新連載を始める。テーマはAIのニュースチェックだ。基本的には2週に一度、主にASCII.jpで公開されるニュースについて、簡単な解説と流れの分析をしていきたい。紹介されていないものでも重要な話については、別途短い解説を追記していく。
というわけで1回目は、2023年7月前半のAIニュース振り返りだ。
(※記事のタイトルをタップすると記事ページが開きます)
DeepL、日本法人「DeepL Japan 合同会社」を設立
日本企業との取引を迅速化(7月3日)
翻訳AIは急速に品質が上がり、日常的に筆者もお世話になっている。DeepLは利用者を増やしているが、実のところ、無料版が強いというよりも「個人事業主でも、企業でも気軽に契約できる有料版」があることがビジネスの強みだ。日本の場合、翻訳AIを使うといってもそれは「無料でGoogle翻訳を使う」ことが多く、有料版利用は企業でも多くはないという。
そこで、DeepLが人気である日本に着目し、有料版利用を促進……ということなのだ。法人の場合、専用辞書などの活用もあり、高付加価値化しやすいという事情もある。
なお、日本には国産の「みらい翻訳」があり、こちらも法人を中心に70万アカウント以上が使われている。個人で契約ができないことなどから目立たないが、精度では定評がある。
7月13日から、生成AI(Microsoft Azure OpenAI)によるメール生成と自社翻訳AIを組み合わせた「時短メール英作文サービスβ版+」のβテストが始まっている。誰もが無料で登録して使えるので、試してみていただきたい。
・時短メール英作文サービスβ版+
https://plus.miraitranslate.com/
ChatGPT「ウェブブラウジング機能」を無効化
誤ってウェブサイトの全文を表示してしまう可能性(7月4日)
有料版のChatGPT Plusで使える「ウェブブラウジング」機能は、新しい情報を探してGPT-4にまとめなおしてもらうにはとても有用なものだった。だが、有料サイトなど「特定の人しか全文を読めない」ところであっても、条件によっては無料で全文を読めてしまう、という不具合があったようだ。
7月19日現在、機能はまだ復活していない。その後に発表された「Code Interpreter」の凄さでかき消されてしまったような印象もある(後述)。
NICT、日本語に特化した大規模言語モデルを発表
純国産ChatGPTも近い?(7月5日)
情報通信研究機構(NICT)の開発した日本語特化LLMは、グーグルのBERTをベースに作られているようだ。ポイントはやはり「日本語特化」ということ。同じ規模であっても、他言語が含まれた学習ソースとは異なる結果を期待できる
ただしGPTとの比較や「和製ChatGPT」に着目しすぎるのは違うのではないかな、と考える。現状は学習が完了した段階で、実用はまだ先。これをベースにいくつもの企業・大学が研究をしていくという意味で注目しておくべきだ。
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