このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

最新ユーザー事例探求 第56回

社内向けのBIから社外向け「Yappli CRM」まで、primeNumber「trocco」採用でビジネスを加速

ノーコードアプリ基盤のYappli、そのデータ活用拡大を支えるのは「頑丈なtrocco」だった?

2023年07月14日 09時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 ノーコードのアプリ開発/運用/分析プラットフォーム「Yappli」を提供するヤプリ。同社では、データウェアハウス(DWH)の「Google BigQuery」やBIツール「Looker/Looker Studio」を使って、社内のビジネスデータや顧客企業のアプリログデータなどの分析と可視化を行っている。その裏側で多様なデータソースからのデータ転送や統合(ETL)を担うのが、primeNumberがSaaSとして提供する国産のデータ統合自動化サービス「trocco(トロッコ)」だ。

 2021年初頭に導入されたtroccoは、現在、ヤプリ社内の幅広い部門で活用されるようになっている。さらに、これから新たなサービスを立ち上げていくうえでも「troccoがなければ実現できないことも多いのでは」と、その重要性を語る。なぜヤプリではtroccoがそれほどまでに活用されるようになったのか。その経緯について、ヤプリ プロダクト開発本部の古屋陽介氏、阿部昌利氏にうかがった。

Yappli、trocco導入事例

旗艦製品であるアプリプラットフォーム「Yappli」と、Yappliと連携してアプリCRM施策を実行する「Yappli CRM」を提供(画像はヤプリIR資料より)

Yappli、trocco導入事例

ヤプリ プロダクト開発本部 開発企画部 マネージャーの古屋陽介氏(左)、プロダクト開発本部 データサイエンティストの阿部昌利氏(右)

ノーコードアプリ基盤の先にある「データ活用サービス」を考える

 2013年4月に創業したヤプリは、創業当初からノーコードのアプリ開発プラットフォームを提供してきた。2020年にはこのプラットフォームを刷新して、分析機能なども追加。10年間の導入実績は600社以上にのぼり、Yappliで開発/リリースされたアプリは795個(2023年3月末時点)、その累計ダウンロード数は、2023年4月に1億5000万件を突破している。

Yappli、trocco導入事例

Yappliの特徴(画像はヤプリIR資料より)

 Yappliのプロダクトオーナーであり、データ関連サービスの立ち上げや導入推進も手がけるプロダクト開発本部 開発企画部 マネージャーの古屋陽介氏は、ヤプリのミッションは「デジタルを簡単に、社会を便利に」という言葉に集約されていると説明する。

 「専門知識不要のノーコードの製品を提供して、企業のデジタル化を簡単にし、より多くの産業課題を解決していく。また企業の生産性を高めて、結果的に人々の生活や仕事が便利になる製品を提供する――。これがヤプリのミッションです」(古屋氏)

 Yappliはノーコードでのアプリ開発だけでなく、アプリの運用やログ分析の機能も備えるプラットフォームだ。加えて、アプリとユーザー分析を起点に、よりユーザーエンゲージメントを深めるための施策を実行できるYappli CRMサービスも提供している。いずれにおいても、アプリから取得できるさまざまなログデータ(行動ログ、イベントログ、属性データ)の活用が鍵を握っている。

 2020年春、ほぼ同時期にヤプリに入社した古屋氏と阿部氏に与えられた最初のミッションは、「データ活用のサービスを立ち上げること」だったという。

 「たとえば1つのアプリからは、『アプリを起動した』『このコンテンツを見た』『プッシュ通知を開封した』『来店してチェックインした』など、たくさんのデータが取得できます。Yappliにはそうしたデータが蓄積されていますから、これをお客様が活用できるようにサービス化して提供する。そうした企画が求められました」(古屋氏)

社内向け活用:ダッシュボード構築のためにサイロ化したデータを統合

 社外向けのサービスとして、顧客企業がユーザーデータを分析、可視化できる機能を用意することになった。ここではDWHにBigQueryを、BIツールにLookerを採用することにした。

 このタイミングで、同じBigQueryとLookerを使い、社内向けのビジネスデータ分析/可視化環境についても改善を図ることになった。社外向けのデータ活用サービスだけでなく、社内のデータ活用推進役も担っているデータサイエンティストの阿部氏は、「Lookerを導入することになったので、そのLookerで社内向けのBIも補充してしまおう、ということになりました」と振り返る。

 2020年春ごろのヤプリでは、セールスデータとマーケティングデータの統合に課題を抱えていた。セールス系ではSalesforce、マーケティング系ではMarketo(当時)を導入し、データをSalesforceに統合したうえで可視化を行っていたが、レポートは統合できておらず、個別にアクセスして見る必要があった。

 「このようなBI環境だと、事業のKPIを達成するうえでどこにボトルネックがあるのか、何が課題なのかを発見しにくいわけです。全社横断的に統合された可視化ができていなかったのが一番の課題でした」(阿部氏)

 特に経営層は、統合された形のレポートを求めていた。そのため当時は、レポートの数日前から打ち合わせを行って準備をするなど、「時間をかけて、すごく非効率なやり方で対応するしかなかった」と古屋氏は証言する。

 そこで、各ツールからBigQueryにデータを集約し、そのデータマートを使ってLookerでダッシュボードを構築するというプランが持ち上がった。ここでデータ転送の役割を担うことになったのが、primeNumberのtroccoだった。

 「BigQueryにBI用のデータを統合するだけでなく、データの加工も必要でした。特にマーケティング系のデータは複雑で、あらかじめきれいにデータを加工しておかないと、うまく一元的に可視化することができませんでした。なので、その前処理も必要でした」(阿部氏)

Yappli、trocco導入事例

社内データを統合したBIダッシュボード構築のためにtroccoを活用した(画像は阿部氏の講演資料より、赤枠は筆者が追記)

 troccoの無償トライアルを活用し、良い手応えが得られたのでそのまま本番転用するかたちで、ヤプリ社内向けのBIシステムはおよそ1カ月間という短期間でカットオーバーできたという。

 ちなみにヤプリ自身でデータ転送/加工のシステムを内製することも可能だったが、古屋氏は「あえてその方針は採らなかった」と説明する。顧客向けサービスの開発と提供が“本業”であり、エンジニアリソースをそちらに割くと事業の成長スピードが落ちてしまうからだ。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事
  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード