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日本の電機業界で過去最大規模の1兆円買収、「Lumada」事業のグローバル展開と成長を加速

日立、「Lumada」事業の成長加速狙い米GlobalLogicを買収へ

2021年04月01日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 日立製作所は2021年3月31日、デジタルエンジニアリングサービスの米GlobalLogicを買収すると発表した。同日夕方に行われたオンライン会見で、同社 CEOの東原敏昭氏は「Lumadaを進化させてグローバル展開を加速させる。別の言葉でいえば『世界のLumada』にするための買収だ」と語った。

 両社では、株式価値を約85億ドル(約9180億円)、企業価値を約95億ドル(約1兆260億円)とする買収額で合意。GlobalLogicの有利子負債返済を含む買収総額は96億ドル(約1兆368億円)を見込んでいる。現金対価による逆三角合併方式により、3月31日に買収契約を締結し、2021年7月末までに買収を完了。日立グローバルデジタルホールディングスの完全子会社とする。

GlobalLogicの買収によって、日立は社会イノベーション事業「Lumada」の成長を加速させる狙い

日立製作所 執行役社長兼CEOの東原敏昭氏

 2000年9月に設立されたGlobalLogicは、米カリフォルニア州サンノゼに本社を置き、世界14か国に2万人以上の従業員を擁する企業。従業員の50%以上がシニアエンジニアで、インドや東欧の開発拠点に多くの人材を抱える。2020年度の売上収益見通しは、前年比19.3%増の9億2100万ドル、調整後EBITDA率は23.7%に達しており、2021年度も売上収益で約12億ドル(約1296億円)、調整後EBITDA率も20%超を見込んでいる。

 同社は“Chip-to-Cloud(チップからクラウドまで)”に対応する高度なソフトウェアエンジニアリング技術に加えて、エクスペリエンスデザイン力や多様な業界に関する専門知識を有することを特徴に掲げている。幅広い業界の専門知識や顧客の協創実績をもとに、エクスペリエンスデザインを行うデザインスタジオを全世界8カ所に有しているほか、アジャイル開発を促進し、デジタルルエンジニアリングの実装を加速するためのエンジニアリングセンターを30カ所、通信や金融サービス、自動車、ヘルスケア・ライフサイエンス、テクノロジー、メディア・エンターテインメント、製造など、幅広い産業で400社を超える顧客基盤を持つ。

GlobalLogicの特徴

 日立では2016年以降、Lumadaと核とした社会インフラのデジタル化事業を推進してきた。東原氏は、GlobalLogicについて「自動車や医療をはじめ、さまざまな産業分野の開発ノウハウがあり、またクラウドとチップをつなぐノウハウにも長けている。日立のLumada事業を進化させ、新たな価値を提供できる」と述べ、GlobalLogicがLumadaの成長エンジンになることへの期待を示す。

Lumadaは“社会イノベーション事業”として、IT、OT、プロダクトをデジタルでつなぐソリューション/サービスをパッケージとして提供する

 買収後は、GlobalLogicが持つデジタルエンジニアリングのケイパビリティと、大手テック企業をはじめとする顧客基盤を獲得することで、米子会社の日立ヴァンタラが推進しているLumadaのグローバル展開におけるデジタルポートフォリオを強化する。さらに、IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフという5セクターに強みを持つ日立、オートモーティブシステム事業を行う日立Astemoとのシナジーを創出することで、鉄道、エネルギー、ヘルスケアなどの先進的な社会インフラのDXを世界規模で加速させるとしている。

 また同社 執行役専務 サービス&プラットフォームビジネスユニットCEOの徳永俊昭氏(4月1日付で執行役副社長に就任)は、ミッションクリティカル/基幹系領域で事業を拡大してきた日立がGlobalLogicを買収することにより、「アジャイルやクラウドをベースにした協創型企業へと進化することができ、高い成長を日立のITセクターのなかに取り込むことができる」と述べた。

 「GlobalLogicは、Lumadaの成長エンジンになり、成長を加速できる。ポジティブなサイクルを生むことができ、社会イノベーションカンパニーへと日立を進化させる上では、今回の買収が最もよい手であると考えた」(徳永氏)

 さらに徳永氏は、GlobalLogicでは顧客との協創活動を重視し、そこで浮かび上がった課題を自らの開発力で解決しており、その点は日立のLumada事業と共通していると説明。日立のITセクターは、国内では高い実績があるものの「グローバルの顧客と協創する能力が不足していた」と述べ、ここをGlobalLogicが強化して日立のITセクターのカバー領域を拡大することにつなげられるとした。「ITとOTの結びつきを実現し、2~3年後には見える形で十分なシナジーを出したい」(徳永氏)。

GlobalLogicの買収を通じて、ITセクターの事業ポートフォリオを高成長市場に拡大していく狙いもある

「96億ドル(の買収額)は妥当だと思っている」

 今回の1兆円の買収は、日本の電機業界では過去最大規模となる。

 東原氏は「2025年を想定したときに、CPS(サイバーフィジカルシテステム)がどんな形になるのか、そのときに日立が足りないのはどこかという観点から、最もフィットする会社がGlobalLogicだった」と語る。チップからクラウドまでをつなぐ力、各産業分野のノウハウと経験を持つことが買収の「決め手」になったとしたうえで、日立との大きなシナジーが見込めることから「96億ドル(の買収額)は妥当だと思っている」と述べた。

 「日立の他のセクターやオートモーティブ事業との連携効果も議論し、そこでも成長していけると判断した。もちろんリスクを考察し、定期的にモニタリングしながらEXITプランも考えている。だが、1兆円規模の買収は成功すると確信している」(東原氏)

 GlobalLogicは、2028年度に調整後EBITDAで10億ドル(約1080億円)超の達成を目指すという。

 また現在、Lumadaの売上比率は国内が7割を占めているが、「今回の買収をきっかけに海外比率が高まり、将来は逆転することも考えられる」(日立製作所 執行役専務 CFOの河村芳彦氏)と述べている。

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