VRAM消費量多めのゲームで検証
続いてはVRAM消費量の多いゲームで試してみよう。これらのゲームでは、RTX 4060 Ti(8GB)レビューの際にフレームレートが出にくい傾向があった。まず最初に試すのは「The Last of Us Part I」だ。画質は“最高”に設定し、開始序盤、街を逃げ回るシーンにおけるフレームレートを計測した。
RTX 4060 Ti(8GB)レビュー時はフルHDでもハッキリとしたカク付きが発生し、かなり厳しいと判断したゲームだったが、今回の検証ではカク付きはほぼ感じなかった。ゲームの最適化が進んだか、ドライバーの改善かは不明だが、VRAMがカツカツな割にはDLSSやFSR 2なしでもかなり遊べるようになった点は驚きだった。
DLSS/FSR 2を使うと、どのGPUもフレームレートを伸ばしているが、RTX 4060 Ti(8GB)とRTX 4060、さらにRX 7600の「PCIe x8/128bitバス/VRAM 8GB」という共通属性を備えたGPUでは、最低フレームレートが60fpsあたりに後退している点に注目したい。しかしその一方で、RTX 3060は最低フレームレートが71fpsまであがっている。
これはアップスケール処理のどこかで狭いバス幅やVRAM制限が足枷になっている可能性が考えられる。DLSS使用時のRTX 4060 Ti(8GB)とRTX 4060の平均フレームレートの差がない点からも、ボトルネックがVRAMかPCI Express関連のどこかに潜んでいるようだ。
GeForce勢は全体的にTBPが低めだが、RTX 2060だけTuring世代な割に消費電力が低めに出ている点が興味深い。VRAMが少ないためGPUに仕事が回りきってない(遊んでしまっている)可能性はあるが、断言できるほどの材料はない。そしてDLSSを利用するとGeForce勢は消費電力がさらに下がっている。
次のテストとなる「STAR WARS: Jedi Survivor」は画質“エピック”、レイトレーシングも有効とした。新規ゲームを開始して最初の連行シーンにおけるフレームレートを計測。このゲームはDLSSには対応していないため、アップスケーラーはFSR 2のみを使用している。
こちらもRTX 4060 Ti(8GB)における最低フレームレートの出方が1か月前よりも若干改善された感じだが、FSR 2なしで平均60fpsに到達できたGPUはRTX 4060 Ti(8GB)のみという状況。しかし、FSR 2を利用することで大きくフレームレートが改善される。ただ、60fpsキープを目指すならRTX 4060 Ti(8GB)が欲しくなる。それにしても、もともとAMDが力を入れていたゲームなのに、RTX 4060がRX 7600よりも25%高いフレームレートを出せているのは意外だ。
これまでのTBP検証で、FSR 2しか使えないRX 7600はFSR 2使用時、消費電力がほとんど下がらないか逆に上がるという結果がたびたび観測されていたが、このゲームはGeForceでもFSR 2を使った時の検証となる。これによるとGeForce勢はFSR 2を使用した時でもしっかりとTBPが下がる。
当初、FSR 2はTensorコアのような専用回路を使わずにグラフィックコアの部分で処理を行うため、消費電力が高くなるのかと思っていたが、GeForce+FSR 2でTBPが下がるということは、RadeonとGeForceのアーキテクチャーの差に原因があると考えてよさそうだ。ただ、その根本原因が何なのかまではこの検証からは掴むことができない。
最後に試すのはVRAM消費量のやたら多い「BIOHAZARD RE:4」だ。レイトレーシングを含め、画質系はすべて最高に設定。ストランドヘアーも有効としている。ゲーム序盤で訪れる教会のある村〜次の集落へ続く道を移動した際のレームレートを計測した。このゲームもDLSS系は一切対応していないので、FSR 2のみを使用する。
先の2本のゲームと同様に、1か月前よりもフレームレートの出方が若干改善しているようだが、やはりVRAM 8GB以下のGPUは最低フレームレートの落ち込みが激しい。滑らかに動いている部分もあるが、マップ内の見えない境界を跨いだ瞬間にカクッとなってしまう。この中でRTX 3060だけ最低フレームレートがそれほど落ちずに動いているが、これは言うまでもなくVRAM搭載量が多いためである。
FSR 2を併用するとカク付きは逆に酷くなった(頻度自体はあまり変わらないので、カクつく度合いというべきか)ものもあるが、全体的に平均フレームレートは向上。特にRX 7600の伸びが良いのは、Radeonへの最適化度合いに関係があるのかもしれない。
FSR 2で平均フレームレートが上がったとはいえ、ゲームの快適さを考えると、RTX 4060クラスのGPUではVRAMを圧迫するような画質設定は下げていきたい。
TBPの傾向はこれまでのゲームと同じ。RTX 4060は平均115〜120W程度でも効率良くフレームレートを出しているといえる。
この連載の記事
-
第455回
デジタル
「Ryzen 7 9800X3D」が最強ゲーミングCPUであることを証明する -
第454回
デジタル
性能が最大50%引き上げられたSamsung製SSD「990 EVO Plus」は良コスパSSDの新星だ -
第453回
デジタル
性能も上がったが消費電力も増えた「Ryzen 7 9800X3D」最速レビュー、AI推論の処理速度は7800X3Dの約2倍! -
第452回
自作PC
Core Ultra 200Sシリーズのゲーム性能は?Core Ultra 5/7/9を10タイトルで徹底検証 -
第451回
自作PC
Core Ultra 9 285K/Core Ultra 7 265K/Core Ultra 5 245K速報レビュー!第14世代&Ryzen 9000との比較で実力を見る -
第450回
デジタル
AGESA 1.2.0.2でRyzen 9 9950Xのパフォーマンスは改善するか? -
第449回
デジタル
Ryzen 9000シリーズの性能にWindows 11の分岐予測改善コードはどう影響するか? -
第448回
デジタル
TDP 105W動作にするとRyzen 7 9700X/Ryzen 5 9600Xはどの程度化ける? レッドゾーン寸前を攻める絶妙な設定だが、ゲームでの効果は期待薄 -
第447回
デジタル
Zen 5とTDP増でゲーム性能は向上したか?「Ryzen 9 9950X」「Ryzen 9 9900X」の実力チェック -
第446回
デジタル
「Ryzen 9 9950X」「Ryzen 9 9900X」は“約束された”最強のCPUになれたのか? ベンチマークで見えた利点と欠点 -
第445回
デジタル
「Ryzen 7 9700X」「Ryzen 5 9600X」のゲーミング性能はゲームキングRyzen 7 7800X3Dに勝てる? - この連載の一覧へ