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業界人の《ことば》から 第537回

DXの追い風を受け、中核事業のLumadaを中心に安定成長を目指す、日立製作所 小島啓二社長

2023年05月08日 08時00分更新

文● 大河原克行 編集●ASCII

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今回のひとこと

「2024中期経営計画は、日立にとって大きな転換点になる。One Hitachiによって企業価値向上をさらに加速させていく」

(日立製作所の小島啓二社長兼CEO)

 日立製作所は、2022年度からスタートした「2024中期経営計画」が1年目を終えたところで、目標値を修正した。

 売上成長の5~7%増、Adjusted EBITAの12%、ROICの10%、EPS成長の10~14%は維持しながらも、3年累計のコアフリーキャッシュフローを1兆4000億円から1兆2000億円に修正。2024年度に10兆円としていた売上収益も、連結事業の売上収益として8兆円、Adjusted EBITAは9600億円という数字を掲げた。

 数値だけを見れば下方修正のように見えるが、これらの数字は、むしろ日立製作所の体質転換に向けた施策の裏返しともいえる。

 たとえば、2024年度の8兆円の売上収益は、2024中期経営計画において、上場子会社と日立Astemoが非連結化することを前提としたものであり、今回から、新たに「連結事業」という言葉を用いている。連結事業とは、連結合計から非連結化事業となる日立Astemoと上場子会社の数値を差し引いたものとなる。

 日立製作所が発表した2022年度連結業績は、売上収益は前年比6.0%増の10兆8811億円、Adjusted EBITA は同3.4%増の8846億円となったが、連結事業では前年比13.4%増の7兆6000億円、Adjusted EBITA は同9.1%増の7200億円となる。これをベースに、新たな中期経営計画の目標を描きなおしたというわけだ。

社会イノベーションに取り組む日立

 日立製作所が「連結事業」による指標を用いたのは必然である。

 それはこれまでの日立製作所の取り組みを振り返ると理解できる。

 日立製作所は、リーマンショックの影響などを受けて、2008年度に、国内製造業としては過去最大となる7873億円の赤字を計上。それ以降、抜本的な構造改革に取り組んできた。

 小島社長兼CEOは、「日立は、リーマンショック後の経営危機を経て、社会イノベーション事業への集中を決断するとともに、社会イノベーション事業のグローバルリーダーを目指し、10年以上に渡り、事業ポートフォリオの改革に取り組んできた。その結果、2022年度には上場子会社はゼロとなり、日立Astemoも上場を目指して非連結化することを決定した。これにより、事業ポートフォリオ改革は、ひと区切りがつき、今後はサステナブルな利益成長へと、経営の主軸を切り替えることになる」とする。

 日立製作所が、2013年度から2021年度までに獲得したアセットの売上合計は約3兆1000億円に達する。ここには、SullairやJR Automation、日立ハイテク、日立エナジー、GlobalLogicなどが含まれる。

 「獲得した事業アセットは大きくグローバル化しており、欧州では電力や鉄道などのグリーン分野を増強。北米ではデジタル分野、グリーン分野、産業分野で資産を増強することができた」と語り、「日立ハイテクは2022年度に過去最高益を達成し、日立エナジーはGX市場の追い風により受注が大幅に拡大。GlobalLogicはDXにより高い成長率を維持している。これらの大型買収によって、獲得および統合した事業アセットは、グローバルの成長エンジンとして機能しており、今後の成長に向けて、さらに投資を拡大していくことになる」と語る。

 その一方で、譲渡アセットの売上合計は約5兆円規模となり、空調や火力発電システム、画像診断関連事業を譲渡。さらに、上場子会社でも、日立工機や日立化成、日立キャピタル、日立マクセル、クラリオンといった社会イノベーション事業と関係の薄い事業アセットは譲渡した。2022年度には、日立建機の一部株式や日立金属の株式に加え、日立物流の株式の売却も完了している。

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