新しい分散クラウド、マルチクラウド、サーバーレスKubernetes/コンテナ環境……
オラクルOCIの次の戦略とイノベーションは? OCW 2022キーノート
2022年11月04日 07時00分更新
先日開催された「Oracle CloudWorld 2022(OCW 2022)」のOracle Cloud Infrastructure(OCI)キーノートでは、OCIの現状と今後予定している機能強化/アップデートが数多く紹介された。
本記事ではキーノートにおけるOCI担当EVPのクレイ・マグワーク氏の発言を軸に、ブログ発表などの追加情報も参照しながら情報をまとめる。
提供サービスは100超に拡大、「あらゆるワークロードに適したクラウド」へ
まずはOCIの現状についてだ。OCIでは現在、22カ国にある40のリージョン(商用および政府向けリージョン)を本番稼働させている。今後さらに米国、中南米、中東、東欧などに7つの商用リージョンを計画中だ。さらに、EUの規制に対応したパブリックソブリンリージョンも2つ(ドイツ、スペイン)追加予定だという。
現在のOCIでは100を超えるサービスが提供されており、この1年間で260の機能がローンチされたという。また、前年比の消費成長率(consumption growth)は103%と2倍を超えている。
マグワーク氏は、現在のOCIは「『オラクルのワークロード』だけでなく『あらゆるワークロード』にふさわしいクラウドだ」と強調する。すなわち「Oracle Database」や「Oracle E-Business Suite(EBS)」といった従来のワークロードだけではなく、AI/機械学習による画像や音声の解析、流体動力学のシミュレーション、データアナリティクス、DevOpsなど、幅広いワークロードに対応する幅広いサービスを提供できるようになっている、という意味だ。
そうした「あらゆるワークロード」の例として、マグワーク氏はハイパフォーマンスコンピューティングにより次世代自動車デザインの流体シミュレーションを行うトヨタ、分析データベースで世界中の物流フリートを管理するFedEx、ドローン空撮映像と機械学習を使って“森林の健康状態”を監視するNIBIO、1カ月で10億件のAI音声解析を行うSound Hound、OCIを基盤にファイナンシャルクラウドサービスを提供するトムソン・ロイターといった企業事例を挙げた。
分散クラウド戦略で「クラウドワークロードを30%から90%超に」
オラクルでは、パブリックリージョン以外の場所からOCIサービスを提供可能にする“分散クラウド”の取り組みにも注力し、ポートフォリオを拡充させている。これまでに「Oracle Exadata Cloud@Customer」「OCI Dedicated Region」「Oracle Compute Cloud@Customer(プレビュー)」「Roving Edge」を提供しており、さらに前回記事で紹介したとおり、パートナーが運用する「Oracle Alloy」も新たに追加された。
マグワーク氏は、パブリッククラウドが数々のメリットをもたらすにもかかわらず、現実にはまだ「32%のワークロードしかパブリッククラウド上で稼働していない」という数字を紹介し、そこには「データのレジデンシー/セキュリティ/プライバシー」「レイテンシ」「法規制」「予測不可能でコントロールできないコスト」といった複雑な課題があると語った。その課題を「顧客側にクラウドを提供するというアプローチ」(マグワーク氏)によって解決しようというのが、オラクルの分散クラウド戦略である。
「われわれはこれを『新しい分散クラウド』と呼んでいる。そしてこれこそが、現在30%程度に留まっている(クラウドの)採用率を90%以上に押し上げ、皆さんのビジネスでなすべきあらゆる取り組みの未来を加速させるために必要なものだと考えている」(マグワーク氏)