと添乗員が必要く

 ちなみに、今回の実証実験ではドライバーだけでなく、添乗員も同乗するという。ドライバーはあくまでも自動運転レベル3でのシステムがギブアップしたときの補助のみ。乗客が全員乗車したことの確認や、ドアの開け閉め、運行開始などは添乗員の仕事となる。バスが走る空港内は、乗客がバスの外を勝手に歩くことは許されない。その監視も添乗員の仕事というわけだ。

 バスに乗客となる取材陣が乗り込むと、添乗員役の説明員はスマートフォンを操作する。するとピコピコという警告音と共にバスのドアが閉まった。そして、説明員はバス室内のカメラに向かって「遠隔監視の××さん。発車指示は届いていますか?」と声をかけた。すると、ほぼタイムラグなしに「はい、届いております」との返事。運行中のバスを空港内の別室にいるスタッフが監視しており、添乗員のスマートフォン操作によりバスの発車指示の合図を受け取っていたようだ。遠隔監視者は、車両の自動運転システムやバッテリーの状態をはじめ、車内外のカメラ映像から問題の有無を把握し、問題がなければバスの発車を操作する。

 もちろん問題が発生すれば、遠隔監視者側でバスを停止させることが可能だ。この運行管理システムがSBドライブの「Dispatcher(ディスパッチャー)」で、将来的には一人の管理者により、複数の自動運転車の運行をコントロールするのを目指すという。また、今回の車両はEVということで、バッテリーの状態など、内燃機のバスよりもモニターできる項目は多いようだ。

 自動運転が始まれば、もちろんドライバーの手はハンドルから離れたまま。Uターンも器用にこなす。EVらしく、ノイズと振動は非常に少ない。乗客であるメディア陣が車内を移動すると「危ないので、走行中の移動はご遠慮ください」とのアナウンスが流れる。これはAIによる自動のアナウンスだ。

 車内にある管理用パソコンのモニターを見ていると、SLAM、GPS、慣性航法の3つを頻繁に切り替えていることがわかる。走行は最高速度20㎞/hほどで、非常にスムーズで危なげない。ただし、空港内には非常に大きな特殊車両も数多く走っており、それらが中央ラインをハミ出て向かってくることも。そのときは、さすがに人間のドライバーが操作(オーバーライド)して危険を回避していた。

 実証実験のためのルートはターミナル棟の脇を巡る10分ほどのもの。自動運転レベル3ということもあり、あっけないほど何事もなく試乗は終了した。ANAとしては、この実証実験を足掛かりとして、2020年内には羽田空港内での試験運用を目指すという。

レベル3は始まったばかり
将来的には完全無人も期待できる

 空港内は、飛行機に乗せる荷物を運ぶトレーラーや乗客を運ぶバス、飛行機を牽引する大型車など、多種多様な車両が数多く走り回っている。その中を自動でバスを走らせるのは、確かに難しいことだろう。また、レベル3ということでドライバーがおり、しかも添乗員まで乗せるとなれば、逆に一人で運行している現在の空港内バスよりも必要な人員は多くなる。

 しかし、それでもレベル3を経て、レベル4という進化を続けた先には、一人の監視者によって添乗員なしの複数のバスを運行する可能性も見えてくる。今回の実証実験は、そうした最終的な目的に向かう、大切な道程のひとつに違いない。着実に歩み続けるANAの挑戦に期待したい。

(写真左より)先進モビリティ 代表取締役社長 青木啓二氏、全日本空輸 代表取締役専務執行役員 清水信三氏、中華人民共和国 駐日本国大使館公使 郭 燕氏、SBドライブ 代表取締役社長兼CEO 佐治友基氏、ビーワイディージャパン 代表取締役社長 劉 学亮氏

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