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Nintendo Switch用ゲームソフト『スーパー野田ゲーWORLD』に収録

野田クリスタルさん&後藤裕之氏に、異色のレースゲーム「Ashi Kogi Racing」の制作秘話などをうかがった

文● 松野翔太 編集●市川/ASCII

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 「M-1グランプリ2020」優勝経験もあるお笑いコンビ・マヂカルラブリーの野田クリスタルさんが総監督を務め、面白法人カヤックが開発を務めたNintendo Switch用ゲームソフト『スーパー野田ゲーWORLD』が発売中だ。

 もともとゲーム製作を趣味とし、自身でプログラミングした「野田ゲー」を複数リリースしている野田クリスタルさん。本作および前作『スーパー野田ゲーPARTY』ではゲーム内に収録されるパーティーゲームのすべてを監修しているが、ツッコミどころ満載のゲーム性や独特のビジュアルが人気を博し、『スーパー野田ゲーPARTY』に関しては販売本数がおよそ10万本を記録するなど、広く楽しまれているようだ。

AKRacingのゲーミングチェアを足こぎしてゴールを目指すレースゲーム「Ashi Kogi Racing」。独特の操作感が大きな特徴

 実に多様なジャンルのパーティーゲームが収録されている本作だが、なかでもレースゲーム「Ashi Kogi Racing」は、ゲーミングチェアメーカー「AKRacing」とコラボレーションした異色のタイトルとなっている。

 AKRacing製品に腰かけたライダーがゲーミングチェアやオットマンを足でこぎ、サーキットを爆走する姿は極めて珍妙。リクライニング機能で坂道を加速、タイミングよくボタンを連打していくことで足こぎの速度が上がるなど、レースゲームとしてはユニークな点も多い。しっかり走ろうと思うと見た目の割にシビアな操作技術を求められるため、収録ゲームの中ではかなりの歯ごたえを感じられるだろう。

 プレイしてみると「どうしてこんなゲームが出来上がったのか」と疑問が浮かんでくるのだが、実際に総監督を務めた野田クリスタルさん、開発およびプログラミングを担当した面白法人カヤックのゲームクリエイター・後藤裕之氏に経緯をうかがう機会を得た。『スーパー野田ゲーWORLD』の概要から「Ashi Kogi Racing」の詳細に至るまで興味深いエピソードを聞けたので、紹介しよう。

お笑い芸人の野田クリスタルさん。お笑いコンビ「マヂカルラブリー」のボケ担当で、個人としては「R-1ぐらんぷり2020」の王者も獲得している。ゲーム好きやゲームプログラミングの趣味が高じ、近年はゲーム番組への出演も多数

面白法人カヤック所属のゲームクリエイター・後藤裕之氏。『ことばのパズル もじぴったん』の開発者として知られる。過去には円周率暗唱の世界記録を保持し、ギネスブックに名前が掲載されたことも

異色のレースゲーム「Ashi Kogi Racing」が誕生した経緯とは

――本日はよろしくお願いいたします。まずは前提のところからなんですが、『スーパー野田ゲーWORLD』はどういった経緯で開発されたタイトルなんでしょうか。

野田クリスタル(以下、野田):もともと前作は、僕が「R-1ぐらんぷり2020」で王者を獲ったあとに後藤さんにお会いして、「何かやろう」という話になったのがきっかけで。僕、もともとNintendo Switchで野田ゲーを出したいなと思ってたんですよ。まあ100%無理だと思ってたんですけど。「やれるならそこまで行きたいっす」ってノリで言ってみたら、なんか急にいけそうな流れを出されて。

後藤裕之(以下、後藤):(笑)

野田:でも、当時はコロナ禍だったこともあって開発資金を確保するのが難しかった。だから資金はクラウドファンディングで集めて、集まった金額で可能な範囲でミニゲームを複数収録したゲームにしようと。で、本当にゲームを出せるギリギリの金額として、設定金額400万円でクラウドファンディングを開始したら、最終的には1300万円くらい集まっちゃって。

ただ、この時に「出資者が送ってくれた素材をゲーム内に出します」ってプランを作ったのが、あとあと自分の首を絞めることになりました。

――収録するゲームが決まっていない状態で素材を募集したんですよね。想像するだけでもかなり大変だろうと思います。

野田:今思えば意味わかんなかったですね。途中から「素材を消化できるゲームを作ろう」って方向になって、そこから生まれたゲームもいくつかありました。ただ、最終的に販売本数が10万本くらいになり、この規模のインディータイトルとしてはかなり良い結果だったので、「これは次もやろう」と。 もちろん同じものを作ってもしょうがないので、今回はもうちょっとレベルを上げて。スーパーファミコンの後期タイトルから初代PlayStationのタイトルになるぐらいの進化を目標にして作ったのが『スーパー野田ゲーWORLD』ですね。

前作の『スーパー野田ゲーPARTY』では、クラウドファンディングの出資者から素材を集め、実際にゲーム内に登場させるリターンが話題に。苦労したとのことだが、『スーパー野田ゲーWORLD』でも同じように素材を募集している

――『スーパー野田ゲーWORLD』には全部で20本のゲームが収録されています。その中で「Ashi Kogi Racing」が生まれるまでにはどういったやりとりがあったんでしょうか。

野田:最初は「レースゲームがあってもいいんじゃないか」と思ったのがきっかけです。野田ゲーって、同じジャンルのゲームを作っちゃ駄目ってルールを決めてるんですよ。『スーパー野田ゲーWORLD』を開発する前に、思いつく限りのゲームのジャンルを並べてみたんですが、レースはこれまでやってなかった。

今回は僕が単体でプログラミングするわけじゃなくて、カヤックのプログラミングの方がいるので、技術的にも「Unity」を使った3Dゲームが作れる。じゃあ、3Dの野田ゲーもやってみるか、という流れで提案しましたね。

――野田さん自身は3Dゲームの製作に馴染みがなかったんですね。

野田:3Dは全然触ってないし、Unityも分からないので全然イメージができなかったんですが(注:野田氏はゲーム製作にプログラミングツール「HSP」を使用)、どうも「コースが売ってる」らしいという話を聞きまして……。

――Unityのアセットストアですね(笑)。自分で製作しなくても、ゲーム製作に利用できるキャラクターやオブジェクトのアセットなどが販売されています。

野田:売ってるんかい、となって。じゃあ買ってガンガン作りましょうよ! って感じで進めたので、一応レースゲームとして形になったのは結構早かったです。その後はAKRacingさんから協力のお話をいただいて、「リクライニングを使って坂道で加速する」みたいな案も割とすぐに出てきました。

――「Ashi Kogi Racing」というタイトルもすぐに決まったんでしょうか。

野田:レースゲームとAKRacingを組み合わせた時点で、これ以外ないなって感じでしたね。なるべく"AKRacing"という名前もまんま使いたかったので、これしかないと。

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