ハンガリーの「ソーシャル観光」ができた
プレイして新しい体験だなと感じたのは、たまたま部屋が一緒になったハンガリーの方と会ったときのことでした。
お互いにプレイを始めたのはその日が初めてだったのですが、たまたま2人だけという状況になったので、話す必要が生まれました。軽い挨拶をして、ハンガリーからアクセスしている方だということがわかった後、彼は私の住んでいる家を見てみたいと言い出しました。
そこで私は地図を動かして、住んでいる場所の近くを表示してみせました。彼はタイで暮らしたことがあるが、日本で暮らしたことはないとのことで、日本の風景は目新しく感じられたようです。コンビニが並び、公共交通機関が発達している姿はハンガリーにはなく、町並みがまったく違っていたためです。
次は、彼の番でした。彼はハンガリーの首都のブタペストから来るまで数時間の田園地帯が広がる古い街に住んでいると言い、その街で有名な古城を案内してくれました。「ここはトルコとの戦争で有名な古いお城なんです」といった歴史を教えてくれました。そのあたりは日本と違って地震がないこともあり、古い石造りの家が整然と並んでいました。
ハンガリーの街並みを見た後、東京のゴタゴタした自分の家の周りを見ると、やっぱり全然違うなあと感じました。私はハンガリーに行ったことはありませんが、バーチャル空間でそうしたソーシャル観光的な新しい体験ができることはかなり新鮮で、なるほどこれは面白いなと感じました。
もうひとつWooorldが面白いのは、メタが公開しているアバターのAPIが使えることです。
このアプリを使っているあいだは、自分の姿も相手の姿もメタのアバターで表示されることになります。日本ではまだメタのメタバースサービス「Horizon World」が開始していないこともあり、なかなかメタアバターの姿を見ることはまれという状態です。しかしメタは積極的に他社に対して、メタアバターの採用を働きかけているんですね。
Wooorldの中では、メタアバターは下半身のないモードとして登場しますが、不自然さは感じません。アプリの中で見る分には、意外と気にならない点です。
また、Quest Proでこのアプリを使用した場合、フェイシャルトラッキングやアイトラッキングも対応しているので、表情や目の動きも反映されます。どのハードを使っているのかが明示的に表示されることはありませんが、他のユーザーを見て表情の動きなどを見ていると、Quest 2か、Quest Proなのかを区別することができます。
Wooorldは「メタバース」とまではいかないかもしれませんが、メタのアバターでコミュニケーションがとれる点で考えると新しい体験でした。メタのアバターは評判としてはやや微妙ですが、こうしたソーシャル体験を前提としたコミュニケーションアプリで十分に使えることは、アバターの方向性としてアリだなと感じました。
メタやグーグルのAPIを使っていくことで、極端に多くの開発リソースを使わなくてもメタバースのようなものをつくれるという提案としても、アイデアとして非常に優れているなと思いました。こうしたアプリもまた、ひとつの未来の提示だなと感じています。

この連載の記事
-
第134回
AI
“AI読者”が小説執筆の支えに 感想を励みに30話まで完成 -
第133回
AI
xAIの画像生成AI「Grok Imagine」が凄まじい。使い方は簡単、アダルト規制はユルユル -
第132回
AI
画像生成AI:NVIDIA版“Nano Banana”が面白い。物理的な正確さに強い「NVIDIA ChronoEdit」 -
第131回
AI
AIに恋して救われた人、依存した人 2.7万人の告白から見えた“現代の孤独”と、AI設計の問題点 -
第130回
AI
グーグルNano Banana級に便利 無料で使える画像生成AI「Qwen-Image-Edit-2509」の実力 -
第129回
AI
動画生成AI「Sora 2」強力機能、無料アプリで再現してみた -
第128回
AI
これがAIの集客力!ゲームショウで注目を浴びた“動く立体ヒロイン” -
第127回
AI
「Sora 2」は何がすごい? 著作権問題も含めて整理 -
第126回
AI
グーグル「Nano Banana」超えた? 画像生成AI「Seedream 4.0」徹底比較 -
第125回
AI
グーグル画像生成AI「Nano Banana」超便利に使える“神アプリ” AI開発で続々登場 -
第124回
AI
「やりたかった恋愛シミュレーション、AIで作れた」 AIゲームの進化と課題 - この連載の一覧へ














