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第11回 チームワークマネジメントがビジネスを変える

「便利だよ」「楽になるよ」じゃ人は動かない 華麗なる保守派の一族を変えるために

もう悩まない チームワークマネジメントを実現するBacklogへの巻き込み方

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: ヌーラボ

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 「Backlogのメリットは理解しているけど、社員やお客さまが使ってくれない」と悩むユーザーは多い。実はこれはすべてのSaaS導入に関わる重要な関心事だ。JBUG(Japan Backlog User Group)にも登壇するBacklogのヘビーユーザーであるピー・アール・オーの河野千里氏とフィラディスの高木俊輔氏に導入・定着ノウハウを聞く。前半は導入編。タスク管理やBacklogに慣れないユーザーにどのようにBacklogを浸透させるかについて聞いてみた(以下、敬称略 インタビュアー ASCII編集部 大谷イビサ)。

組織の隔たりを超える「日報プロジェクト」は10年かけて社内文化に

大谷:まずは会社紹介・自己紹介からお願いします。

河野:横浜の中華街にあるシステム開発会社ピー・アール・オーから参りました河野千里と申します。弊社は「あったらいいな」というコンセプトで、大規模なWebサイトの構築やスマホアプリの開発のほか、ECサイト、組み込み系、ゲームなどさまざまな実績を持った技術者集団を自負しています。「会社の資産は人材である」という考え方から個々の能力をサポートするような文化が根付いているような組織になっています。

ピー・アール・オー. SI事業本部 SI営業部 セールスサポートグループ 河野千里氏

私は開発部の部長として開発現場を見てきたのですが、現在はセールスサポート チームマネージャーという立場です。あと、開発業務のかたわらで、他の新人研修や社員教育といったところにも関わってきていました。そんな中、BacklogとCacooはチームビルディングでお世話になり、本当に強い味方になってくれました。

大谷:Backlogの導入はいつくらいですか?

河野:会社としてのBacklog利用使用歴は13年になります。もともとはお客さまからの依頼を受けて使い始めたのですが、社内でも「これはいいよね」という話になり、開発部から全員で使ってみようということで、タスク管理に使うようになりました。

私が入社したのが2012年なので、ちょうど利用開始のタイミングですね。多いときだと6~7くらいのさまざまなプロダクト、プロジェクトを横断的に見ていたのですが、そのタスク管理や進捗管理にBacklogを使っていました。

大谷:なるほど。システム開発会社の開発部のマネージャーとしてプロジェクト管理に使っていたんですね。

河野:あと、先日Backlog World 2024でお話しさせてもらったのは、日報プロジェクトです。

当時、請負案件の進行管理のためにBacklogを使っていましたが、開発部が縦割りの組織構造になっており、3つある開発部に隔たりがありました。チームが違うと、誰かもわからず、ナレッジも共有されません。この問題を解決するために立ち上げたのがBacklogを使った日報プロジェクトです。

大谷:どういった内容なのですか?

河野:異なる開発部のメンバーを全員Backlogに呼んで、日々の業務について報告するというプロジェクトになります。日報の運用ルールは、大きく「起票」「日々の報告」「クロージング」という流れで行ないました。月の始めに部長がチームメンバー全員分を1人・ひと月・1課題として起票し、メンバーは毎日の日報をコメントに記録していきます。月の終わりにマネージャーがフィードバックコメントを書いてクロージングさせるという流れです。結果として、このプロジェクトは今も続いており、会社の文化として根付きました。

情シスがBacklog導入のために「みんなのお困り相談」を始めるまで

大谷:続いてフィラディスの高木さんも会社紹介と自己紹介をお願いします。

高木:フィラディスの高木俊輔と申します。私たちフィラディスはワインの専門商社として「日本に成熟したワインの文化を根付かせる」という経営理念の実現を目指しています。

それは、ワインを難しいと構えずに、ご自身の感性でワインを選び、特別な時だけではなく、日常の一部としてワインを自然体で楽しんで頂けるようになること。

また、フィラディスにとっては、上質なワインを厳選するだけでなく、世界的には無名であっても日本人の味覚や食事に合うという基準で選んだワインをお勧めできるようになること。この2つが実現してはじめて、日本独自の成熟したワイン文化が根付いたと言えるのだと考えています。

私は、その中で情報システム部という、いわゆる情シスで仕事をしています。ジョインしたのは2021年の冬ですので、約3年経って4年目に突入しています。

フィラディス 情報システム部 高木俊輔氏

大谷:高木さんもBacklog導入について教えてください。

高木:弊社でBacklogを導入したのは、去年ですね。それまではメールやチャット、口頭などでいろいろタスクを回していたんですが、うまく回らなくなっていました。そんな中で大小さまざまなプロジェクトが出てきたので、Backlogを使って、そのプロジェクトを成功させたり、日常のルーティンワークもBacklogで回していこうと考え、僕が声を上げて、会社の方に入れさせてもらうことにしました。

大谷:Backlog導入のきっかけはなんだったんですか?

高木:会社の中で何十万本のワインをしまっておく非常に大きな倉庫があるのですが、その倉庫を引っ越すという大きなプロジェクトがあったんです。倉庫を移転するとなると、光回線やWi-Fiといったネットワーク環境、印刷環境、防犯カメラ環境だったり、ITインフラに関する手配・調整が多数発生します。これらの準備を複数の会社の方と進めていくのに、全部メールや電話で管理するのは、もう不可能であることは容易に想像できました。

個人的にもBacklogは、前職でも他の会社といっしょに仕事していく中で使った経験があったので、関係会社とBacklogを使っていきたいと経営に対して導入を上申しました。ただ、最初は「君だけが楽になるんでしょ」と言われてしまったんです。だから「僕だけが楽になるのではなく、みんなが楽になりますよ」というロジックで上申することにしました。

大谷:具体的にはどのように進めたのですか?

高木:具体的には、Backlogの導入に際して、みんなのお困り相談とか、よろず屋みたいなことをやることにしたんです。DX推進やプロジェクト管理といった領域で、各部署のお困りごとはないか。社歴が浅いので仕事を理解したいというのもあり、「あなたの部署はなにをやっているんですか?」だったり、「どんな風にお仕事しているんですか?」と、社内コンサルみたい困りごとを聞いて回りました。そこで抱えている課題をBacklogで解決されていく体験をBacklogのトライアル環境を使って体験してもらい、それをエビデンスに導入を上申してOKをもらったんです。「利己的ではなく利他的」行動していったわけです。

大事なことは「今のやり方を否定しないこと」 ツールだけ変えてもらう

大谷:では、そのまま高木さんに今回の主題である導入と定着について聞いて行きたいと思います。まず導入前、社内にはタスク管理という概念はあったのですか?

高木:タスク管理という概念が、全員にはなかったという言い方になりますね。たとえばECサイトの部門は、わりとITに近いので、タスク管理やチケット管理の概念がありますが、営業部門はあまり慣れていない。そういう意味では、けっこう濃淡があったんです。

タスク管理をやっている方は、見える化に関してはExcelやスプレッドシートを使っていたようです。ただ、野良Excelみたいなのが大量発生してしまうんです。メールにcc入れてどんどん共有してしまうので、十人十色みたいな感じでどんどん増えてしまって管理できなくなっていました。

大谷:実際に現場部門でどのように導入を進めたか教えてください。

高木:「各部署のその課題、Backlogで解決できますよ」っていう話だけじゃなくて、実際にBacklogで課題が改善された環境を僕が作り上げて、そこでいっしょにやってみることにしました。みなさんの仕事を僕がロールプレイ風にBacklogでやってみて、課題が解決されるところまで伴走し、Backlogの便利さを体感してもらうことにしたんです。

大谷:それってどれくらい時間をかけたんですか?

高木:半年くらいはかかりましたね。各部署に導入させてもらうところから、メリットを得られるという実績を積んでもらうまでは。僕自身のプロジェクトも待ったなしだったので大変でしたが、同時並行でやっていきました。

大谷:現場での定着に向けて、注意したポイントを教えてください。

高木:大事にしたのは今までのやり方を否定しないことです。よその畑の人が自分の畑にいきなりやってきて、こんな風に仕事してくださいと上から話してしまうと、「なんだこいつ!」になってしまいます。まずはお伺いのところから始め、「やり方は変えないので、ツールだけ変えさせてください」と強く主張しました。だから、僕の声も相手の耳に届きやすかったのかなと思っています。その上で効果を実感してもらって、社内に定着させていきました。

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