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あのクルマに乗りたい! 話題のクルマ試乗レポ 第358回

メルセデス・ベンツ「GLC」は高級SUVのお手本のような走りと質感が魅力

2023年08月13日 12時00分更新

文● 大音安弘 編集●ASCII

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 今も昔も憧れの輸入車として代表格のひとつが、メルセデス・ベンツ。近年は、SUVのラインアップにも力を入れており、コンパクトからラージまで幅広く車種を展開している。そのメルセデスSUVの中で、上級クラスのエントリーとなる「GLC」が初のフルモデルチェンジを実施した。

GLC

メルセデス・ベンツ「GLC」

全長が50mm伸び、より低姿勢のデザインに

 メルセデス・ベンツのミディアムSUV「GLC」とは、ベンツのSUVを示す「GL」のCクラス級の車格であることを示す。このため、Cクラスのセダンやステーションワゴン同様に、FRレイアウトを採用しているのも特徴のひとつ。それよりも下位に位置するコンパクトなSUV「GLA」と「GLB」はFFレイアウトなので、大きさだけでなく、基本構造も異なるのだ。

 GLCは2015年に世界初投入され、日本では2016年から販売を開始。世界的にも人気が高く、グローバルの累計販売台数は260万台を超えており、日本でも人気が高い。標準的なSUVに加え、流行のクーペSUV「GLCクーペ」も設定。2代目となる新型は、3月16日にフルモデルチェンジが発表され、クーペSUV「GLCクーペ」もすでに発表済。年内には日本に上陸するだろう。

GLC

 新型GLCのデザインは、メルセデスにふさわしい、上品で高級感にあふれるもの。先代より全長とホイールベースが拡大されたことで、より伸びやかなスタイルに仕上げられている。ただ、数値的には全長が50mm伸びたにすぎない。ルーフ形状やサイドガラスのデザイン、ボディー側面の後方部の上部を絞り込んだ形状とし、より低い姿勢に見せている視覚的な効果が大きいのだ。気になるボディーサイズは、全長4720mm×全幅1890mm×全高1640mm(標準車)で、駐車場で気になる全幅については、先代同様に留めている。

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 インテリアは豪華の一言。そして、ウッドパネルを使ったダッシュボードには、デジタル機能が満載だ。最も目を引くセンターディスプレイは、縦型11.9インチの大画面となる。オプションで、ナビ機能をARナビにアップデート可能。これはナビ画面上の前方のカメラ映像に進行方向を示すことで、道案内をより分かりやすくしたものだ。運転席のメーターパネルは、フードがなく、タブレットのような液晶モニターを装備。前方のガラス上に、速度などを表示するヘッドアップディスプレイも用意されており、これも大画面化で視認性が向上。運転中に、メーターやセンターディスプレイを見る必要がないほど、表示内容も充実している。

GLC
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 ミディアムサイズのSUVなので、前後席にはゆとりがあり、特に後席は足元が広く快適性だ。SUVで重要視されるラゲッジ容量は、標準時で620Lを確保。なんと先代よりも70Lも大きくなった。3分割の可倒式後席によるラゲッジの調整が可能で、最大1680Lまで拡大できる。

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 モデルラインは今後追加されると思われるが、現状は1タイプのみ。マイルドハイブリッド仕様の2.0L直4クリーンディーゼルターボエンジンを積む4WD車「GLC 220d 4MATIC」は、エンジン単体で最高出力145kW(197ps)、最大トルク440Nmを発揮。そこにモーターアシストの最高出力17kW、最大トルク205Nmが加わる。なんと、モーターのトルクは2.0Lガソリンエンジン並みなのだ。これにより燃費消費率も18.0km/L(WLTC)と、重量のあるSUVであることを考量すれば低燃費といえる。

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 特筆すべきはオプションで、エアサスペンション「エアマティックサスペンション」と後輪操舵機能「リヤアクスルステアリング」が用意されたこと。エアサスペンションのメリットは、走りや路面状況に合わせて、車高や乗り心地を変化させることにある。また、車高調整機能は乗降時に車高を落とし、乗降性の向上にも役立てられる。

 もうひとつの後輪操舵機能は、一般的には4WSと呼ばれるもので、後輪にわずかに舵角を与えることで、駐車時や街中での小回りの良さに加え、カーブや車線変更時の走行安定性を高める役目がある。この機能の有無で、運転感覚は大きく異なる。最も分かりやすいのが最小回転半径で、なしだと5.5mなのに対して、有りなら5.1mまで短縮できる。数字上では0.4mの差だが、Uターンで比べてみればより大きな差に感じるはずだ。

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SUVならではの視界の良さ
2t近いボディーを軽々走らせる強心臓

 乗車してみると、GLCの運転席からの視界は良好。ガラスエリアの広さと小ぶりのすっきりしたダッシュボードデザインの恩恵だ。上記にもあるようにヘッドアップディスプレイの大型化で、運転中に必要な情報はほとんど手に入るので、視点の移動も最小限に抑えられる。さらに走行中に必要な操作は、ステアリングまわりで完結するほか、インフォメーションシステム「MBUX」は、「Hi!メルセデス」で起動する音声操作機能を備えている。

 試乗車は、上記のエアサスペンションと後輪操舵機能を装着。走行時のエアサスペンションの最大の恩恵は、乗り心地の良さ。路面状況による乗り心地の変化を最小化し、衝撃もしっかりと吸収してくれるからだ。後輪操舵機能は、想像以上にクルマの動きを機敏にしてくれ、1クラス下のよりコンパクトなSUVを運転している錯覚になってしまうほど。

 ディーゼルエンジンも静かなので、視覚的な豪華さだけでなく、体感でも高級車に乗っているという満足感が味わえる。意外だったのが、峠道での走りの良さだ。上り坂でも、2t近いボディーを軽々と加速させてくれる。さらに4輪の接地性が高く、カーブでの安定感も抜群。かなりスポーティーな走りが楽しめて驚かされた。まさに万能選手だ。

 今回は、試すことができなかったが、オフロード性能も強化されており、ドライブモードの「オフロード」の追加や悪路走行時に役立つ表示機能も追加されている。

欠点と言える欠点はないが
820万~という価格がネック

 日常から週末のアウトドアまで活躍してくれる贅沢なファミリーカーとなり得るGLCは、まさに欠点なし。唯一かつ最大の悩みは、その価格だろう。なんと標準車で820万円もする。さらにエアサスペンションと後輪操舵機能がセットオプションで、49万円。さらにスポーティーな外装の「AMGライン」との組み合わせが必須なので、109万円が上乗せになる。しかし、新GLCに乗るなら、絶対選びたいアイテムだけに悩ましい。

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 ちなみに、フルオプションに近い試乗車の価格は、1000万円超えに。ベンツの上級SUVの入り口であるGLCを選ぶにも4ケタの費用が必要になるとは……。その完成度の高さと同じくらいの衝撃であった。

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