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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第210回

FTX創業者逮捕。「史上最大の詐欺」に政治の影

2022年12月19日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 仮想通貨(暗号資産)取引所FTXの創業者サミュエル・バンクマン-フリード被告(30)が、中米のバハマで米司法省に逮捕された。

 発表によれば、同省は2022年12月13日、バンクマン-フリード被告を詐欺やマネーロンダリングなどの罪で起訴した。

 創業から3年ほどで、世界有数の仮想通貨取引所に成長したFTXは、11月に破綻し、「史上最大規模の金融詐欺」と言われる事件に急展開した。

 創業者のバンクマン-フリード被告は、その頭文字を取って「SBF」と呼ばれ、著名投資家ウォーレン・バフェットと比較されることさえあった。

 仮想通貨の価格を思わせるSBFの急成長と転落をめぐるニュースは、CNNをはじめとしたアメリカの主要メディアでも大きく取り上げられた。

政治ニュースとしてのSBF逮捕

 興味深いのは、今回の逮捕が政治ニュースとしても関心を集めていることだ。

 バハマの当局がバンクマン-フリード被告の身柄を拘束した日が、アメリカの議会でFTX破たんをめぐる公聴会が開かれる前日だったことも憶測を呼んだ。

 バンクマン-フリード被告は、米国の有力な政治家や政治家の候補者に多額の献金をする「メガ・ドナー」として知られ、仮想通貨に対する適切な規制の必要性を主張していた。

 同被告の起訴内容には、選挙資金にからむ違反も含まれる。司法省のプレスリリースによれば、同被告が設立した投資会社アラメダ・リサーチが、2022年の選挙の候補者に献金をした際に、実際には会社からの献金だったが、別の人物からの献金に偽装したとされる。

 12月14日のワシントン・ポストによれば、バンクマン-フリード被告は約4000万ドル(約55億円)を、政治家、政治家の候補者、選挙委員会、団体に寄付しており、ほとんどが民主党系の団体や政治家だったという。

 11月に投開票されたアメリカの中間選挙でも、上院と下院を合わせて60人以上の候補者に寄付しており、急速に政界への影響力を拡大していた。

 バンクマン-フリード被告が議会で証言する数時間に身柄を拘束された当局の動きからは、司法省が政界に対して何らかの思惑を持っているか、あるいは何らかの配慮をしているように思えてくる。
同紙は、バンクマン-フリード被告の逮捕はワシントンを揺るがし、政治家たちは同被告から距離を置こうとしていると報じている。

 下院金融サービス委員会のマキシン・ウォーターズ委員長は「バンクマン-フリード氏から話を聞けないのは残念だが、我々は事件の真相究明に引き続き取り組んでいる」との声明を発表している。

 蛇足だが、ウォーターズ氏も民主党に所属している。

FTXの資産管理は「ごちゃまぜ」

 バンクマン-フリード被告の証言は実現しなかったものの、FTX破たん後の処理を担っている新しいCEOジョン・レイ氏が議会で証言した。

 レイ氏は、議会で、次のような「受け入れがたいマネジメント」が横行していたと証言している。

●上級管理職の個人が、顧客資産を保管するシステムにアクセスできるインフラを使用し、資産の転送を防止する管理が行われていなかった。
●FTXグループ内の暗号ヘッジファンドであるアラメダが、FTX.comで保有する資金を借りて、有効な制限なしに自身の取引や投資に利用することができること。
●資産が混同されていた。

 レイ氏が「受け入れがたい」述べた項目は、もっと多数にのぼるが、上記の3項目は、おおむね同じことを言っている。次のように整理できるだろう。

 顧客から預かった資産は、自社の資金とごちゃまぜになっていて、FTXの幹部は顧客の金に自由にアクセスでき、アラメダリサーチも自由に自社の投資業務にその金を使っていた。

 FTXの破たん後、顧客の資産が引き出せなくなっていたが、FTXの幹部たちは、顧客よりも先に自分の資産を引き出していたと報じられている。

 一事が万事という感じではあるが、レイ氏の証言は、こうした報道を裏付けるものだろう。

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